ウィーンミュージカル 《エリザベート》 (13)
◇ マイヤーリンク・ワルツ/哀悼歌
 
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◇シーン12 マイヤーリンク

 マイヤーリンクには2004年1月2日に、メードリンクからタクシーに乗って訪れた。
 ウィーンの森は延々と続くが、ルドルフは馬車からどんな思いでこの冬景色を眺めていたのだろう?
 ルドルフがマリー・ヴェツェラと狩猟館で心中したのは、1889年1月29日から30日にかけての夜のことだった。
 ルドルフの情死後、この館はカルメル派修道院に建て替えられた。

当時のマイヤーリンク カルメル派修道院に建て替えられた


 『マイヤーリンク・ワルツ』

 舞台には黒いロングドレスの女性たちが現れる。
 6〜7人だったような。
 そこに、さまようようにルドルフが登場する。

 彼女たちはピストルを持っているんだが、ルドルフがそのピストルを持っている女性に近づくと、彼女はピストルを次の女性に渡してしまう。
 で、ルドルフはまたその次の女性をフラフラと追い求める。

 その繰り返しで、ピストルは一番奥の女性にまで渡ってしまう。
 ルドルフがその一番奥の女性に近づくと、彼はその女性(マリー・ヴェツェラだな)につかまってしまう。
 なんとその女性はトートなの (@o@) 。
 トートはルドルフを舞台中央に引きずり出し、熱烈な口づけとともに (@o@) 、ルドルフの頭をピストルで撃ち抜いてしまう。

 驚いたのなんのって。
 男性同士の濃厚なキスシーンに動転してしまって、ピストルを持っていたのがトートなのかルドルフなのか、ちょっと記憶にない(^_^;。
 その後コメントいただいたところでは、トートがルドルフに銃を持たせ、ルドルフの手の上に自分の手をかさねて射殺したということだ。

 余談だが、マリー・ヴェツェラの遺骨は1988年にハイリゲンクロイツ修道院の墓地から盗み出され、大騒ぎとなった。
 このことは当事者の一人であるゲオルグ・マルクスの『うたかたの恋と墓泥棒』(青山出版社・1700円)に詳しいが、『世界ふしぎ発見!』に彼女の頭蓋骨が出てきたのには仰天した。
 『これがマリーの頭蓋骨です。ここに銃の穴があるでしょう?』って、持ち上げて見せるんだものな (@o@) 。
 ハイリゲンクロイツ墓地にあるマリーの墓はマイヤーリンクの帰りに訪れたが、やはり中は空なのだろうか?

ハイリゲンクロイツ墓地 マリーの墓


 ルドルフの遺体は1月31日の深夜に王宮に運ばれた。
 エリザベートは翌日の正午にルドルフの遺体に対面した。

 ルドルフの葬儀が行われたのは2月5日火曜日。
 エリザベートはこの葬儀に出席しなかった。
 2月9日土曜日の深夜、彼女は一人でカプツィーナー教会のカイザーグルフト(王室墓所)を訪れた。
 そして、彼女のルドルフを呼ぶ泣き声がいつまでも聞こえたという。

 ハプスブルグの人々の棺が安置されるこのカイザーグルフトの一角に、フランツ・ヨーゼフ、エリザベート、ルドルフの3人の棺が並んでいる。
 『この棺のふたを開けるとエリザベート皇后がそこにいる』というのは、不思議な感覚だ。

カイザーグルフト エリザベート,フランツ・ヨーゼフ,ルドルフ


 前にも書いたが『ハプスブルグ家の人々は死ぬと解剖され、心臓はアウグスティナー教会、それ以外の内臓はシュテファン寺院に、そして遺体はカイザーグルフトに納められた』というのは、どの本にも書かれている有名な話だ。
 しかしシュテファン寺院のガイドから聞いたところでは、このような残酷な習慣はフランツ・ヨーゼフによって中止されたそうだ。
 このような処理を受けたのは彼の祖父が最後で、だから、エリザベートもフランツ・ヨーゼフもルドルフも WHOLE BODY IN ONE PIECEで、この棺に収められているわけだ。

 『哀悼歌』

 スタジオ録音CDの卜書きでは、ルドルフの棺を前にエリザベートが歌うことになっているが、実際の舞台では、客席に向かって女官たちを従えた喪服のエリザベートが歌っていた。

 『ルドルフ、お前はどこにいるの? 私が呼ぶのが聞こえる?』という歌い出しは、ルドルフ(子供)の『ママ、どこにいるの』と同じ。
 そこに現れたトートに向かい、エリザベートは『私はもう十分に苦しんだ。私を哀れんで! 私を救って!』と死を望む。
 
 しかしトートは『遅すぎる! 私はお前を望まない。 行ってしまえ!』と彼女を拒否する。
 これは以前『第一部・シーン11』と『第二部・シーン6』でエリーザベトによって叫ばれた、トートに対する拒否のセリフと一緒。
 
 
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