堺シティオペラ 《妖精ヴィッリ》《ジャンニ・スキッキ》
2011年9月10日(土)5:00PM 堺市民会館大ホール
~~二階席からピットが見えない~~

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 プッチーニの処女作《妖精ヴィッリ》(1884年)が上演される機会はほとんど無いでしょう。
 それだけに、この堺シティオペラを見逃すことは出来ませんでした。
 プッチーニの最初のオペラと最後のオペラという、洒落た組み合わせです。

 会場の堺市民会館は南海電鉄高野線「堺東駅」から近く、運転手さんに怒られそうで、とてもタクシーには乗れません。
 この辺りの人の言葉つきが怖い (^_^ゞ。
 そこで歩いたのですが、今日の堺は凄まじい蒸し暑さでした。

 何とか会場に辿り着いた僕がまずしたことは、プログラムを買って団扇代わりに扇ぐこと。
 橋下知事は「節電はしない」と言っていたはずなのに、ロビーもホールも冷房が足りず、噴き出す汗が止まりません。
 非情にもベルが鳴って公演が始まったのですが、これほどの悪条件でオペラを見ることは記憶にありません。

 そして、もう一つ。
 僕は指揮者、オーケストラを見ながら観劇したいのに、このホールは2階席からオケピットが見えないんです。
 休憩時間に1列目から最後列までチェックしてみましたが、2階席からピットを見ることが出来ませんでした。
 1階席では当然オケピットの中を見ることは出来ないわけで、これでは元アマオケ奏者だった僕にとって、オペラを見る楽しみが半減ですね。

   堺シティオペラ 《妖精ヴィッリ》《ジャンニ・スキッキ》
  2011年9月10日(土)5:00PM 堺市民会館大ホール

   指揮:ギオルギ・バブアゼ
   演出:粟国 淳

   《妖精ヴィッリ》
   アンナ:渡邉 美智子
   ロベルト:安川 忠之
   グリエルモ:Nikoloz Lagvilava

   《ジャンニ・スキッキ》
   ジャンニ・スキッキ:松澤 政也
   ラウレッタ:小山 敦子
   リヌッチョ:秋本 靖仁
   ツィータ:井上 美和
   ゲラルド:蜂須賀 一晃
   ゲラディーノ:伊藤 千津
   ネッラ:繁田 千都子
   ベット:中野 嘉章
   シモーネ:吉田 健悟
   マルコ:木村 孝夫
   チェスカ:水野 智絵
   医者:楠木 稔
   公証人:楠木 稔
   職人たち:浦部 雄蔵・冨田 敦史・井元 孝弥

  オーケストラ:ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団
  合 唱:堺シティオペラ記念合唱団

 お目当ての《妖精ヴィッリ》は二幕構成のオペラですが、休憩なしで演じられました。

・第一幕
 ドイツ・シュヴァルツヴァルト(黒い森)地方。
 最初はアンナと恋人のロベルトの婚約を祝って、村人たちが踊る場面。
 アンナとロベルトの二重唱あり。
 ロベルトは、叔母の莫大な遺産を貰い受けるために、マインツに旅立つ。
 アンナは有名なアリア 「もしも私がおまえたちのように小さな花だったら」を歌う。
 別れを悲しむアンナ。

・間奏曲
 語り手がその後の経過を語る。
 マインツに行ったロベルトは妖婦に惑わされ、アンナを忘れてしまった。
 アンナは哀しみの中で死んでしまう。
 復讐を誓うアンナの父グリエルモ。

・第二幕
 マインツの妖婦に捨てられたロベルトは村に帰ってくるが、妖精たちの踊りの中で息絶える。
 シュヴァルツヴァルトでは、恋人に裏切られて死んだ娘は妖精(ヴィッリ)となって、裏切った若者が帰ってくると踊り死にさせてしまうという伝説がある。

 何だかまとまりがない印象でしたが、プッチーニの若書きのためなのか、上演スタッフのためなのか、良く分かりませんでした。
 キャストではアンナとグリエルモが良かったですね。
 粟国 淳さんの演出は人が動かない、力不足の舞台かと思いました。

 でも、おかげさまで、プッチーニの未見のオペラは《エドガー》が残るだけになりました。
 例年のように「ひかり写真室」による舞台写真が展示されていました。



 後半の《ジャンニ・スキッキ》は自由な動きの楽しい舞台になりました。
 
 今まで僕が見たうちで、一番面白かった《ジャンニ・スキッキ》は2005年10月1日にのひろしまオペラルネッサンスの岩田達宗さんの演出
 そして理想のスキッキは、2001年10月28日に見たジュゼッペ・タッデイ
 でも、今回の舞台もなかなかの出来かと思いました。

 最初からベッドで死んでいたブォーゾ役の人(普通の服装はおかしいと思ったが)はお疲れ様と思って見ていたけれど、医者が来たときに洋服ダンスに隠されるが、タンスの戸が開いて出てきてしまう。
 で、ビックリしたみんなにタンスに押し戻されてしまうが、本当に頭をぶつけて、客席は大笑い。

 親戚たちの話し合いにリヌッチョとラウレッタが一喜一憂する場面では、交互にスポットライトが当たって、これは上手い処理かと思いました。

 この《ジャンニ・スキッキ》演出は面白かったけれど、まだまだ手を入れる余地はありそうです。
 この演出を一回限りのものとせず、これをベースとして粟国さんが《ジャンニ・スキッキ》の世界を究めていかれたらよいと思います。
 


 楽しい気持ちで外へ出ると、外はまだまだ凄まじい蒸し暑さ。
 ほうほうの体でホテルに逃げ込みました。
 明日はびわ湖ホールの《清教徒》です。
 

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