ドイツ音楽紀行(23)1997年4月16日(水)
フランクフルト歌劇場《フィデリオ》
 
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 バーデンバーデンからのIR( INTER REGIO 特急料金が要らない ^_^ )は18:11フランクフルト中央駅に到着した。
 昨朝預けたコインロッカーからスーツケースを取り出し、となりのインターシティホテルに荷物だけ放り込み、ネクタイを締めて地下鉄に乗る。
 1つ目のウィリー・ブラント・プラッツで降り、地上に出ると、目の前の近代的な集合ビルの一角にフランクフルト歌劇場があった。
 オペラ用のドレスアップをした人たちが入って行くのですぐ分かる。

 オペラ《フィデリオ》ベートーベン作曲
 1997年4月16日(水)19:30

 MUSIKALISCHE LEITUNG
  :SYLVAIN CAMBRELING
 INSZENIERUNG
  :CHRISTOPH MARTHALER

 LEONORE:KRISTINE CIESINSKI
 FLORESTAN:PATRICK RAFTERY
 ROCCO:ERICH KNODT
 DON PIZARRO: HENK SMIT
 MARZELLINE:OXANA ARKAEVA
 JAQUINO:HANS-JU:RGEN LAZAR
 DON FERNAND:VLADIMIR DE KANEL

 《フィデリオ》はベートーベン唯一のオペラで、無実の罪で捕らえられた夫フロレスタンを、妻レオノーレが救い出すというお話。
 彼女は男性に変装して、フィデリオと名乗り、夫が入獄している刑務所の助手となり、夫を救い出すチャンスを待っている。

 場内は4階まで馬蹄型の座席がある、クラシックな雰囲気。
 この《フィデリオ》は新演出で、プレミエが4月13日。
 僕が見た日は2日目の公演に当たる。

 幕が開くと、そこは現代の刑務所の地下のクリーニング工場(だと思う)。
 下手にコントロール室、上手に乾燥室の扉。

  MARTHALER(何と読むのか?)の演出は、かなり疑問の多いものだった。
 僕から見れば、必要な動きが無く、不必要な動きが多い。
 例えば、上司のロッコのアリアの時にフィデリオはコントロール室でタイプライターを打つ (@_@)。
 リズムと関係無しに。
 こんな雑音、不必要だと思わない?
 また、オーケストラの演奏中に壁の絵を落としたり、積んである荷物を倒したり、何度も同じことの繰り返しで、音はうるさいし、全く不愉快になってしまった。
 『もういい加減にしてほしい!』と思ったそのときに、会場から大きな声が聞こえてきた (@_@)。
 どうも演出の非難をしているようだ。
 それをたしなめる人と言い争いになり、会場に緊張が高まる。
 『これは面白いことになった。もっともっと言ってくれ!』とワクワクしてしまったんだが 、この件はこれだけで終わってしまった (^_^;。

 数年後「音楽の友」を読んでいたら、この公演で騒いだ人がオペラハウスに出入り禁止になり、裁判を起こしたという記事が出ていた。
 判決は支配人の負け。
 そりゃそうだ。 あれはひどい公演だったよ。

 僕がこのオペラで知っている唯一の場面は『囚人の合唱』なんだが、囚人達は突然、普段着を着て現れる。
 ドイツの刑務所では、服役囚は普段着(ブレザー、セーター)を着ているのか?

 フィデリオがフロレスタンを助けた後は、お約束の《レオノーレ序曲第3番》。
 ここで、奥の壁が開き、高い階段が現れた。
 そこをうろうろ、上に行ったり下に行ったりしている男が一人。
 これがフロレスタンを助けに来た大臣ドン・フェルナンドだというんだから笑ってしまう。

 フロレスタンは長い拘置生活で足が不自由になってしまい(黒田官兵衛だな)、歩くことが出来ないという設定のようで、ふらふら倒れそうで、気になって、音楽を楽しめない。
 全く不必要な設定だと思う。

 こんな上演でも、カーテンコールの拍手は盛大だった。
 ドイツではおかしな演出をすれば受けるのだろうか?
 こんなことではおかしな演出がエスカレートするんじゃないか? という懸念を僕は持った。
 終演は22:30。

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