ウィーンミュージカル 《エリザベート》 (2)
◇ 彼は職責を果たす/思ったようにはならない
 
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◇シーン3 ウィーン王宮の謁見の間

 『彼は職責を果たす』

 ウィーン王宮の謁見の間でゾフィー皇太后の指示を受けながら仕事をするフランツ・ヨーゼフ。
 宗教問題、人権問題、外交問題、彼が決裁すべき案件は多い。

 ゾフィーのことを『 einige Mann 』と言うところは、「Mann」を「人間」と訳すのか「男性」と訳すのか迷ったところだが、ルケーニがいかにも皮肉っぽく言うので、『王宮唯一の男性』と訳すのがふさわしいようだ。

 フランツ・ヨーゼフは、史実どおり髪が薄い。
 グリュン伯爵が、期待通りおじいさんなので嬉しくなる(^_^)。

 ◇シーン4 バート・イシュル

 『思ったようにはならない』

 1853年8月16日。
 バート・イシュルのお見合に、エリーザベト一行は(なんと!)回転木馬の木馬に引かれてやってくる。
 嵐のため一行は遅れてしまい、フランツ・ヨーゼフ皇帝はお待ちかねだ。
 ルケーニはポーターに扮している。
 
 そこに鹿の剥製がいっぱい天井から降りてくる。
 これは明らかにカイザー・ヴィラ(鹿の剥製が壁にいっぱい掛かっている)のイメージだ。

 この壁に並べられた剥製については、ヴィスコンティの有名な映画『ルードウィッヒ/神々の黄昏』で見ることが(一瞬だけど)出来る。
 ライブ録音CDで聞かれる銃声は、狩猟好きのフランツ・ヨーゼフが撃つ銃の音だ。
 
カイザーヴィラ ホテル・オーストリア
 
 
 スタジオ録音CDのリブレットに舞台はヴィラ・エルツと書かれているが、ヴィラ・エルツはエルツ博士所有の別荘マルスタリヤー荘で、この時フランツ・ヨーゼフ一行の宿舎になっていた。
 この建物はのちにハプスブルグ家に買い上げられ、カイザー・ヴィラとなる。

 ところが僕の現地調査では、エリザベートとフランツ・ヨーゼフが会ってそして婚約したのは、トラウン川に面するホテル・オーストリア(エリザベート一行の宿舎)の2階のロビーだったんだそうだ。
 現在では2階は郷土博物館となっていて昔を偲ぶ術もないが、エリザベートはこの窓からどういう思いで下を流れるトラウン川を眺めたのだろう?

 カイザー・ヴィラで案内嬢に聞いたところ、オーストリアでは『S』を濁らないので、『SISI』を『シシ』と呼ぶように『SOPHIE』は『ソフィ』と発音するそうだ。 なるほど。
 ところが『ELISABETH』は『エリーサベト』ではなく『エリーザベト』なんだそうだ。
 よく分からないな (^_^ゞ。

 さて、舞台に戻って‥‥
 フランツ・ヨーゼフはゾフィーやルドヴィカの思惑とは異なり、ヘレーネではなく、妹のエリザベートを選んでしまう。
 『人間が考えたこと、それはいくら巧く企んでも、思ったようにはならない』とルケーニがあざ笑う。
 
 
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