大隅智佳子 《修道女アンジェリカ》
北とぴあ・さくらホール 2010年3月27日(土) 6:00PM

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 待望の大隅智佳子さんの《修道女アンジェリカ》です。
 早めに会場に着いたので探検していたら、最上階に展望台がありました。
 展望台からは眼下に東北新幹線と桜の開花が始まった飛鳥山公園、遠くには建設中の東京スカイツリー(だと思う)を見ることが出来ました。

 12年春の開業を目指して建設中の電波塔「東京スカイツリー」(東京都墨田区)は3月29日午前、東京タワー(333メートル)を超えて、建造物として日本一になった、ということで、この写真の場合は東京タワーよりまだ低いようです (^_^; 。
 最終的には高さ634メートルになるそうです。

東京スカイツリー、東北新幹線、飛鳥山公園 北とぴあ・さくらホール


 LIPpresentsOPERA主催公演 《修道女アンジェリカ》
  2010年3月27日(土)6:00PM
     北とぴあ・さくらホール

    指揮:高野秀峰
    演出:馬場紀雄

   アンジェリカ:大隅智佳子
   公爵夫人:新宮由里

 大隅智佳子さんのアンジェリカは期待どおりの歌唱で、彼女が歌うプッチーニの美しい旋律に、最初から何度も涙が出てきました。

 彼女の声は弱音でも豊かな響きがあり、直接僕の心に入ってきます。
 「ビビビ」とする、と言っているんですけれどもね。

 飛び上がって嬉しいことには、この公演がDVD化されるんだそうです。
 「いつでも大隅さんのアンジェリカを我が家で見る、聴くことが出来るのだ」と思うと、これからの人生が明るくなるような気がします \ (^o^) /。

 ただ、公演全体としては満足できない部分もありました。
 特に馬場紀雄さんの演出。

 当然ながら、このオペラのクライマックスはアンジェリカと公爵夫人との対決(?)でしょう。
 登場した公爵夫人を見て、僕は唖然としました。
 華やかなドレス姿で、老けたメークをしていない。
 
 これではアンジェリカのお姉さんレベルで、とても由緒ある公爵家の秩序、名誉を一身に背負っている重々しい人物には見えません。

 アンジェリカの父グアルティエロ公爵と母クララ公爵夫人が20年前に亡くなったとき、子どもと財産すべてを公爵夫人に託された。
 アンジェリカは7年前に許されぬ子を産み、たった一度の口づけで子どもは取り上げられ、そして修道院に入れられた。

 これで公爵夫人の年齢が50~60代だと推察できるでしょう。

 公爵夫人は客席に向かって歌い、アンジェリカは後ろを向いています。
 これでは対決、対話になっていません。
 公爵夫人の「贖罪せよ」という言葉が、まったく反応のないアンジェリカに届いているのでしょうか?
 
 また、机が無いので、アンジェリカは署名を床でする事になってしまいます。
 なぜ面会室に机を置くくらいのことが出来ないのか?
 もっと上手なやり方(中村敬一さんのように)があるだろうに、と悲しくなってしまいました。

 修道女たちの動きも整理できていない。
 アンジェリカなんか、出番がないときはやたら花を摘まされていましたね。

 最後に舞台奥にアンジェリカの子供が現れます(2階席から丸見え)。
 アンジェリカは子供に近寄り抱きしめて幕となります。
 アンジェリカが舞台上で死なない演出は初めて見まして驚きましたが、これはこれで救いがある解決かとも思いました。

 そうそう、アリア『母もなく』のあと、アンジェリカが自殺のための薬草を集める部分の音楽が、僕が日常的に聴いているテバルディやドマスのCDとまったく違う音楽で、別のバージョンがあるのでしょうか?
 プログラムに解説がないのは不親切かと思いました。

 高野秀峰さんの指揮は、少し弛緩した部分があるような気がしました。
 プッチーニの音楽が美しすぎるだけに、オーケストラのちょっとしたミスが残念無念でした。

 雑喉 潤さんの解説に「(公爵夫人に)その愛児はと聞けば、2年前に伝染病で死んだとすげない返事だった」と書かれているのには違和感がありました。
 公爵夫人は厳格な人であっても冷酷な人ではないでしょう。

 本来なら彼女はアンジェリカに会いたくなかったと思いますよ。
 会えば必ず、死んだことを隠していた子どものことを聞かれるんだから。

 それでも妹の結婚のためにアンジェリカの財産分与の署名が必要だから、後見人としての責任感、義務感から決死の思いでやって来たんでしょう?
 アンジェリカに答えた言葉も公爵夫人としては考えに考え抜いた、最善の言葉だったのではないでしょうか。
 「2年前にひどい伝染病にかかり、一生懸命手を尽くしたのですが‥‥」という言葉のどこが「すげない返事」なのでしょう?

 今回の公爵夫人、新宮由里さんは雑喉路線の役作りだったでしょうか。
 泣き伏すアンジェリカから書類を取り上げ、ズカズカ去っていく。

 僕が今まで見た公爵夫人は、泣き伏すアンジェリカに近づき、哀れみと同情の表情を浮かべ、肩に手をかけようとするが、思い直して心を残しながら去っていく、という演出がほとんどでしたよ。

 関西歌劇団の荒田祐子さんの、アンジェリカに子供のことを尋ねられたときに、「ついに来たか」と一瞬哀れみの表情を浮かべ、たじろぐ演技も忘れられません。

 いろいろ思い出しているとまた泣けてきます。
 このオペラは大好きですよ (^_^) 。
 
 
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