西本智実プロデュース公演 オペラ 《蝶々夫人》
2012年11月25日(日)3:00PM オリンパスホール八王子

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 イタリアに留学しておられた笛田博昭さんが帰国され、初めての舞台となる《蝶々夫人》に行ってきました。
 会場のオリンパスホール八王子は、JR八王子駅のそばにありました。
 オリンパスは会社が危なそうですが、ネーミングライツなのでホールは大丈夫だそうです。

 ロビーには八王子の名産が並び、いろいろ食べてしまいました。
 八王子芸者の皆さまの踊りもあり、彼女たちは舞台にも登場して(「オカーミ オカーミ」のところ)踊られました。

JR八王子駅 オリンパスホール八王子
八王子の名産 八王子芸者の皆さま


 西本智実プロデュース公演 オペラ《蝶々夫人》
 2012年11月25日(日)3:00PM
 オリンパスホール八王子

 指揮:西本智実  演出:粟國 淳
 蝶々夫人:小林厚子
 ピンカートン:笛田博昭
 シャープレス:須藤慎吾
 スズキ:永井和子
 ゴロー:中井亮一
 ボンゾー:党 主税
 神官:上本訓久
 ヤクシデ:石井敏郎
 ヤマドリ:村田孝高
 ケート:松岡万希
 管弦楽:イルミナート フィルハーモニー オーケストラ
 合唱:藤原歌劇団合唱部/八王子バタフライ合唱団

 お目当ての笛田さんは好調でした。
 しばらくは国内で活動されるそうで、差し当たり明日(11/26)は紀尾井ホールで大岩千穂さんとの《蝶々夫人》。
 来年2月11日(月・祝)には藤原歌劇団の《仮面舞踏会》に主演されます。

 しかしこのオペラの主人公は蝶々さんです。
 小林厚子さんを聴くのは初めてですが、素晴らしい蝶々さんでした。
 藤原歌劇団・菊池彦典指揮の《蝶々夫人》の蝶々さんに抜擢された方だそうです。
 アブラハム・リンカーン号の入港を見て、「みんなは私を馬鹿にしたけれど、ついに勝った!」と泣き崩れる場面など、西本さんの好サポートもあり、涙なしには見られません。

 西本智実さんの指揮はきびきびしたもので、特に蝶々さんがスズキに「お前も子供のところに行きなさい」と命じる場面のティンパニーの炸裂には衝撃を受けました。
 これでこそ蝶々さんの自殺の決意が余すところなく表現されるでしょう。

 自殺の決意を知ったスズキと蝶々さんの別れはいつも注目しています。
 お辞儀をして去って行くスズキもいますが、僕は蝶々さんに縋り付き、蹴られてもいいから自殺を止めてくれるスズキを見たいと思っています。

 永井和子さんはスズキの第一人者だと思いますが、この場面で蝶々さんの迫力にたじろぎながら、「そうだ!」と手を打って子供を呼びに行くんですね。
 これが子供が飛び出してくる巧い伏線になっているわけです。

 粟國 淳さんの演出は、いつものように納得できないところがありました。
 たとえば、ボンゾに怒鳴り込まれても突っ立ったまま(に見える)の蝶々さん、子供の出現に何のリアクションもしない(ように見える)シャープレス。

 舞台装置は抽象的なもので、むしろ《トゥーランドット》にふさわしく見えました。
 舞台の両脇には障子があって、シルエットが映ります。
 この障子のために、蝶々さん登場の美しいソロも聞こえないし、ボンゾの怒り声も迫力なし。
 些末なアイディアにこだわらず、人間ドラマの本質に力を注いでいただきたいと思います。

 ゴローの中井亮一さんは御自身がプログラムに書かれているように、15年前に初のオペラ出演としてゴローを演じておられます。
 それは中井さんが大学2年生の時の名古屋芸術大学学生公演で、僕は「なんと演技が達者な学生なのだろう」と驚いたことがあります。
 おかしな眼鏡をかけた今日の舞台より、あの時のゴローの方が細やかな演技だったような記憶があります。

 神官の上本さんは11月9日の『オペラの魅力』で聴かせていただきました。
 ヤマドリの村田さんがプログラムに「日本人男性の最後の砦として蝶々さんに手を差し伸べたい」と書いておられるのは、目からウロコだったでしょうか。
 
 
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