《イリアス~怒りと戦争と運命についての叙事詩》
2010年10月3日(日)5:00PM 兵庫県文化芸術センター中ホール

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 ギリシャ悲劇ということでは、1999年に名古屋のメンバーで上演されたアンチゴネー》、2000年に朝から晩まで8時間かけて見た J・バートン編 《グリークス》 などの重厚な舞台が記憶に残っています。

 ホメロスという人名や、《イリアス》《オデッセイ》という作品名は、中学校から知っているし、試験の答えにも書いたと思うのですが、その「イリアス」がどういう意味なのかさえ、今まで知りませんでした (^_^; 。
 
  《イリアス~怒りと戦争と運命についての叙事詩》
     2010年10月3日(日)5:00PM
    兵庫県文化芸術センター中ホール

   演出:栗山民也  脚本:木内宏昌

   アキレウス:内野聖陽
   ヘクトル:池内博之
   オデュッセウス:高橋和也
   アンドロマケ:馬渕英俚可
   カサンドラ:新妻聖子
   パトロクロス:チョウソンハ
   アガメムノン:木場勝己
   プリアモス王:平幹二朗

 プログラムの最初に「『イリアス』とは『トロイア(イリオス)の詩』を意味する」と書かれておりまして、長年の疑問が解決いたしました。
 でも、なぜトロイアがイリオスなのでしょうか?

 『イリアス』は吟遊詩人ホメロスによって歌われたと伝えられている長編叙事詩を後の人が文字に書き残したもの。

 トロイア戦争十年目のある日、勇者アキレウスは側女ブリセイスをアガメムノンに奪われたことに怒り戦線を離脱する。
 アキレウスを欠くギリシャ軍はトロイア軍によって壊滅寸前に追い込まれる。
 アキレウスの親友パトロクロスはアキレウスの鎧を身につけて抗戦するが、トロイア王子ヘクトルに殺されてしまう。
 後悔の念と、大いなる怒りに駆られるアキレウス。
 アガメムノンは謝罪し、ブリセイスをアキレウスの元に返し、アキレウスは戦えば自分も死ぬという予言を知りながらも、戦線復帰してヘクトールを討つ。
 アキレウスはヘクトールの遺体を辱めるが、プリアモス王が息子ヘクトルの遺体を返してもらいにアキレウスを訪れ、ヘクトールの遺体は返され葬儀が行われる。

 演出の栗山民也さんと脚本の木内宏昌さんは、この『イリアス』を舞台作品とすることに挑戦しました。
 木内さんはプログラムに、「(この物語を)13人の声と音楽で、3時間弱の演劇に構成することは容易くなかった」と書かれていますが、「失敗している」というのが僕の印象です。

 舞台にあるのは階段だけで、言葉だけでトロイ戦争が進みますが、まったく現実感がありません。
 映画『トロイ』(これも失敗作だと思っていますが)の大群衆や大船団を脳内でイメージ補完しても、薄っぺらな印象を逃れることは出来ません。

 新妻さんのカッサンドラが歌い出すに及んでは、ギリシャ悲劇がミュージカルになってしまいます。
 栗山さんの作品は《マリー・アントワネット》《蝶々夫人》と見ていますが、いずれも感心しませんでした。

 キャストでは《グリークス》にも出演した平幹二朗さんが圧倒的に素晴らしかった。
 最後のプリアモス王がヘクトルの遺体を返してもらいにアキレウスを訪れる場面はぜひ見たかったのですが、それまでの1時間を耐えることが出来そうもないので、前半だけで帰りました。
 
 
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