ミュージカル 《レ・ミゼラブル》 新演出
2013年10月2日(土)6:15PM 中日劇場

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 《レ・ミゼラブル》は僕が最も愛するミュージカルの一つですが、25周年を記念しての新演出だそうです。
 あの酷い映画を見せられた上に慣れ親しんだ舞台演出まで変えられてしまう。
 キャストが一新され知らない人ばかり、バリケードの回り舞台が無くなってしまう、などと聞けば、腰も引けてしまうというものです。

 しかしながら、長い間このミュージカルを見てきたものとして、一度は新演出なるものを見ておかねばならない。
 「こども店長」加藤清史郎くんのガブローシュも見ておきたい、ということで、開演2日目の今日のチケットを購入しました。
 良かったら平日の空いている日を追加してみようという作戦です。

 ミュージカル 《レ・ミゼラブル》 新演出
 2013年10月2日(土)6:15PM
       中日劇場

   バルジャン:福井晶一
   ジャベール:鎌田誠樹
   エポニーヌ:昆 夏美
   ファンテーヌ:里 アンナ
   コゼット:若井久美子
   マリウス:田村良太
   テナルディエ:駒田 一
   マダム・テナルディエ:浦島りんこ
   アンジョルラス:野島直人
   ガブローシュ:加藤清史郎
   リトル・コゼット:清水詩音

 キャスト表を見ると、今までの《レ・ミゼラブル》で知っているのはテナルディエの駒田一さんだけ。
 どういう歌を聞かされるのやら、どういう演技を見せられるのやら、不安は募ります。
 しかし、さすがオーディションで選ばれただけあって、レベルの高い人が揃っているようでした。

 新演出を担当したのはローレンス・コナーとジェームズ・パウエル。
 ローレンス・コナーは《ミス・サイゴン》の新演出を担当した人で、あれはなかなか上手く行っていると感心したものです。

 もともと 《レ・ミゼラブル》は長いミュージカルなんですが、繰り返しをカットするなどあちこちから少しずつ削って、時間短縮を図っている。
 これ自体は悪いことでは無いでしょう。
 歌詞は今まで通りなんですが、オーケストレーションにはかなりの変更があり、これは少なからぬ違和感がありました。
 楽器編成が小さくなり、これは回り舞台が無くなったことと合わせ、地方巡業がしやすくなっているのでしょう。

 バルジャンの漂流時代で気に入ったのは、通りかかった子供からお金を取り上げる場面があったこと。
 《レ・ミゼラブル》はジャベールがバルジャンを追っかける話なんですが、なぜジャベールはバルジャンを追っかけているのでしょう?
 ユーゴーの原作を斜め読みしてみると、ジャベールは子供から小銭を盗んだ犯人としてバルジャンを追いかけているわけです。
 だから、今までの舞台には無かったこの場面は絶対に必要なんです。
 もっとも、その後は今まで通りで、何の伏線にもなってはいませんでしたけれどもね (^_^ゞ。

 逆に不快だったのは、テナルディエの宿屋に視覚障害者が入ってきて、障害者いじめがされたこと。
 なぜ、わざわざ障害者の客を登場させたのか?
 この新演出はユーゴーの原作に戻ろうとする意向があったと思うので、原作に障害者が出てくるのかな?

 実際に物語が動き出すのはパリに入ってから。
 加藤清史郎くんのガブローシュは歌も演技も素晴らしいものでした。
 小学校6年生だそうで、今回が最後のガブローシュでしょうか。

 新演出が優れているのは、レミゼファンにとって、どうしても無くてはならない場面が残されていること。
 第一幕フィナーレの「ワン デイ モア」はバルジャン、ジャベール、テナルディエ夫妻など歌う場所が変わっているのですが、最後には列を組んで行進するおなじみの場面になるんですね。
 今までの版に対するレスペクトに好感を持ちました。

 学生暴動のバリケードが回り舞台では無くなったため、いろいろ演出に変更があります。
 なかでも、ガブロッシュとアンジョルラスの死ぬ場所が変わってしまいました。
 しかしながら、ガブロッシュの死の場面は秀逸なアイディアかと思いました。

 もう一つ書いておきたいのが、「共に飲もう」。
 翌日の政府軍の総攻撃を前に、バリケードの学生たちは昔を思い出しながら「過ぎた日に乾杯」と歌います。
 ところが第2節でグランテールが「死ぬのが怖くないのか」と呼びかける。
 ここで彼らは初めて死の恐怖を感じ、舞台は悲劇的な色調を帯びてくる、重要な転換点です。
 その事に僕が気が付いたのは1995年6月7日にロンドンの舞台を見た時でした。

 しかしながら今まで見てきたほとんどの日本公演では、そのところがはっきり表現されず、物足りなく思っていました。
 新演出では学生たちの気弱なグランテールに対する怒り、そして自分たちの死についての恐怖が表現されていました。
 やっとこの場面の重要性に正面から向き合った演出を見ることが出来て嬉しく思いました。

 ということで、この新演出は予想以上に気に入りました。
 そこでネットでチケットを買い足そうと思ったのですが、すでに平日の公演も売り切れておりました (@o@)。
 いまはネットオークションでチケットを探しています。