速報 スター誕生! パトリツィア・コパチンスカヤ
2012年5月3日(木) 7:30PM ザルツブルク・モーツァルテウム

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 ゴールデンウィークは『チロル&ザルツブルク 落ち穂拾いの旅』として、トブラッハにあるマーラーの作曲小屋や「サウンド・オブ・ミュージック」の世界をマニアックに回ってきました。
 旅行記はゆっくり書くとして、パトリシア・コパチンスカヤ(Patricia Kopatchinskaya)という凄いヴァイオリニストに出会いましたので、緊急報告させていただきます。

  2012年5月3日(木) 7:30PM
 ザルツブルク・モーツアルテウム

 演奏 カメラータ・ザルツブルク
 指揮:ジェラー・コーステン
 ヴァイオリン:パトリツィア・コパチンスカヤ
 
 シェーン・ウッドボーン:祭典ファンファーレ(世界初演)
 ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
 フランツ・シューベルト:交響曲第三番

 帰国してインターネットを調べてみたら、すでに来日をしているようで (@o@)、どうしてこの人の名が知られていないのか僕には分かりません。
 「スター誕生!」というタイトルは、「僕にとって」という枕詞を付けた方が良いのでしょうか (^_^ゞ ?

 コパチンスカヤはモルドヴァ出身。
 父はツィンバロンの奏者、母はヴァイオリニスト。
 作曲とヴァイオリンをウィーンとベルンで学ぶ。

 2000年メキシコでのシェリング国際コンクールに優勝。
 ソリストとして、フィルハーモニア管弦楽団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団などと共演。
 来日したことがあるようで、NHK交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団などとも共演しているらしい。
 
 1834年製プレッセンダを使用している。
 神経科医の夫との間に娘がいるとのこと。

 このコンサートは特別のコンサートだったようで、最初に現代音楽が演奏されてから、3人の偉そうな紳士達による演説と表彰が長々とあり、それで30分かな。
 それからベートーヴェンの長大なヴァイオリン協奏曲を聴かされるのはたまらないなという感じ。

 もともと僕はこの曲が苦手で退屈してしまう(特に第2楽章)。
 今回の目的はモーツアルティウムに入って、長年の夢だった「《魔笛》の作曲小屋」を見ること。
 コンサートは、まあ何でも良かったわけなんです (^_^ゞ。
 「《魔笛》の作曲小屋」については、いつか旅行記で報告します。

 コパチンスカヤは写真ではとても綺麗な人ですが、赤いドレスで登場したは実物は少し太め。
 ティンパニーの刻みから長い序奏が始まりました。
 と、途中から彼女が曲に合わせて動き出したんですね。
 もちろん演奏したりはしないんですが、完全に曲に没入している感じ。

 さて、最初の上行音型はピアニシモで演奏されまして、脱力した音が嫌いな僕はがっかりしました。
 しかし、よくよく聴いていると、彼女の音は脱力していない。
 ソプラノ歌手が細心の注意を払って歌うピアニッシモなんですね。

 演奏中に彼女は、時々オーケストラの方を向いて演奏します。
 まるで彼女が指揮者のようにジェスチャーを出していくんですね。
 楽譜にもコロラトゥーラのようなヴァリエーションを自由に付けていたと思います。
 彼女の持つ莫大な音楽的なパワーは、単なるヴァイオリニストに留まらないものと思われました。

 その証拠に、カデンツァはすべて彼女が作曲したものでした。
 中でも驚いたのが第一楽章のカデンツァで、これはソリストとコンサートマスターとティンパニー奏者による三重奏で、どのパートにも高いテクネックが求められるものでした。
 彼女の持つ音楽的パワーに圧倒され、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲をこれほど面白く聴いたことはありません。
 
 最後のソロの上行音型をピアニシモで演奏し、フォルティッシモのトゥッティで演奏を終わると、客席からは「ブラヴォー!」の嵐で、全員がスタンディングオベージョン。
 オーケストラは床を踏みならすし‥‥僕は今までの人生で何百回もコンサートに行っていると思うけれど、こんなシーンを見るのは初めてです。

 最近聴いた若いヴァイオリニストで超一流だと思ったのはラチャ・アヴァネシヤンレイ・チェンと、そしてこのパトリシア・コパチンスカヤ。
 いつまでも聴き続けていきたいヴァイオリニストたちです。

 コパチンスカヤは今年(2012年)の秋に来日するようです。