ニュー・オペラシアター神戸 《蝶々夫人》
2010年2月6日(土)4:00PM 尼崎アルカイックホール

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 僕はかつては《蝶々夫人》が苦手で、第二幕の蝶々さんの愚かな思いこみにはイライラしたものです。
 しかし、2003年のジュゼッペ・タッデイ05年の堺シティーオペラ、などの素晴らしい舞台を見て、だんだんこのオペラに同情できるようになりました。
 そして、METライブビューイングのパトリシア・ラセットにズブズブに泣かされてから、ますますこのオペラが好きになってしまいました。

 今日は藤原歌劇団の《カルメル会修道女の対話》に行くのが正しいのでしょうが、僕は1990年の名古屋二期会公演(指揮:外山雄三 演出:栗山昌良)を見て、あまりの素晴らしさと、あまりの怖ろしさに震え上がったものですから、尼崎の《蝶々夫人》を選んでしまいました。

   ニュー・オペラシアター神戸 《蝶々夫人》
    2010年2月6日(土)4:00PM
      尼崎アルカイックホール

      指揮:牧村邦彦
      演出:直井研二

      蝶々夫人:浅井順子
      ピンカートン:松岡重親
      シャープレス:松澤政也
      スズキ:西川地恵
      ゴロー:晴 雅彦
 
 僕が一番興味があったのが直井研二さんの演出。
 ジャポネスクな正統的な舞台ですが、細かいところに気配りが届いた、素晴らしい演出かと思いました。
 しばらく直井さんを追いかけてみましょうか。

 蝶々さんの浅井順子さんは、第一幕では少し歳かと思いましたが、第二幕以降は文句なし。
 日本にはたくさん立派な蝶々さんを歌える歌手がいるのですね。

 スズキの西川さんは、使用人としての立場をわきまえた役作りとしては納得できるものでした。
 僕としてはMETライブビューイングのマリア・ジフチャックのように、長く苦楽を共にした同志としての役作りもあると思いますけれどね。

 僕は『ある晴れた日に』は蝶々さんがスズキに向かって歌う歌だと思っていて、正面を向いてリサイタルのように歌うのは違和感があります。
 今回はスズキの肩に手をかけながらの歌い出しで、「これだよ、これ!」と嬉しく思いました (^_^) 。

 ピンカートンの松岡さんは、聴かせるところは聴かせてくれました。
 シャープレスの松澤さんは素晴らしい声量でしたが、ちょっと若いか?
 まあ、若くて偉い人は、現実にいますからね。

 ゴローの晴雅彦さんは世界最高のゴローでしょう。
 歌唱も役作りもこの上なく素晴らしい。
 
 そしてプッチーニの音楽が美しすぎるものですから、今日も泣けました。
 今日の2階は空席がありましたが、こんなに泣けるようになっては、お客さんが多い《蝶々夫人》観劇は考えものですね (^_^; 。

 その後、この《蝶々夫人》は佐川吉男音楽賞(本賞)を受賞したそうです。
 佐川吉男音楽賞の選考対象は、前年4月1日から翌年3月31日の間に行われた公演のうち、中小オペラ団体が主催する公演で、特に優れた成果をあげたもの、だそうです。
 
 
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