アンドレイ・バラーノフ ヴァイオリンコンサート
2012年7月6日(金)6:45PM 宗次ホール

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  「アンドレイ・バラーノフ ヴァイオリンリサイタル」のチラシを最初に見たときは、名も知らない若手だし、自由席だし、あまり興味を感じませんでした。
 ところが、5月に開催された「エリザベート王妃国際コンクール」で、5月26日(土)にバラーノフさんの優勝が発表されまして(2位は成田達輝さん)、ニュースを聞いたその日にあわててチケットを確保しました (^_^) 。

 バラーノフさんと宗次ホールには、夢物語のようなエピソードがあります。
 バラーノフさんは2010年の仙台国際音楽コンクールに第2位を受賞しました。
 2011年には仙台で記念コンサートが予定されていましたが、東日本大震災のためにコンサートは中止になってしまいました。
 とにかく日本に行って演奏したいというバラーノフさんの強い意向に、手を差し伸べたのが宗次ホールでした。
 昨年7月21日に行われたコンサートを聴いた宗次ホール代表の宗次徳二氏はバラーノフさんの卓越した演奏に驚き、そして彼の楽器が虫食いの穴だらけだったことにも驚きまして、手元にあった巨匠ナタン・ミルシティン使用のアンソルド・ポジー(1947年)を貸与したのだそうです。
 この楽器を演奏して、バラーノフさんは見事に「エリザベート王妃国際コンクール」の栄冠を手にしたのですね。

 今年の「エリザベート王妃国際コンクール」には、昨年3月の宗次エンジェル・ヴァイオリンコンクールで第1位となり、宗次德二氏が理事長を務めるNPO法人イエローエンジェルよりストラディヴァリウス「レインヴィル」(1697年)を貸与されているキム・ダミさん(韓国)もファイナリストに残りました。
 新たな「宗次伝説」でしょうか。

 アンドレイ・バラーノフ ヴァイオリンコンサート
 2012年7月6日(金)6:45PM 宗次ホール

 ヴァイオリン:アンドレイ・バラーノフ
 ピアノ:青木美樹

 タルティーニ :ヴァイオリンソナタ ト短調 “悪魔のトリル”
 チャイコフスキー:憂鬱なセレナーデ
 グリーグ:ヴァイオリンソナタ 第3番 ハ短調
 プロコフィエフ:ヴァイオリンソナタ 第2番 ニ長調
 リムスキーコルサコフ:小さな歌 “ペゼンカ” (ピアノソロ)
 ブルーメンフェルト:エチュード “海” (ピアノソロ)
 グラズノフ:グランド・アダージョ
 リムスキーコルサコフ(ハイフェッツ編):熊蜂の飛行
 ヴィエニャフスキ:華麗なるポロネーズ 第1番 ニ長調

 アンドレイ・バラーノフは1986年、サンクトペテルブルク生まれ。
 5歳からヴァイオリンを学び、サンクトペテルブルク音楽院、ローザンヌ音楽院にて研鑽を積む。
 現在、ローザンヌ音楽院にてピエール・アモイアルのアシスタントを務めている。

 ピアノの青木美樹さんは東京生まれで9歳で渡英。
 アメリカ、ドイツなどで学び、現在はローザンヌ音楽院にてピエール・アモイアル・クラスの伴奏ピアニストを務めている。

 期待していたバラーノフですが、2009年優勝者のレイ・チェンや、ラチャ・アヴァネシヤンパトリツィア・コパチンスカヤを聴いたときのような興奮を覚えることはありませんでした。

 音に芯がない感じでしょうか。
 チラシには「ハイフェッツを思い出させる」と書かれていましたが、ハイフェッツの域に達するにはまだまだ修行が必要かと思いました。
 というか、いくら修行してもハイフェッツになるのは(どのヴァイオリニストにとっても)難しいでしょうね。

 アンコール前にバラーノフさんからスピーチがあり、アンコールの曲は優勝の副賞として与えられたストラディヴァリウスで演奏するとのこと。
 そうしたらビックリ。
 音が全く違って、芯のある僕好みの音になりました。
 ということで、アンコールの『タイスの瞑想曲』と『ワルツ・スケルツオ』はとても良かった。
 最初からストラディヴァリウスで演奏されれば、リサイタルの印象も変わったものになったでしょう。

 その後の情報で、このストラディヴァリウスは日本音楽財団から貸与された「ハギンス」(1708年製)だそうです。

 終演後にロビーで受賞記念パーティがありまして、参加して参りました。