ドイツ音楽紀行(8)1997年4月13日(日)
ボン歌劇場《パルジファル》

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 ボンのオペラハウスはライン川に沿って建っている。
 前に広場を持った近代的な建物だが、少し町外れという印象もあった。
 1時間以上前に到着したら、当日券を買う人が並んでいた。
 今回の旅行では、チューリッヒのオペラハウス以外なら、当日券が買えるようだった。

 観客はそれなりに着飾った人が多いが、ネクタイさえしていれば大丈夫。
 この歌劇場、ロビーは広かったが劇場内はあまり広くない。
 立ち見席は無かった。
 
オペラハウス テラスからライン川を望む

        ワーグナー作曲《パルジファル》
        1997年4月13日(日)17:00

      MUSIKALISCHE LEITUNG:JEFFREY TATE
      INSZENIERUNG:GU:NTER KRA:MER

      AMFORTAS/KLINGSOR:HARRY PEETERS
      TITUREL:FRANZ MAZURA
      GURUNEMANZ:FRANZ-JOSEF SELIG
      PARSIFAL:CHRISTOPHER VENTRIS
      KUNDRY I:CAROL YAHR
      KUNDRY II:INGRID ANDREE

 《パルジファル》はワーグナー最後のオペラで、聖杯伝説を扱っているんだが、とても難解なオペラだとされている。
 まあ簡単にいえば、『聖なる愚か者・パルジファル』が聖杯王となるお話だ。

 3月23日プレミエのクレーマーによる新演出は、抽象的なもので、キャスト表を見ても分かるとおり、魔性の女・クンドリーが2人いる (@_@)。
 歌うクンドリーと、訳の分からない動きをする演技用のクンドリーだ。
 何のために、こんなことをするんだろう?

 この新演出は、その他にも訳の分からないというか、納得できない部分が多かったんだが、特にひどかったのが第3幕。
 聖杯を護る騎士・グルネマンツが『聖杯王アムフォルタスは苦悩のために勤めを果たさず、先代のティトレル王は死んでしまった』と歌いながら、舞台に置かれた包みを開けると、そこからティトレル王の死体が出てきた(@_@)。
 あまりのことに、思わず笑ってしまったな。

 しかし、笑っていられるのもここまでだった。
 僕がこのオペラで知っている音楽は『聖金曜日の音楽』だけなんだが、この美しい音楽を、グルネマンツはティトレル王の死体に花を積みながら歌う (@_@)。
 パルジファル『草原が今日は何と美しく見えることだろう』
 グルネマンツ『それこそが聖金曜日の奇蹟なのです』
 という場面なのに、何で本来そこにいるはずのないティトレル王の死体に花を積まなきゃいけないの ???
 こんな演出家の気まぐれに付き合うのはもうけっこう !
 怒りが天井まで爆発するような思いだ (^_^;。

 歌手はそれなりに良かったんだが、ジェフリー・テートの指揮がまた良くなかった。
 彼の指揮は拍子を取っているだけで、音楽を表現していない。
 こんなに酔わせてくれないワーグナーなんて。
 テートといえばモーツアルトの録音で評価の高い指揮者だし、バイロイトの副指揮者もしていたとのことなので期待していたんだが、全くの期待外れ。
 オーケストラや合唱のレベルにも問題があると思われたが、これは指揮者のためもあるのかもしれない。

 終演は10時30分。
 もう遅いのでホテルにタクシーで帰ろうと思ったんだが、劇場前にはタクシーが止まっていない。
 仕方がないので中央駅まで歩いたが、誰もいないマルクト広場で『お金を頂戴』というお兄さんが寄ってきて、これは本当に怖かった。

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