新国立劇場 《蝶々夫人》 2007年3月25日(日)2:00PM |
朝から雨だったので東京観光を諦め、テレビで能登半島地震の速報を見ながら、観劇に備えました。 東京の桜はまだ咲き始めでした。 残念! 少し早く着いた劇場には、「開演直前に若干枚チケットをご用意できる可能性がございます」と書かれた立て札があり、10名くらいの人々が並んでいました。
![]() 2007年3月25日(日)2:00PM 指揮:若杉 弘 演出:栗山 民也 蝶々夫人:岡崎 他加子 ピンカートン:ジュゼッペ・ジャコミーニ シャープレス:クリストファー・ロバートソン スズキ:大林 智子 ゴロー:内山 信吾 ボンゾ:島村 武男 神官:龍 進一郎 ヤマドリ:小林 由樹 ケート:山下 牧子 書記:宮本 俊一 合 唱:新国立劇場合唱団 管弦楽:東京交響楽団 この《蝶々夫人》 の舞台装置は、チラシに見るように床と柱だけの家と大きな階段があるだけ。 この舞台装置は3幕を通して変わりません。 これでは昨日見た、新日フィルの上演2回限りの 《ローエングリン》 と同じです。 オーケストラが舞台上にいれば「コンサート・オペラ形式」で、オケがピットに入れば本格的なオペラ公演と呼ばれるのでしょうか? 僕が一番大好きな演出は05年9月4日(日)に堺シティオペラで見た栗山昌良さんの舞台。 桜が散る春の宵の何と美しかったことか。 日本を代表するオペラハウスである新国立劇場の《蝶々夫人》が、これほどの手抜き舞台とは情けない限りです。 次回上演の折には、新プロダクションでお願いしたい。 ![]() この日会場に来た多くのオペラファンの目的は、ジュゼッペ・ジャコミーニのピンカートンでしょう。 1940年生まれというジャコミーニは、とてもその年とは思えぬ若々しい容姿。 メークの力とは凄いものです (@o@)。 声は、この程度のピンカートンは聴いたことがあるような気もしましたが、いつの日か孫に「おじいちゃんは本物のジャコミーニを聴いたことがあるんだよ」と自慢できる日が来るでしょうか (^_^ゞ? 蝶々さんの岡崎他加子さんは良かった。 武蔵野音大出身でイタリア・ドイツで活動しているようですが、最後までドラマティックな歌声で蝶々さんを歌いきりました。 僕にとって理想の蝶々さんは、2006年7月17日に兵庫県立芸術文化センターで見た浜田理恵さんなんですが、いかにも日本人女性らしい舞台姿、ちょっとした所作が素晴らしかった。 岡崎さんは、もう少しかな。 でも、良かったですよ。 シャープレスのクリストファー・ロバートソンは、兵庫で見たデヴィッド・オーカーランドに似た、大柄なシャープレス。 僕の理想のシャープレスは2003年3月30日に名古屋の演奏会形式(第二幕)で見たタッデイで、蝶々さんを思いやり慈しむその演技には泣かされました。 僕の理想のスズキは堺シティオペラの田中友輝子さんであり、テレビで見た永井和子さんです。 田中さんの舞台を見て、スズキの演技で、蝶々さんの悲劇がますます深まることを知りました。 僕はスズキに対する思い入れが深いので、今回の大林智子さんには満足できませんでした。 蝶々さんに「お前も一緒に遊びにお行き」と言われたスズキは蝶々さんの自害を察知し、「私はおそばにいます」と答えます。 しかし、「行きなさい!これは命令です」と言われると、あっさりと去っていきます。 蝶々さんの自害を察知したなら、どうしてすがりついてでも止めないのか? 突き飛ばされ蹴飛ばされ、その上で自殺を止めるために子供を連れに走らなくては。 最後の場面も子供を連れて、振り返ることもなく舞台奥へ去っていきます。 蝶々さんは自害するんです。 それを知りながら、どうして最後の挨拶をしないのか? 子供に、母親の最後の姿をもう一度見せないのか? 僕には理解できません。 そうそう、子供は黒い髪の日本人でしたが、歌詞通り、金髪青い目の子供を出せばいいのに、とはいつも思います。 最後に蝶々さんが懐剣を首に当てると舞台奥が開いて子供が出てきます。 音楽は続くんですが、舞台は止まります。 僕は「蝶々さんが自殺をやめて子供を抱きしめ、ハッピーエンドになるのかな?」と見ていたんですが、最後の和音で蝶々さんは首を切り倒れました。 困った演出家には、本当に困ったものです (^_^; 。
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