関西二期会 《フィデリオ》
2009年11月22日(日) 2:00PM 尼崎アルカイックホール

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 セントラル愛知交響楽団の定期演奏会ですっかり気に入ってしまった《フィデリオ》を関西二期会がオペラ上演する。
 プログラムの蔵田裕行理事長の挨拶には「日本オペラ界を代表する飯守泰次郎・栗山昌良両巨匠を指揮・演出にお迎えして」と書かれており、大いに期待をしていたのですが、こんなレポートを書かなくてはならないのが残念です。

     関西二期会 《フィデリオ》
  2009年11月22日(日) 2:00PM
     尼崎アルカイックホール

  指揮:飯守 泰次郎  演出:栗山 昌良

     ドン・フェルナンド:小玉 晃
     ドン・ピッツァーロ:片桐直樹
     フロレスタン:竹田昌弘
     レオノーレ:畑田弘美
     ロッコ:木川田 澄
     マルツェリーネ:加藤かおり
     ヤキーノ:西垣俊朗

   管弦楽:関西フィルハーモニー管弦楽団
   合唱:関西二期会合唱団


 一番の問題は栗山昌良さんでしょう。
 独唱でも、二重唱でも、三重唱でも、四重唱でも、登場人物は正面を向いて立ったままで歌い、動くことも互いに顔を見合わせることも、ほとんどありません。
 巨匠栗山さんにはもうキャストに演技を付けるパワーが無くなってしまったのでしょうか?

 「囚人の合唱」では囚人がぞろぞろ現れて、舞台上に整列してから、指揮者は棒を振り始めました。
 こんなの合唱団の発表会でしょう?
 せっかく実力ある関西二期会なのに、歯がゆい思いでイライラしました。

 第二幕になると、少しは動きが出てきたでしょうか。
 竹田昌弘さんはドラマティックテノールではないと思うけれど、フロレスタンのアリアは良かったですね。
 畑田弘美さんのレオノーレは、この役には少し声量不足。
 木川田さんのロッコと片桐さんのドン・ピツァロは良かったけれど、演技があれではお気の毒です。

 決死の思いで愛するフロレスタンを助けたレオノーレと、2年間牢獄に繋がれていたフロレスタンですが、感激の再会した彼らは決して抱き合うことはありません。
 せいぜい、手を繋いだくらい (@o@)。
 彼らのこれまでの命懸けの苦労を考えれば、激しく抱き合い熱烈な接吻をするのが当然で、これではドラマになっていません。

 フィナーレは中央にレオノーレが立ち、その後ろにフロレスタンとドン・フェルナンドが並んで歌います。
 どうしてレオノーレとフロレスタンが抱き合いながら歌わないのか、まったく理解できません。
 主役同士が個人的に仲が悪いのかと、考え込んでしまいましたよ (^_^ゞ。

 序曲で、オーケストラは舞台と同じ高さのオケピットで演奏しました。
 演奏が終わるとオケピットは下がりましたが、時間がかかって音楽の緊張感は持続しません。
 『レオノーレ第3番序曲』も同じように演奏され、同じように緊張感が持続しませんでした。
 蒲郡の《カルメン》のように、演奏しながら下がると良いのでしょうが、そこまでの機構はないようです。
 今日が2日目のオーケストラですが、所々にほころびがありました。
 
 何はともあれ、『あれはオペラではなかった』と言わざるを得ないのが無念です。
 
 
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