名古屋二期会 ニューイヤーオペラコンサート
   2006年1月22日(日) 愛知芸術劇場コンサートホール

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 飯守泰次郎先生の指揮を楽しみにして、「名古屋二期会ニューイヤーコンサート」に行ってきました。

 このコンサートは出演者が23人という大人数で、ワーグナーからイタリア、フランスオペラの珍しい演目まで、飯守ワールドを堪能することができました。

 関係者に聞いたところでは、出演者は希望者からオーディションで選ばれるそうで、曲目は原則として本人の希望だそうです。

 名古屋二期会オペラ管弦楽団は第一バイオリン5プルットという小編成。
 セントラル愛知交響楽団のメンバーが多く見られました。

 ロビーに常連メンバーの姿が見えなかったのですが、マリンスキーの《指環》に行かれた方も多かったようです。


      名古屋二期会 ニューイヤーコンサート
     2006年1月22日(日) 5:00PM
       愛知芸術劇場コンサートホール

          指揮:飯守泰次郎
     管弦楽:名古屋二期会オペラ管弦楽団

 1.オープニング:J・シュトラウス「こうもり」序曲
 2.東山紀美子:ドニゼッティ「シャモニーのリンダ」より この心の光
 3.山口満希子:トマ「ミニョン」より 私はティターニア
 4.渡部千枝/笠井幹夫:ビゼー「カルメン」より 母の便りをきかせてよ
 5.安藤岐恵:プッチーニ 「ジャンニ・スキッキ」より いとしいお父様
 6.荒川美穂:プッチーニ「マノン・レスコー」より ひとり寂しく
 7.山口ユミ:プッチーニ「蝶々夫人」より ある晴れた日に
 8.森本ふみ子:ヴェルディ「エルナーニ」より エルナーニよ、一緒に逃げて
 9.水谷映美:ヴェルディトロヴァトーレ」より 恋はバラ色の翼に乗って
10.長屋弘子:ヴェルディ「椿姫」より そは彼の人か〜花から花へ
          == 休 憩 ==
11.井上めぐみ:グノー「ロメオとジュリエット」より 私は夢に生きたい
12.石川能理子/奥野靖子:オッフェンバック「ホフマン物語」より 舟歌
13.山口光子/伊藤美知子:ベッリーニ「カプレーティ家とモンテッキ家」 フィナーレ
14.津田文子:プッチーニ「トゥーランドット」より 氷のような姫君の心も
15.水谷由美:プッチーニ「トゥーランドット」より この御殿の中で
16.加藤 智:ヴェルディ「ルイザ・ミラー」より ああ、私の目が〜穏やかな夜には
17.若狭真美:ヴェルディ「オテロ」より 泣きぬれて野の果てに一人(柳の歌)
18.池田久美子:ヴェルディ歌劇「運命の力」より 神よ、平安を与えたまえ
19.谷上節子:ワーグナー「ローエングリン」より エルザの夢
20.基村昌代:ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」より 愛の死
21.水谷和樹: ワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」 フィナーレ

 自分なりのベストスリーを挙げれば、演奏順に13.17.20.でしょうか。

 13.「カプレーティ家とモンテッキ家」のフィナーレは、ロミオとジュリエッタが舞台衣装を着ての登場。
 仮死状態のジュリエッタはパイプ椅子に倒れかかっています。
 彼女が死んだものと思いこんだロミオは毒を飲む。
 目を覚ましたジュリエッタが立ち上がった椅子に今度はロミオが倒れ込んで、最後は胸を刺したジュリエッタがロミオに寄りかかっておしまい。
 これは結構ジーンと来ました。
 やはり、衣装と演技が付いていると、オペラ上演を見たような感動があります。

 17.「柳の歌」の若狭真美さんは声量もあり、胸にしみ入るような歌いぶり。
 僕は《オテロ》は苦手なんですが、昨年11月に見たソフィア歌劇場公演なども思い出し、つくづくデズデモーナに同情してしまいました。

 本日の白眉は、20.「トリスタンとイゾルデ・愛の死」でしょう。
 基村昌代(きむらまさよ)さんは、愛知県立芸術大学出身。
 びわ湖ホール専属歌手を経て、ドイツとイタリアに留学。

 登場の時につまずいて、客席はどよめき、本人も舞台上でケタケタ笑って、「お笑い系のイゾルデか?」と突っ込みも入れたのですが、始まった音楽はどうして大変なものでした。

 飯守先生の音楽はゆったりした彫りの深いもの。
 基村さんはその音楽を豊かな深みのある声で、余裕を持って歌いきりました。

 クライマックスにいたる長いクレッシェンドを仕切り直す部分で、僕は「これは大変なことになる」と予感しました。
 そして、到達したクライマックスは予感以上の昂揚で、クラクラして息が苦しくなるような、居ても立ってもいられない思いです。
 これほどの音楽体験はめったに出来るものではありません。

 基村さんの声は、同じ劇場の同じ席(3階最後列 (^_^ゞ )で聴いたバイロイト歌手藤村実穂子さんよりずっと僕の心に迫り、飯守先生の指揮はDVDで見るハンス・クナッパーツブッシュよりスケールが大きい。
 最高の「愛の死」に巡り会えて、本当に幸せでした (^_^) 。

 僕は今まで飯守先生のベストスリーを、名フィル《ワルキューレ》関西二期会《パルジファル》東京シティ《神々の黄昏》と言っていたのですが、今回のイゾルデを含めてベストフォーにしなくては。

 演奏後の拍手は基村さんが退場した後も続き、飯守先生も楽屋に向けて一生懸命拍手しておられたので、もう一度基村さんが出てくるのかな? と期待したんですが、現れたのは次の水谷和樹さん(名古屋二期会会長)。
 ここで拍手が一度途切れたのは可笑しかった (^_^;。

 飯守先生は《修道女アンジェリカ》で指揮者デビューされたそうで、プッチーニとも相性がいいようです。
 本日のプログラムでは、7.「ある晴れた日に」と 15.「この御殿の中で」。
 要するに飯守ワールドにたっぷりと浸ることができる、長い曲が良いわけです (^_^) 。
 《修道女アンジェリカ》が大好きな僕としては、ぜひ飯守先生の指揮での上演を望みたいですね。

 アンコールは全員揃って、《こうもり》のシャンパンの歌。
 飯守先生は指揮台の上で、楽しそうにはね回っておられました (^_^) 。

 終了時間は8時過ぎ。
 3時間以上に渡る長時間の舞台で、練習も大変だったであろうと、飯守先生とオーケストラに感謝いたします。


◇基村昌代(2003〜 )

 愛知県立芸術大学卒業、同大学院修了。ドイツ国立デトモルト音楽大学に留学。
 1997年日本コンクール入選、99年国際ワーグナー歌唱コンクール国内オーディション入選、2001年世界オペラ歌唱コンクール「新しい声2001」アジア大会優秀者、日本代表としてドイツ本選に出場し、蝶々夫人に最もふさわしい声を持ち将来性の非常に高い歌手として審査員全員一致で特別賞(YOKOSUKA賞)を受賞。
 びわ湖ホール専属歌手として5年間活動の後、イタリアにて2年間の研鑽を積む。
 現在、桜花学園大学講師、びわ湖ホールソロ登録要員、オペラアンサンブル歌暦会員、名古屋二期会会員。
 
 
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