新国立劇場 舞台神聖劇 《パルジファル》
2014年10月8日(水)2:00PM

「REVIEW14」に戻る  ホームページへ  《パルジファル》観劇記録
 
 
 毎回書いているのですが、僕は一度だけバイロイト歌劇場で観劇したことがあって、それは1980年8月16日(土)の《パルジファル》

 あの時は「ワーグナーの難しいオペラを見るのは一生に一度」と思ったのですが、その後もあちこちで《パルジファル》を見る機会があり、今回が10回目の《パルジファル》になるようです。
 こんなに何回も《パルジファル》を観劇する人生を送ることになるとは、自分でも驚いています (^_^ゞ。
 中でも、バイロイトの公演と2000年10月8日の関西二期会の日本初演が記憶に強く残っています。

 今回の公演の心配はハリー・クプファーの演出で、かつて鬼才と呼ばれたクプファーの来日公演はどれも面白くありませんでした。
 彼の最高の演出はウィーンミュージカル《エリザベート》だと思っています。
 そのクプファーも80台に近いそうで、今までに200を超える舞台演出をしているそうです。
 彼の頭の中に新しいアイディアの泉は沸いているのでしょうか?
 才能は枯渇するものですからね。

 新国立劇場 舞台神聖劇《パルジファル》
 2014年10月8日(水)2:00PM

 指揮:飯守 泰次郎
 演出:ハリー・クプファー

 アムフォルタス:エギルス・シリンス
 ティトゥレル:長谷川 顯
 グルネマンツ:ジョン・トムリンソン
 パルジファル:クリスティアン・フランツ
 クリングゾル:ロバート・ボーク
 クンドリー:エヴェリン・ヘルリツィウス
 第1の聖杯騎士:村上公太
 第2の聖杯騎士:北川 辰彦
 4人の小姓:九嶋香奈枝 國光ともこ 鈴木准 小原啓楼
 花の乙女たち1:三宅理恵 鵜木絵里 小野美咲
 花の乙女たち2:針生美智子 小林沙羅 増田弥生
 アルトソロ:池田 香織
 合唱:新国立劇場合唱団
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 前奏曲で幕が上がると、舞台には下の写真に見るように「光の道」があります。
 「光の道」は新国立劇場の舞台機構を誇示するかのように大きく動きます。
 オペラ的にはあまり意味のない動きかとも思いましたが、見ている分には楽しかったですね。
 そして、大きな刀「メッサー」が空中を自由に動きます。
 「メッサー」は《エリザベート》の舞台を思い出させました。

 「光の道」と「メッサー」はLED電球によるもので、新国立劇場のHPによれば、LEDのパネルは1枚が24cm 角で、それを「光の道」に約1900枚、「メッサー」に約200枚、全体で64万個のLEDを使用しているそうです。

 昨日(10/7)にノーベル財団はノーベル物理学賞受賞者に、青色LEDを初めて作成した、赤崎勇・名城大教授(85)と天野浩・名古屋大教授(54)、中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授(60)の日本の3人に贈ると発表しました。

 そのニュースに相応しいLED祝祭公演かと思って見ていました (^_^) 。
 名古屋大学はノーベル賞受賞者を次々と輩出して、すごいですね。

 世界中のオペラハウスに経費節減の嵐が吹いています。
 来日公演をしたローマ歌劇場は、オーケストラと合唱団を解雇したそうです。
 その中でこれほどのお金をかけた舞台を見ることが出来るとは、アベノミクスのおかげでしょうか。

 長い時間をかけて到達したフィナーレで、パルジファル、グルネマンツ、クンドリーがお坊さんになってしまったのにはガッカリしました。
 プログラムの解説を読まないと理解できないような演出は嫌いです。
 すっきりしない気持ちのまま劇場を後にすることになりました。

 演出家がクプファーに決まった時点で、これくらいは予想できたことなのでしょうか?
 解説は帰りの新幹線で読みました。

 《パルジファル》10回の観劇で、4回が飯守泰次郎さんの指揮です。
 今回は飯守さんの新国立劇場芸術監督としての最初の公演になります。
 飯守さんならこれくらいの演奏は想定内で、新しい驚きはありませんでした。
 オーケストラには時々ミスがあり、現実に引き戻されるというか、音楽に浸ることができない部分がありました。

 キャストはどの方も素晴らしい出来で、大いに満足しました。
 パルジファル役のクリスティアン・フランツが小柄で、髪が薄く、衣装も作業着。
 聖杯王には見えないのが残念でした。