ドイツ音楽紀行99(18) 1999年5月2日(日)
ベルリン[ (コミッシェオパー・サウル)

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 この日(5/2)はベルリン・ドイツ・オパー《さまよえるオランダ人》とコミッシェオパー《サウル》という二つのオペラが上演される。
 ドイツ・オペラの建物には入ってみたかったけれど、《さまよえるオランダ人》って日本公演がテレビでも放映された、あのおかしな演出でしょう?
 それよりは日本ではまず上演されることがないであろう《サウル》に行くことにした。
 このオペラはこの日がプレミエ公演であった。
 1時にチケットオフィスの開場を待って15マルクの最低料金(だと思う)チケットを確保した。

 《サウル》はヘンデルがオペラからオラトリオに路線を変えた時期(1738年・53歳)に作曲されたオラトリオ。
 僕は《サウル》という作品の存在自体今回まで知らなかったが (^^ゞ、オラトリオがオペラとして上演されることは珍しいのではないだろうか?。
 ストーリーは旧約聖書サムエル記に書かれたイスラエルの王サウルとダビデの物語。

      《サウル》ベルリン・コミッシェオパー
       1999年5月2日(日)7PM
    2Rang Rechts Reihe6 Platz1
          15マルク(1050円)

   指揮:アラン・ハッカー(ALAN HACKER)
   演出:アントニー・ピラヴァッキ?
           (ANTHONY PILAVACHI)

  サウル:ヨハネス・シュミット
       (JOHANNES SCHMIDT)
  ヨナタン(サウルの息子):ダニエッル・キルヒ
                  (DANIEL KIRCH)
  ダビデ:ヨッヘン・コワルスキ(JOCHEN KOWALSKI)
  メラブ(サウルの上の娘):ロメリア・リヒテンシュタイン(ROMELIA LICHTENSTEIN)
  ミカル(サウルの下の娘):マルセラ・デ・ロア(MARCELA DE LOA)

 6時半にコミッシェオパーに着くと『Suche 1 Karte 』という札を持って立っている人がいる。
 観客が半分だった昨日の《リエンツィ》とは大違いだ。
 さすがのプレミエであろうか。
 プレス用の受け付けも作られていた。
   さて、この《サウル》の公演は素晴らしかった。
 まず感激したのがヘンデルの音楽。
 この作品を聴くのは初めてだったが、何という充実し、気迫に満ちた音楽であろう (@o@)。

 アラン・ハッカー指揮するオーケストラが、また素晴らしかった。
 この指揮者は車椅子に乗っていて、オケピットには車椅子用のスロープが作られていた。
 彼はサウスポーで、左手に持った指揮棒でオケを舞台をどんどん引っ張っていく。
 オーケストラはバロックスタイルだが、オルガンが実に有効に使われていた。
 ここで特筆すべきは日本人コンサートミストレスの音楽的リーダーとしての活躍ぶりで、同じ日本人として大変誇らしく思った。

 ヨッヘン・コワルスキーを始めとする歌手がまた素晴らしかった。
 それに合唱のおそるべき迫力。
 カーテンコールでは、合唱に対するブラヴォー!が一番大きかったかもしれない。
 合唱で始まり合唱で終わる曲だからね。


 このオペラで取り上げられるのは、ダビデがゴリアテの首を持って帰り、民衆の英雄となる場面から。
 最初の場面はこのカーテンの前で演じられる。
 赤い服を着たイスラエルの民衆の前に、ゴリアテを倒し、その首を持ったダビデが戻ってくる。
 で、間仕切のカーテンが上がると後ろには一段高い舞台があって、そこはヴィスコンティの映画にでも出てきそうな貴族の食卓。
 長い机が縦長に置かれ、この劇場の奥行きの深さを有効に利用している。
 プログラムにはシュテファン・ツヴァイクの言葉が書かれていたので、彼の時代に時間を設定しているのだろうか?
 ダビデはゴリアテの首を持って、その食卓に(貴族のコミュニティーに)入って行くわけだ。
 服装なんかはモダンなんだが、彼らの演技はまったく《サウル》にふさわしいものだった。
 王サウルのダビデ人気に対する妬みと怖れ、ダビデとヨナタン(サウルの息子)との友情、ダビデとミカル(サウルの娘)との愛情などなど。
 第二幕では死体の頭をノコギリで切って、脳みそを取り出す場面 (@o@)があったが、あれは何だったのであろうか?

 終演は10時。
 カーテンコールの拍手は15分も続く熱烈なものだった。
 歌手に、合唱に、指揮者に、オーケストラに、演出家を始めとする制作スタッフに、拍手は惜しみなく送られた。
 フラッシュが盛んに光っていたのは、意外だったけれど。
 この《サウル》は大変成功したプロダクションと言っていいだろう。

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