ウィーンミュージカル《エリザベート》(12)
◇ 僕があなたの鏡だったら ヘルメスヴィラ
 
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◇シーン11 ヘルメスヴィラ

 舞台となっているヘルメスヴィラは、ウィーン市内・シェーンブルン宮殿の南西方向に当たる。
 交通手段としては、地下鉄U4 Hiezing から市電60番・Radaun 行きに乗って Hermesstrasse で下車し、そこからバスで Lainzer Tiergarten まで。
 タクシーなら Hiezing から1000円もかからないだろう。

 Lainzer Tiergarten の門を入ると中には草原と森が広がる。
 『 Tiergarten 』とは『狩猟場』だからね。
 門からヘルメス・ヴィラまで、徒歩20分くらい。

ヘルメスヴィラ トレーニングルーム


 ヘルメス・ヴィラは別荘ということで、それほど大きい建物ではない。
 入口左手の階段を上がると、そこには写真集で見るエリザベート皇后のトレーニングルームがあった。
 赤い壁にはヘルメスなど、裸の男性がたくさん描かれている。
 この男性たちに見つめられながら、彼女はシェイプアップに励んだわけだ。

 その奥は彼女の化粧室。
 おお! ここが『僕があなたの鏡だったら』の舞台ではないか!
 ルドルフが彼女の助けを求めに来たときに、彼女はこの部屋で髪の手入れをしていたのであろうか?

 その奥は寝室(写真 → )で、エリザベートが使った机やベッドが置かれている。
 壁や天井には壁画が描かれていて、フランツ・ヨーゼフの等身大の人形も立っていた。

 他に観光客もいない部屋にひとり佇んでいると、エリザベート皇后と対面しているような感じがしてくる。
 エリザベートファンの人には、ここは絶対のお薦め。

 『僕があなたの鏡だったら』

 長くなったが、ミュージカルに戻って‥‥。
 追いつめられたルドルフが、母であるエリザベートのところに助けを求めてやって来る。
 エリザベートはなんと鏡の中にいて、美容師に髪の手入れをさせている (@o@) 。

 美容師の名前はフランツィスカ・ファイファリク。
 彼女はエリザベートのお気に入りだったが、彼女のご機嫌次第でエリザベートの髪のセットが出来なくなり、王室行事のスケジュールに支障が出たそうだ。

 ファイファリクの写真はシェーンブルン宮殿で見ることが出来る。
 手軽には『后妃エリザベートの真実』(集英社文庫・610円)の39ページを参照のこと (^_^) 。

 さて、ルドルフはそのエリザベートが入っている鏡を後ろにして観客に向かって歌うんだが、鏡には彼の後ろ姿が映っている。
 どういうことかというと、エリザベートは客席サイドにいるわけだ。

 つまり、僕自身がエリザベートで、ルドルフの後ろの鏡に映る自分自身の姿を見ているわけだ。
 なんという鏡の魔術 (@o@) !
 この場面の演出には本当に感心した。

 考えてみれば、この頃がクプファーの絶頂期だったかもしれない。
 その後、彼の演出は《タンホイザー》《こうもり》《ホフマン物語》《ワルキューレ》などの来日オペラ公演や、ウィーンの新作ミュージカル《モーツアルト!》などで見たが、いずれも僕には不満の残るものだったのは残念。
 才能は枯渇するものだから。

 さて、もともと僕はこの曲が大好き。
 辞世の歌というのは、心にしみる。

 私にはもはや出口が見えません   王宮と妻は、私にとって苦痛です
 私は病み、私の生活はむなしい   そしてまた、この浅ましいスキャンダル!
 私のために皇帝に謝って下さい   まだ遅くはありません

 というルドルフの願いを、エリーザベトは冷たく拒否する。
 絶望するルドルフ。

 『つまり、貴方は私を針のむしろに置いたままにするのですね‥‥』
 このルドルフのセリフは『皇后は光輝かねばならない』の最後、フランツ・ヨーゼフに絶望したエリザベートによって呟かれるセリフと全く同じものだ。
 
 
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