ピエタリ・インキネン&日本フィルハーモニー 《ワルキューレ第1幕》
2013年9月7日(土)4:00PM サントリーホール

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 9月6日(金)、7日(土)の東京では、ピエタリ・インキネン指揮する日本フィルハーモニーと、インゴ・メッツマッハー指揮する新日本フィルハーモニーという二つのオーケストラが、《ワルキューレ第一幕》を平行して演奏するという凄いことになっています。
 午前中は仕事のため、2時開演のメッツマッハーには間に合いませんので、4時開演の日本フィルハーモニーを目指します。

 日本フィルハーモニー 《ワルキューレ第1幕》
 2013年9月7日(土)4:00PM
 サントリーホール

 指 揮:ピエタリ・インキネン
 ジークリンデ:エディス・ハーラー
 ジークムント:サイモン・オニール
 フンディング:マーティン・スネル

 <ワーグナー・プログラム>
 ジークフリート牧歌
 楽劇《トリスタンとイゾルデ》より前奏曲と愛の死
 楽劇《ワルキューレ》より第1幕

 ピエタリ・インキネンは1980年(33歳?)フィンランド出身の指揮者、ヴァイオリニスト。
 ヴァイオリンをザハール・ブロンらに学び、指揮をレイフ・セーゲルスタム、ネーメ・ヤルヴィらに学んだ。
 
 2008年からニュージーランド交響楽団音楽監督に就任。
 2009年9月から日本フィルハーモニー交響楽団首席客演指揮者に就任した。

 前半の『ジークフリート牧歌』は第一ヴァイオリンが8プルットという大きな編成で演奏されました。
 静かなスッキリとした演奏でした。
 
 僕は『ジークフリート牧歌』が大好きで、1996年8月にトリープシェン(ルツェルン)にあるワーグナー博物館を訪れたのでした。
 初演時のオケのメンバーが並んだ階段は、譜面台を置くスペースもないような普通の階段で、思わず「これがあの有名な階段ですか?」と係のお姉さんに聞いてしまいました。

 《トリスタンとイゾルデ》前奏曲と愛の死はソプラノのエディス・ハーラーが豊かな声で素晴らしかった。
 エディス・ハーラーはイタリア・メラーノの生まれ。
 2010年にはティーレマン指揮するバイロイト音楽祭《ワルキューレ》でジークリンデを歌っているそうです(映像化されている)。
 
 インキネン指揮するオーケストラは盛り上がるところは盛り上がった、きちっと纏まったアンサンブルで、ブラビンズ指揮する名フィルを思い出しました。
 僕自身はもっとどろどろとした揺れ動く演奏が好きで、2006年1月の「名古屋二期会 ニューイヤーオペラコンサート」で体験した飯守泰次郎&基村昌代コンビの名演奏が忘れられません。

 後半の《ワルキューレ第一幕》は素晴らしい演奏となりました。
 3人の歌手はバイロイト音楽祭の常連だそうです。

 インキネンのきびきびとした指揮の下、ジークムント逃走の場面が演奏され、ペットボトルを持ったオニールが下手から現れました。
 彼の声はちょっと癖がありますが、硬質なワーグナーにふさわしいテノールでしょう。
 「ヴェルゼ!、ヴェルゼ!」の部分を目一杯伸ばしてくれて、生のオペラを聴く喜びが極まった感じでしたね。
 
 エディス・ハーラーは相変わらずの素晴らしさだし、マーティン・スネルの凄みのある深い声もフンディングにふさわしいものでした。

 歌手達は譜面を持たず、特に大きい演技が付けられているわけでは無いようですが、微妙な視線の動きなどでノートゥンクが何処にあるか分かるんです。
 演奏会形式というよりはコンサートオペラという感じでしょうか。
 おかしな舞台演出付きの公演で無くて本当に良かったです。
 びわ湖ホールの《ワルキューレ》が心配です (^_^ゞ。

 オーケストラも大活躍で、最初から最後まで弛緩するところがありません。
 舞台下手に4台並べられたハープが掻き鳴らされる「冬の嵐も去り」の二重唱に移行する部分は夢のように美しかった。
 
 フィナーレは兄と妹による二重唱が終わり、オーケストラによる最後のクライマックスが演奏される中で、ジークリンデとジークムントはゆっくりと歩み寄り、舞台中央で抱き合い、熱烈な長いキスを交わし (@o@)、手に手を取って舞台上手に走り去ったのでした。