ドイツ音楽紀行(28)1997年4月17日(木) バーゼル《オペラ座の怪人》 |
前回も書いたが、僕がバーゼルに行ったのは、フランクフルトからチューリッヒのルート上にあったことが大きいんだが、《オペラ座の怪人》を見ることも、大きな目的の1つであった。 《オペラ座の怪人》が上演されている BASEL MUSICAL THEATER はメッセ(見本市会場)の近くにある。 少し町外れという印象。 この《オペラ座の怪人》上演のために、新しく建てられた劇場のようだ。 日替わりで英語とドイツ語の公演が行われているんだが、僕が見た日は英語の公演日だった。 1997年4月17日(木) THE FANTOM:ROBIN BUCK CHRISTINE DAAE:UTE BAUM RAUL:BJO:RN OLSSON CARLOTTA GIUDICELLI:LEIGH MUNRO MEG GIRY:JULIE BOATH MADAME GIRY:BANIE THORPE UBALDO PIANGI:LARRY MORBITT 《オペラ座の怪人》といえば、『ミュージカルの代名詞』といえるほど、有名なミュージカルだ。 作曲のアンドリュー・ロイド・ウェッバーは《キャッツ》《ジーザス・クライスト・スーパースター》《サンセット大通り》などの大ヒットを生み出しており、音楽史に名を残す大作曲家である、と僕には思われる。 パリのオペラ座の地下には、マスクで顔を隠した住む醜い怪人が住んでいる。 彼は踊り子のクリスティーヌ・ダーエを愛し、彼女をプリマドンナにしようとレッスンをする。 しかし、彼女にはラウル子爵という恋人が現れ‥‥ クリスティーヌが怪人にさらわれて地下の湖をボートで行くと、何もなかった床から無数のロウソクがせり上がってくる幻想的な場面。 それから、第一幕最後に、客席天井のシャンデリアが落ちてくる場面が見せ場であろうか。 劇団四季の《オペラ座の怪人》は、いま名古屋でロングラン中で、僕は月に2回くらい通っている。 僕は2年前にロンドンでこのミュージカルを見たんだが、ちっとも面白くなくて、がっかりした。 しかし、このバーゼルの舞台は納得させられることが多く、世界最高の《オペラ座の怪人》だった、と言っておこう。 最初から書いていくと、まずクリスティーヌの敵役になるベテランソプラノのカルロッタ。 この人が太ったおばさん。 『何だこれは(@_@)?』と思って見ていたんだが、考えてみればこれがカルロッタの正しいキャラクターなんだろう。 歌い方なんかも、大げさで芝居がかって、これでこそ怪人が彼女を降ろしたくなる気持ちが良く分かる というものだ(^_^) 。 カルロッタはイタリア人。 で背景の絵が突然落ちてきたところで、『よくあることですって!?』と怒るんだが、この部分の英語は『HAPPEN』。 しかし、イタリア人は『H』の音を発音しないので、『アップン』になる。 彼女が怒って『アップン! アップン!』と叫ぶ度に、客席は大笑い。 クリスティーヌのウテ・バウムはファーストキャストで、大柄の美人だ。 で、彼女が、怒って出ていってしまったカルロッタの代わりに歌うんだが、これがか細い声で自信無さそう。 で、また『何だこれは(@_@)?』と思ったんだが、これはお芝居。 友人メグの応援で我に返ったクリスティーヌは自信を取り戻し、のびのびと歌い始める。 こういう細かい配慮は好きだな。 細かい配慮といえば、屋上でのクリスティーヌとラウルのラブシーン。 急にラウルにキスされたクリスティーヌは思わず身をすくめてしまう。 これで、このキスが彼女にとってファーストキスだったことが分かる。 で、彼女は純潔だ、ということが分かるだろう? 2回目のキスは熱烈だったが (^_^;。 最後に、怪人なんだが、怪人のファーストキャストは FRORIAN SCHNEIDER 。 次にファーストの交代用キャストがいて、DAVID GASCHEN。 僕が見たロビン・ブック(でいいのかな?)は、その下のセカンドキャストになる。 しかしこの人は良かった。 感情表現が、実に適切。 例えば、先に書いた屋上でのクリスティーヌとラウルのラブシーン。 怪人は空中に浮かぶエンジェル像の上で、ラウルとクリスティーヌの歌を聴きながら、怒りをこらえきれず『ウ〜〜〜』と唸っている。 で、最後は『ウ〜〜〜〜〜〜』とクレッシェンドがかかって、『この様な辱めを‥‥』となるわけだ。 この様にしていただくと、怪人の怒り、悲しみが大変分かり易い。 ということで、僕はバーゼルの《オペラ座の怪人》に、大変満足しました。 これから海外に《オペラ座の怪人》を見に出かけられる方には、ロンドンよりバーゼルをお薦めしたいものですが、実際問題としてバーゼルに行くのは、なかなか難しいでしょうね (^_^;。 |