藤沢市民オペラ 《カヴァレリア・ルスティカーナ》《道化師》
2010年11月13日(土)6:00PM 藤沢市民会館大ホール

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 イタリア留学中の笛田博昭さんの久しぶりの舞台を見るために、藤沢まで遠征しました。
 どうせなら、日本のトップテノール福井敬さんとの聴き較べをしたいと、泊まり込みで2日間の公演を見てきました。

 新横浜から横浜まで行く直通列車が無くて、どうしたらよいのか大変難しかった。
 横浜はエイペックで世界の首脳が集まり、厳重警戒中。
 横浜から藤沢に行くのも、首都圏の交通は路線が多すぎて、どうなっているのか、よく分かりません。

 神経をすり減らしてなんとか藤沢に辿り着いた頃には暗くなっておりまして、市民会館に行くのがまたまた難しい。
 1998年の《リエンツィ》を見に来たことはあるのですが、すっかり道順を忘れてしまった。
 諦めてタクシーを拾いまして、「近いよ」と言われましたが、710円でこの苦しみから逃れることが出来るのなら安いものです (^_^; 。

 僕はオケピットを見ながらオペラを見るのが好きなのですが、この劇場は2階席が異様に高い場所にあり、オケピットも見えない状態なので、今回は1階での観劇です。

JR藤沢駅 藤沢市民会館
  ロビー


  《カヴァレリア・ルスティカーナ》《道化師》
   2010年11月13日(土)6:00PM
   藤沢市民会館大ホール

  総監督:畑中良輔 監修:平野忠彦

  指揮:上野正博(カヴァレリア・ルスティカーナ)
      清水史広(道化師)

  演出:岩田達宗

  サントゥッツァ:小濱妙美
  トゥリッドゥ:岡田尚之
  ローラ:山本香代
  アルフィオ:久保和範
  ルチア:栗林朋子

  カニオ:福井敬
  ネッダ:塩田美奈子
  トニオ:牧野正人
  ペッペ:大槻孝志
  シルヴィオ:与那城敬

  管弦楽:藤沢市民交響楽団


 《カヴァレリア》の舞台装置は、舞台奥に大きい教会が建っていて、上手前面にマンマ・ルチアの酒場。
 道化師は教会の前に仮面劇の舞台が設置され、なかなか経済的な良いアイディアかと思いました。

 小濱妙美さんはソプラノで、いつも聴くメゾのサントゥッツァとは当然の事ながら響きが違うけれど、しかし熱演でした。
 トゥリッドゥの岡田尚之はカチッとした芯のある良いテノールだと思いました。
 ローラの山本香代さん、アルフィオの久保和範さん、ルチアの栗林朋子さん、皆さま良い出来だったと思います。

 この日の《道化師》は日本のトップクラスのメンバーが集まった、今回の上演で最も期待される演目でしょう。

 僕は2007年に関西歌劇団の《道化師》で田中勉さんのトニオの素晴らしさに仰天して、「トニオは田中さんに限る」と思っているのですが、本日の牧野正人さんも素晴らしかった。
 朗々と歌い上げられる「プロローグ」を聴かせていただくのは、オペラファン至福の時ですね。

 カニオの福井敬さんは期待どおりの演技派で、カニオの悲哀を演じて同情してしまいました。
 「衣装を着けろ」を歌い終わってからの長い後奏の段取りには感心しました。

 ネッダの塩田美奈子さんは、美人でスタイルの良い方でした。
 シルヴィオの与那城敬さんは二期会のオネーギンですが、ルックスも声も、これほど印象に残るシルヴィオを見たのは初めてかもしれません。
 ネッダとの二重唱の美しかったこと。

 演出は《道化師》の方が、良く手が入っていると思いました。
 劇中劇の間、物売りがものを売ったり、観客一人一人に自然な演技が付けられている。
 舞台を心配そうに見つめるシルヴィオにはスポットライトが当てられ、劇中劇の進行に合わせたリアクションが彼の焦燥感を表しています。

 オーケストラは《カヴァレリア》は「アマチュアオーケストラが頑張っている」という感じだったのですが、《道化師》ではまったくオペラのオーケストラになっていて、その違いに驚きました。
 メンバーの方に聞くと、2つの演目でメンバーの交代は原則としてないそうです。

 よくよく思い返せば、《カヴァレリア》の上野正博さんはリズムを細かく振って、指揮棒で音を合わせていこうというタイプ。
 細やかな指揮ぶりが神経質な音楽になっていたのかも知れません。
 《道化師》の清水史広さんは、もっと音楽を流すタイプだったでしょうか。
 
 
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