音楽座ミュージカル 《マドモアゼル・モーツアルト》
四日市公演 第一幕 1996年2月12日

前へ  ホームページ  《マドモアゼル・モーツァルト》のまとめ  次へ
 

 音楽座の脱税という不祥事による解散で、あんなに好きだった《マドモアゼル・モーツアルト》を見ることが出来るのも今回(再々々演)が最後。
 特別な思いで迎える今日の公演です。

 四日市市文化会館は近鉄四日市駅から徒歩10分。
 2階の後ろ2列が当日券で出ていたが、ほぼ満席の状態。
 それはそうだ、東海地方の人は《マドモアゼル・モーツアルト》を観たければここまで来るしかないんですからね。

          《マドモアゼル・モーツアルト》 四日市公演(1996年2月12日)

         原作:福山庸治  脚本/演出:横山由和ほか  音楽:小室哲哉
         振付:謝珠栄    美術:朝倉摂

           モーツアルト=エリーザ:土居裕子 
                 コンスタンツェ:渋谷玲子   
                     サリエリ:新木啓介
                   カテリーナ:石富由美子 
                   レオポルト:徳川龍峰   
                 シカネーダー:吉野圭吾
                    フランツ:照井裕隆
                   ダ・ポンテ:佐藤伸行
              コンスタンツェの母:福島桂子
                     他、精霊達
※第 一 幕
《プロローグ》
 幕が開くとそこはモーツアルトの死の床。
 コンスタンツェのソロから精霊達のコーラスに発展し、クライマックスで少女エリーザが登場する。
 エリーザが歌うのは『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』第2楽章。

 まず、初演の二重構造ではないことが分かった。
 再演の時の異様に大きい月がなかったのでほっとする。

《モーツアルトの誕生》
 ザルツブルクの音楽教師レオポルド・モーツァルトの娘エリーザは天才だが、女では作曲家としての成功は難しい。
 そこでレオポルドはエリーザの髪を切り、男として育てることにする。
 その名はヴォルフガンク・アマデウス・モーツァルト。

《噂の男》
 モーツァルトはウィーン音楽界の人気者。
 彼のコンサートにウィーンの人々は熱狂する。
 この辺から、お話も音楽も初演に近いものとなり、嬉しくなる。
 使われている音楽は(当然ご存知でしょうが)《トルコ行進曲》。

 その様子を見に来た作曲家サリエリは、モーツァルトにほのかな好意を持ち、自分はホモかと動揺する。
 初演の時はモーツアルトがサリエリに『あの天才作曲家の?』と言うのがおかしいと思ったけれど(天才作曲家はモーツアルトのはずだから)、今回は『あのウィーン一の作曲家の? 僕は世界一の作曲家‥‥』というように変更されており納得。

《LOVE》
 サリエリはモーツァルトに対する想いを歌う。
 このミュージカルでもっとも美しい曲の一つ。
 なぜこんな素晴らしい曲を短くしてしまうの??
 歌詞を変えるのはまあ許すとして、初演の歌詞で『あんな時が昔、俺にもあったはず』という部分をカットしたのはいけません。
 大好きなところなのに!! 不満不満。

 新木サリエリはかっこいいし、声もまあまあでイメージどおり。 
 この曲の後半にモーツアルトの鏡(?)みたいな人を付けるのは初演からで、演出家はよっぽど気に入っているようだが、僕には意味が分からない。
 当然何か意味を持たせたつもりなんだろうが、演出家の思い込みみたいなものは不要だと思う。
 普通に歌ったらいけないの? 

《もしもあの人と》
 下宿の娘コンスタンツェはモーツァルトに対する片想いを歌い上げる。
 これは初演どおり。
 曲は《トルコ行進曲》。
 渋谷コンスタンツェは可愛いし、歌もいいし、気に入ってしまった。

《私じゃダメかしら?》
 コンスタンツェはモーツァルトに対して想いを打ち明け、結婚を迫る。
 しかし、モーツァルトはその想いを受け入れることが出来ない。
 だって、モーツァルトは女性なんですから。

 この辺から音楽はずっと初演どおりになっていて、嬉しくて嬉しくて。
 曲は《交響曲第29番・第1楽章》。

《初めての恋》
 サリエリの恋人カテリーナ(歌手)はサリエリの差し金でモーツァルトを誘惑して、彼がホモかどうかを試す。
 当然ながらモーツァルトは逃げるしかありません。

