P.A.ツィアーニ作曲オペラ 《ロードペとダミーラの運命》
2011年10月2日(日)3:00PM 伊丹アイフォニックホール

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 ヘンデルのオペラの日本初演を続けている Vivava Opera Company(VOC)が今年取り組んだのは、P.A.ツィアーニ作曲のオペラ《ロードペとダミーラの運命》の現代世界初演。

 ロンドン大学ゴールドスミス校講師の松本直美さん(愛知県立大学卒業)が、現存する台本、手稿譜から現代の演奏用楽譜にまとめ上げた労作です。

 まずはチラシから引用させていただきます。

 今も私たちを魅了してやまないヴェネツィア
 17世紀のこの都市はLa Serenissima(最も静謐な国)と賛美されたヴェネツィア共和国の首都としての栄華を誇ると共に、1637年世界で始めてオペラ劇場をオープンさせたオペラのメッカとしても君臨していました。
 現在でもよく上演されるモンテヴェルディのオペラ《ウリッセの帰還》や《ポッペアの戴冠》もヴェネツィアで初演されています。
 巨匠モンテヴェルディ亡き後、その弟子カヴァッリが台頭しますが、今回VOCが上演する《ロードペとダミーラの運命》の作曲者ツィアーニは、モンテヴェルディ、カヴァッリに次ぐいわば「第三の男」として高い名声を誇った人物です。


   ピエトロ・アンドレア・ツィアーニ作曲
   オペラ 《ロードペとダミーラの運命》
   2011年10月2日(日)3:00PM
   伊丹アイフォニックホール
   現代世界初演・原語上演・字幕付

   ロードペ :松岡 万希
   クレオンテ、ディレット:萩原 次己
   ダミーラ(フィダルバ):端山 梨奈
   ニグラーネ、ジウノーネ:福島 紀子
   ブレンノ、イメネーオ:山田 愛子
   レリーノ、ラシーヴィア:古瀬 まきを
   シカンドロ:松原 友
   バート:藤村 匡人
   ネリーナ:橋爪 万里子

  《バロック・アンサンブル・VOC》
   第1ヴァイオリン: 嵯峨山 庸子
   第2ヴァイオリン: 伊左地 道生
   チェロ: 上塚 憲一(リーダー)
   コントラバス: 田中 寿代
   リュート: 高本 一郎
   チェンバロ: 森 裕

 このオペラは第1幕90分、第2幕60分、第3幕60分と、ワーグナー並みの長さを要するオペラでした。
 全体的にレシタティーヴォが多く、これだけの量の楽譜を暗譜されたキャストの皆さまの努力には敬意を払わずにはいられません。
 《神々の黄昏》を暗譜するより楽譜の量は多いかも知れません。
 時々プロンプターの声が聞こえてきましたし、音楽が止まった部分もあったような気がします。

 アイフォニックホールはこぢんまりとした良いホールなのですが、椅子の前後の幅が狭く、長時間の観劇には体力が必要かと思いました。
 でも、途中で帰られた方は少なかったようです。

 プログラムから引用させていただきます。
 エジプト王・クレオンテはダミーラという王妃がありながら愛妾ロードペに夢中になり、邪魔になった王妃をナイルの船旅に誘い出し、事故にみせかけて王妃の船を漂流させる。
 行方不明となったダミーラは死んだと推測されて盛大な国葬が執り行われた後、ロードペが宮廷に迎え入れられる。
 しかし実はダミーラは岸に泳ぎ着いており‥‥。

 ストーリーは三角関係あり四角関係ありの複雑なもので(というかまとまりのないもので)、納得できない部分もありましたが、それも含めて、この珍しいオペラを見ること、聴くことが出来たのは貴重な経験でした。
 今回の現代世界初演に関係された皆さまに感謝したいと思います。

 会場が小さいため、皆さまの声がよく聞こえてきましたが、中でもロードペ役の松岡万希さんには圧倒されました。
 出番は少なかったけれど、シカンドロ役の松原友さんも立派な声でした。
 ダミーラ役の端山梨奈さんも安定した歌唱かと思いました。

 舞台装置は後ろのスクリーンに絵を投影するものでしたが、上手くストーリーを説明しながら、かといってやりすぎにもならず、納得できるものでした。
 王宮の壁に掛けてあったダミーラの絵が落ちて、また掛け直すところが面白く、会場から笑い声が上がっていました。

 来年はまたヘンデルに戻って、《ラダミスト》が上演される予定だそうです。
 

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