ハイドンの主人が愛した珍楽器、その名はバリトン
2014年6月9日(月)1:30PM 宗次ホール

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 2008年8月15日にアイゼンシュタットのエステルハージー宮殿を訪れたときに、ハイドンが仕えたニコラウス候が使ったというバリトンが展示されていました。
 見るからに奇妙な形で、自分の人生でこの楽器を聴く機会があるとは思ってもいませんでした。
 平日の昼間なのに、ほぼ満席状態でした。

 幻のバリトン・トリオ
 ハイドンの主人が愛した珍楽器、その名はバリトン
 2014年6月9日(月)1:30PM 宗次ホール

 バリトン:ライナー・ツィパーリング
 ヴィオラ:若松夏美
 チェロ:鈴木秀美

 ハイドン:バリトン三重奏曲(全126曲)より
 101番、66番、109番、96番、97番

 チラシの解説によれば、
 バリトンはヴィオラ・ダ・ガンバの一種で、チェロと似た大きさ。
 6~7本のガット弦と、その下に9本~24本の共鳴弦が張られている。
 太ももで挟むように支え、チェロのように右手に持った弓でガット弦を弾き、左手の指で弦を押さえつつ親指でネックの裏に張られた共鳴弦をはじくことも出来る。
 演奏もさることながら、調律、楽器の製作も大変難しく、廃れてしまった。
 
 バリトンのツィパーリングは7歳からチェロを弾き始める。
 ヴィオラ・ダ・ガンバとチェロを、バロッ音楽の教育で世界的に名高いデン・ハーグ王立音楽院で学んだ。
 1980年に卒業した後は、18世紀オーケストラ、ラ・プティット・バンド、などに加わり、現在もその活動を続けている。
 教育者としても彼は高い評価を受けており、現在ケルンの音楽学校と、ベルギー、ルーヴェンのレメンス・インスティテュートで教鞭を執っている。

 バリトンは優しい、雅やかな音色の楽器でした。
 チェロより音は小さかったです。

 鈴木さんの解説によれば、ハイドンがニコラウス候のために作曲した三重奏曲は126曲が残されており、他に楽譜の残されていない曲が100曲以上あるそうです。

 3人の名手たちによる、いかにも午後の室内楽らしい演奏を楽しんできました。

 プログラムには「ハイドンの遺骸はアイゼンシュタットに葬られた」と書かれていましたが、これは間違い。
 1809年6月、ハイドンの遺体はウィーンのフントシュトルム墓地に葬られました。
 1820年に遺体をアイゼンシュタットにあるエステルハージー家ゆかりのベルク教会に移すことになり、棺を開くと遺体には頭部がありませんでした。
 エステルハージー家の元書記官が、埋葬の数日後に切断して盗み出していたのです。
 頭部はいろいろな人の手を渡り、1954年にやっと胴体と一緒になりました。