《ミス・サイゴン》 名古屋公演(Ⅰ)
2014年9月6日(土)5:00PM 愛知県芸術劇場大ホール

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 名フィル416回定期演奏会を前半で抜け出して、4階から長いエスカレーターで2階の大ホールに駆け下ります。
 入場したところでベルが鳴り、「しばらく会場には入れません」と言われました。
 5時ジャストで、時間厳守ですね。

 結局、5階後方の誰もいない席で見てきました。
 ここなら周りを気にせず、キムの悲劇に心ゆくまで泣けるというものです。

 ミュージカル《ミス・サイゴン》
 2014年9月6日(土)5:00PM
 愛知県芸術劇場大ホール

 エンジニア:筧 利夫
 キ ム:昆 夏美
 クリス:原田優一
 ジョン:上原理生
 エレン:木村花代
 トゥイ:神田恭兵
 ジ ジ:池谷祐子

 僕は新妻聖子さんが最高のキムだと思っていますが、今回の公演では降板してしまいました。
 彼女も35歳となって、さすがに17歳のキムは無理ということでしょうか。
 今回の名古屋公演では、新しいキムとなった昆 夏美さんの舞台を選んでみました。

 1992年4月のニコラス・ハイトナー演出による日本初演では、コンピュータで制御された複雑、巨大な装置のため、帝国劇場でしか上演することができませんでした。
 何回かの再演があって、それから20年経った2012年、地方公演も出来るようローレンス・コナーによって演出が変更がされ、名古屋で見ることが出来るようになったのでした。

 そして、今年(2014年)5月にロンドンで、ローレンス・コナーによる新演出の《ミス・サイゴン》が始まったそうです。
 地方公演のための演出が、本場ロンドンの演出となったわけでしょうか。

 さて、新しいキムの昆 夏美さんは、迫力のある歌声で、トゥイとの対決や「命をあげよう」などは盛り上がったのですが、ラブシーンなどではドスが効いている感じがしました。

 今回の演出で最も気に入った場面は「命をあげよう」。
 今までは、寝転んだタムに絵を書かせながらキムは観客に向かって歌ったのですが、今回はタムを抱きしめながら歌うように変更されました。
 持ち上げたりしてキム役の人は大変でしょうが、観客に訴えかける力が圧倒的に違います。

 逆に唖然とした場面は、キムに射殺されたトゥイに部下が駆け寄り、両手を組ませて、天を仰ぐポーズを決めるところ。
 このミュージカル最大の見所で、どこの誰か分からない人物にスポットライトを当ててどうするんですか?

 エンジニア役は市村正親さんが胃癌手術のため降板され、2004年にエンジニアを演じられた筧 利夫さんがピンチヒッター。
 筧さんは完全に役を掴んでおられるので、エンジニアとして違和感は無いのですが、歌唱は2004年の方が良かったと思いました。

 第2幕の最初は1978年9月のアトランタ。
 ベトナムに残された、アメリカ兵とベトナム人女性の混血児(ブイドイ)を救う運動の場面です。
 スクリーンには多くのブイドイが映され、ジョンは「彼らは我々の罪の証だ」と歌い上げます。

 オバマ大統領は日本の従軍慰安婦を非難する前に、この場面を見て、アメリカがベトナムで何をしたのかを反省したら良いでしょう。
 パク・クネ大統領も、この場面を見たら良いでしょう。
 「ブイドイ」=「ライダイハン」ではありませんか。
 折しも、朝日新聞による従軍慰安婦強制連行捏造事件が問題となり、朝日新聞の社長は辞任することになるようです。

 トゥイ役の神田恭兵さんは初めて拝見しましたが、とても気に入りました。
 僕はこのキムを愛しベトナムを愛する青年が大好きなんですが、親が決めた許嫁だったキムがトゥイを拒否する理由として「あなたはベトコンだった」と言うんですが、ベトコン=悪者とは、いかにも西洋人目線ですね。
 
 日本の《ミス・サイゴン》はアンサンブルのレベルも高く、改めて感動しました。
 こうなったら、駒田さんのエンジニアも拝見しなくてはと反省し、7日(日)千秋楽のS席(13,000円)を買ってしまいました。