あいちトリエンナーレ2010 《ホフマン物語》 2010年9月20日(月・祝) 2:00PM 愛知県芸術劇場大ホール |
今年は「あいちトリエンナーレ」なんだそうで、3年に一度何かをするらしい。 そのオペラの演目がマイナーな《ホフマン物語》というので心配しましたが、TVも動員してのPRが功を奏したのか、ソールドアウトというのにも驚きました。 最初から最後まで、われわれ愛知県民の税金を投じ、贅沢に金をかけた公演という印象です。 びわ湖ホールを持つ滋賀県民の気持ちが少し分かったりして (^_^ゞ。 あいちトリエンナーレ2010 《ホフマン物語》 2010年9月20日(月・祝) 2:00PM 愛知県芸術劇場大ホール ![]() 指揮:アッシャー・フィッシュ 演出:粟國 淳 ホフマン:アルトゥーロ・チャコン=クルス ミューズ/ニクラウス:加賀ひとみ リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士 /ダペルトゥット:カルロ・コロンバーラ オランピア:幸田浩子 アントニア:砂川涼子 ジュリエッタ:中嶋彰子 スパランツァーニ:晴 雅彦 クレスペル:松下雅人 シュレーミル/ヘルマン:森口賢二 アンドレ/フランツ:西垣俊朗 コシュニーユ/ピティキナッチョ:宮崎智永 ルーテル:三戸大久 ナタナエル/ホフマン役カヴァー:村上敏明 アントニアの母:谷田育代 ステッラ:手嶋仁美 合唱:AC合唱団 管弦楽:名古屋フィルハーモニー交響楽団 この公演は予想を遙かに超えた、出来の良い公演でした。 一番の殊勲者はアッシャー・フィッシュ指揮する名古屋フィルハーモニー交響楽団でしょう。 アッシャー・フィッシュはイスラエル出身でバレンボイムの弟子だとか。 音楽がアクティヴというのいかな、追っかけをしたくなるような素晴らしい指揮者でした。 オペラでオーケストラが気になるのは失敗したときと相場が決まっているのですが、今日の名フィルは管楽器のソリスティックな動きなど、良いところに耳を奪われることが多かった。 心配していた粟国淳さんの演出は、「トゥーランドットの帝国は機械が支配する帝国」などという妄想の世界から脱却した、まっとうなものでした。 愛知県芸術劇場大ホールは日本でも有数の舞台機構を持つオペラハウスですが、お金がかかるので、その機能を発揮する公演が少ない。 舞台奥から大きい舞台装置が回りながら出てきたときには、この劇場開場直後(1992年)の名古屋二期会《ピーター・グライムズ》(栗山昌良演出)を思いだしてしまいました。 《ピーター・グライムズ》を上演した事による資金難で、名古屋二期会はしばらく活動が出来なかったのではないかな。 今回の公演は潤沢な資金が(税金が)あるのでしょう。 キャストではカルロ・コロンバーラ、中嶋彰子、松下雅人の3人が、この巨大劇場に通用する声量の持ち主で、その他は1ランク、2ランク落ちる印象を持ちました。 カルロ・コロンバーラの深々とした「ダイヤモンドの歌」に浸りながら、「そうだ、これこそがオペラの魅力なんだ」と再認識しました。 《ホフマン物語》のストーリーは、主人公ホフマンが、歌う人形のオランピア(第一幕)、瀕死の歌姫アントニア(第二幕)、ヴェネツィアの娼婦ジュリエッタ(第三幕)と次々に恋をするが、何れも失敗するというもの。 ホフマン役のアルトゥーロ・チャコン=クルスは聴かせるところは聴かせるけれど、全体に声が疲れた感じ。 オランピアの幸田浩子さんは、有名なコロラトゥーラのアリアを一生懸命歌っていました。 でも、アリア以外の所では、あまり人形らしくありませんでしたね。 METライブビューイングのキャスリーン・キムなどを見てしまうと、どうしても感想が厳しくなってしまうでしょうか。 アントニア役の砂川涼子さんも声量が少し足りない感じ。 アントニアの母(谷田育代)の方が声量があったけれど、母親は舞台に出てこないから、マイク操作をしているのかな? しかし一発芸のオランピアとは異なり、アントニアにはオペラらしい聴かせどころも多く、けっこう同情しながら聴くことが出来ました。 ジュリエッタ役の中嶋彰子さんはさすがの大物で、ホフマンが手玉に取られるのも納得できます。 しかし、聴かせどころが少ないのが残念でした。 申し訳ないが、ニクラウス役の加賀ひとみさんは声が小さくて、有名な「舟歌」の出だしなど、イラッとすることがありました。 第三幕からフィナーレへと盛り上がりまして、AC合唱団も大活躍。 全体として、マイナーな《ホフマン物語》が傑作オペラに思える、良い公演だったと思います。 ◇愛知オペラさんからコメントをいただきました。 両日聴きましたが、ホフマン役のクルスは、20日はゲネプロからの中一日三連投で喉に疲れが溜まっていたのでしょう、舞台脇のバルコニーで聴いていましたが、前半は良かったのですが、ジュリエッタの幕以降は限界という感じでしたね。 ゲネプロに学生を入れたので、省エネ歌唱出来なかったのが原因では。題名役は中一日はかわいそうですね。それでも一応歌いきったクルスはいいテノールだと思います。 コロンバーラは5年前にチューリヒでラ・ファヴォリートゥ(仏語の原典版です)を聴いた時は、イタリア語にしか聞こえないフランス語で大声を張り上げていたので、懸念していましたが、今回は大進歩ですね。 二日目は谷田さんが重唱でずれていましたが、スピーカーを使っていると思いますが、モニターを見て歌って電気処理で微妙に遅れる歌声と舞台上の歌手とオケを合わせないといけない指揮者という仕事はやはり大変です。 でもフィッシャーはいい指揮者でしたね。無名のころのドミンゴが修行したイスラエル・オペラの音楽監督をやっているだけのことはあります。 いい公演でしたが、あのセットが今頃廃棄されていると思うと悲しいですね。 |