 石富さんが一生懸命カデンツァを歌っているのに笑っちゃダメだよ、お客さん。
 曲は《フルートとハープのための協奏曲・第2楽章》。

《Good Vibration 2》
 コンスタンツェの母親は街の噂になってしまったコンスタンツェとの結婚をの結婚をモーツァルトに迫る。

 コンスタンツェが『聞きたくないわ』と歌う、小室さんのメロディーが大好き。
 コンスタンツェの母親も熱演。

《結婚行進曲》
 ドタバタのうちにモーツァルトとコンスタンツェとの結婚式が執り行われる。

 これは初演の音楽から変更があって、《フィガロの結婚》のケルビーノのアリア『恋とはどんなものかしら』から、フィガロのアリア『もう飛ぶまいぞ、この蝶々』を経て、《フィガロの結婚》の結婚式の音楽(初演のオリジナル)に戻る。
 《フィガロの結婚》とモーツアルトの結婚を結びつけようという意図は理解できる。

《狂おしい夜》
 コンスタンツェはモーツァルトをベッドに誘うが、モーツァルトは作曲が忙しいことを理由に、ベッドインを断る。
 このあたりのモーツァルトの苦悩は痛々しいばかりだ。

 これはセリフも音楽もほとんど初演に戻っていて、また嬉しくて嬉しくて。
 最後の方なんか『変わるなよ〜!』と、手を握りしめてしまいました。
 この場面は大好きで何度もビデオを見て、セリフなんか憶えてしまっているから。

 少しバイオリンがカットされたところもあった(コンスタンツェが戻ってきたところでバイオリンが出て来るはず!と待っていたんだけれど、出て来なかった)のは残念。
 この場面が一番心配だったんだから(再演がひどすぎた)、まあ一安心。
 コンスタンツェが写譜するのは《フルート四重奏曲第1番・第1楽章》。

 とうとう切羽詰まったモーツァルトは胸を広げ、コンスタンツェに自分が女であることを白状する。

 初演で、コンスタンツェが、モーツアルトが女だと知って『悪魔〜!』と叫ぶセリフが、いかにも思いやりが無くていやだったんだけれど、今回は『あなたは女だったの!』と変わっていて良かった。
 いくらなんでも『悪魔〜!』はないだろう?
 精霊たちも初演の時ほど、登場人物との不必要なからみが無くて、これならまあ許容範囲でしょうか。

 今さら言うのもなんだけれど、土居裕子さんのモーツアルトは素晴らしい。
 このミュージカルは彼女のためにあるようだ。
 彼女がもうこの役を演じられないなんて。。。

《演奏会》
 モーツァルトに抱かれる事が出来ないコンスタンツェはモーツァルトの弟子フランツと恋に落ちる。
 この舞踏会の場面、初演の音楽は大好きだったので、戻ってきたのが本当に嬉しかった。
 フランツもいいね。 満足。
 それから初演の時のカテリーナの『一緒に地獄に堕ちましょう』という突拍子もないセリフが無くなったのは良かった。

《子供ができた》
 舞踏会の間にコンスタンツェは妊娠する。
 後半で、モーツアルトの人気が無くなったことをセリフで説明したのはいいんじゃないかな。

《ラヴァーズ・コンチェルト》
 コンスタンツェ、フランツ、モーツァルトがそれぞれの想いを歌う。
 このシーンも初演の曲に戻って良かった。
 コンスタンツェもフランツも上手。
 曲は《バイオリン協奏曲第4番・第2楽章》。

《ドン・ジョバンニ》
 脚本家ダ・ポンテはモーツァルトに新作オペラ《ドン・ジョヴァンニ》を持ちかける。
 ダ・ポンテも問題なし。

《地獄》
 モーツァルト悪夢の場面の音楽は初演のものに戻った。
 この小室さんの音楽は大好き。
 父レオポルドが引っぱり出され、舞台奥に、ドン・ジョバンニを地獄に引きずり込む騎士長の石像が現れる。
 《ドン・ジョバンニ》とレオポルドの死を結びつけようという意図は良く分かる。
 そして「パパが死んだ」。

 満足して観ていたんだけれど、最後にとんでもないことが起こった。
 途中で曲が《レクイエム》の《ラクリモサ》(涙の日)に変わってしまったの。

 何を考えているんだ!!
 いいかい、レオポルドが死んだのは1787年。
 一方、《レクイエム》が《魔笛》と並行して作曲されたのは1791年。

 だから、レオポルドの死と《レクイエム》は全く無関係。
 この《ラクリモサ》がモーツアルトの死の場面に使われるならまだしも、レオポルドの死の場面に使われるのは、全くお門違いというものだろう。

 頭から、突然水をかけられたような心境だ。
 すぐにでも初演の音楽に戻して欲しい。

 頭に血が上った状態で (^_^ゞ、第2幕に続く。
 
 
前へ  ホームページ  《マドモアゼル・モーツァルト》のまとめ  次へ