映画 『津軽百年食堂』
2011年4月3日(日)名演小劇場

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 映画 『津軽百年食堂』
 2011年4月3日(日)名演小劇場

 監督:大森一樹  原作:森沢明夫

 明治42年、日露戦争後の弘前。
 足が悪いために徴兵を逃れた大森賢治(中田敦彦)は、津軽蕎麦の屋台を営んでいた。

 彼の店の人気の汁は、戦争で夫を失ったトヨ(早織)がその幼い娘フキと共に青森から運んで来る鰯の焼き干しが材料だった。
 賢治とトヨは互いに淡い想いを抱いていた。
 そして賢治は自分の店「大森食堂」を持って‥‥

 現代の東京。
 弘前に百年(?)続く「大森食堂」4代目の陽一(藤森慎吾)は父親(伊武雅刀)との諍いもあり、東京でバルーンアートのバイト生活を送っていた。

 彼は結婚式場で写真を撮っているカメラマン(弘前出身)、筒井七海(福田沙紀)の照明器具を壊してしまい、互いに金のない二人はルームシェアをすることになる。

 そんなとき、陽一の父は出前中に事故に遭い、食堂を休むことになった。
 そして「お客さんを待ってる店が可哀想で‥」という祖母フキ(秋本博子)の切実な電話の声を聞いて、陽一は弘前に帰り‥‥

 明治時代の描写が実によい。
 賢治とトヨは互いに好意を持ちながらも遠慮があり、一度は離れてしまう。
 互いに愛の言葉を交わすこともない、そのような慎ましい恋を演じる二人が好ましい。

 娘フキの言葉に励まされて弘前に向かうトヨ、彼女たちを迎えに駅に走る賢治。
 桜の弘前駅での再会には泣けました。

 一方、現代のお話は、都会の生活に挫折した津軽の男女が故郷に帰るという紋切り型のストーリー。
 どうして津軽の人は負け犬にされてしまうのだろう?
 エリートサラリーマンが祖母の頼みを聞いて、弘前の食堂を継ぐ決意をする、という発想は無いのだろうか?

 バイト生活をして蕎麦の修行もしていない陽一が急に立派な蕎麦を打てるなど、ご都合主義の部分がある。
 たとえ百年続いても、4代目の蕎麦は質が落ちる感じ。

 でも、次々と出てくる脇役はパワフルで魅力的。
 そして彼らは力を合わせ、弘前城の桜祭りに「大森食堂」を出すことになる。

 桜満開の弘前城と岩木山は限りなく美しい。

 そして、初代夫婦を結びつけた幼い娘トヨと、4代目を津軽に呼び戻した祖母トヨが同じ人物であることに思いを致し、「津軽百年食堂」を守った主人公はトヨだったのだなと思うと、また泣けますね。

 プログラムには弘前のロケ地マップが載っています。
 以下は私的ロケ地案内です。
 東日本大震災で不通となっていた東北新幹線も4月中には再開するようですし、この映画が気に入った方は、GWの弘前城桜祭りに行かれることをお薦めしたいですね。

 1)弘前公園(さくらまつり)
 2)旧弘前偕行社(明治時代の弘前駅)
 3)黒石こみせ通り(明治時代の厩の軒先)


 映画館に置かれていたチラシを見ていたら、これから音楽家の映画が次々上映されるようです。

 1)ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路  4月23日(土)~ 名演小劇場
 2)ショパン 愛と哀しみの旋律  4月30日~ ミリオン座 
 3)マーラー 君に捧げるアダージョ  GW公開 名古屋シネマテーク
 4)プッチーニの愛人  6月下旬 ミリオン座
  

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