上岡敏之 ヴッパータール交響楽団 2010年10月9日(土)5:00PM 兵庫県立芸術文化センター |
上岡敏之さんは、2009年1月26日の読売日本交響楽団演奏会を聴いて(というか見て)、指揮棒だけでオーケストラを振り回すその技量に感心し、『指揮棒の魔術師』かと思っております。 今回は手兵のヴッパータール交響楽団を率いての来日公演。 ヴッパータールといえば、ハンス・クナッパーツブッシュとギュンター・ヴァントが生まれた街でしょうか。 10月7日(木)の名古屋公演はメインが『英雄』だったので、本日のワーグナープログラムを選びました。 10月3日(日)の《イリアス》に続き、今週2回目の兵庫県立芸術文化センターです。 ![]() 2010年10月9日(土)5:00PM 兵庫県立芸術文化センター = オール・ワーグナー・プログラム = 序曲《ファウスト》 ジークフリート牧歌 楽劇《ニーベルングの指環》ハイライト 《ラインの黄金》より「ワルハラ城への神々の入場」 《ワルキューレ》より「ワルキューレの騎行」 「ヴォータンの別れと魔の炎の音楽」 《ジークフリート》より「森のささやき」 《神々の黄昏》より「ジークフリートのラインへの旅」 「ジークフリートの死と葬送行進曲」 1839年(26歳)、パリにおいてベルリオーズの『劇的交響曲《ロミオとジュリエット》』初演に感銘を受けたワーグナーは、序曲 《ファウスト》を作曲しました。 1840年1月に完成。 1844年7月22日、ドレスデンにおいて作曲者自身の指揮により初演されたました。 1852年9月に改訂を行い、1855年に出版されました。 序曲《ファウスト》は正直に言って、僕にはよく分からない曲でした。 《ジークフリート牧歌》は1870年12月25日、ワグナー(57才)の妻コジマ33才の誕生日のために作曲されました。 演奏はトリープシェンのワーグナー家の階段で行われ、ワーグナーの娘たちはこの曲を「階段の音楽」と呼んだそうです。 僕は1996年8月16日にトリープシェンの家を訪れ、階段の狭さに驚いたものです。 初演のメンバーは弦楽器5人、管楽器8人の13人で行われたらしいんですが、この日の演奏は、管楽器は楽譜どおりの8人で演奏し、弦楽器はフルメンバー。 つまり、8+7+6+5+4プルットで、60人。 第一バイオリンは9プルットだったかもしれません(演奏中に数えるのが難しい)。 これはいかにもアンバランスでした。 上岡さんはゆっくりのテンポで細かい表情の変化を付けた彫りの深い音楽を作り出していましたが、この曲に必要な爽やかな流れが失われていると感じました。 待望の《ニーベルンクの指環》ハイライトは、編成を縮小した慣用譜(50年くらい前まで使われていたとか)で行われ、時々聞き慣れない音が聞こえてきました。 上岡さんは抜群のバトンテクニックでオーケストラをドライブしていくのですが、「ヴォータンの別れ」や「ジークフリートの葬送行進曲」 のクライマックスが持続せず、するすると逃げてしまうような印象を持ちました。 音は大きいんですけれどもね。 不自由そうに見える指揮ぶりの飯守泰次郎さんの時に受ける圧倒的な感動、痺れるような法悦感に乏しい。 期待が大きかっただけに残念でした。 そうそう、会場で飯守さんのお姿を拝見しました。 アンコールは『英雄』第2楽章で、凄いスタミナです (@o@)。 こちらも早めのテンポ設定でした。 |