映画 《ミスサイゴン》25周年記念公演 in ロンドン
 2017年3月15日(水)2:40PM TOHO シネマズ 名古屋ベイシティ

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 映画 《ミスサイゴン》25周年記念公演 in ロンドン
 2017年3月15日(水)2:40PM
 TOHO シネマズ 名古屋ベイシティ

 月刊「ミュージカル」を立ち読みしていたら、ミュージカル《ミスサイゴン》が映画化され、現在映画館で上演されている、という仰天のニュースが載っておりました。
 一番好きなオペラは《蝶々夫人》、一番好きなミュージカルは《ミスサイゴン》(ベトナム版蝶々夫人)。
 あわててネットで調べると、確かにTOHO シネマズ 名古屋ベイシティで、1日1回上演されているようです。

 我が家は名古屋の北東、映画館のある港区は南西で、名古屋の正反対で遠い。
 同じ時間で新幹線で京都まで行けそうな気がしました。

 観客は20人弱。
 ほとんど広告をしていないので、当然のことでしょう。
 この人達がどこから情報を手に入れてきたのか、そちらの方が不思議でした。

 ミュージカルの大プロデューサーであるキャメロン・マッキントッシュは《オペラ座の怪人》や《レ・ミゼラブル》などの自作を映像化していますが、変に映像効果を狙った失敗作ばかりで、《ミスサイゴン》がどうなるのか不安でした。

 エンジニア:ジョン・ジョン・ブリオネス
 キム:エバ・ノブルザダ
 クリス:アリスター・ブラマー
 エレン:タムシン・キャロル
 ジョン:ヒュー・メイナード
 トゥイ:ホン・グァンホ
 ジジ=:レイシェル・アン・ゴー

 今回映像化されたのは2016年9月20日に、ロンドンのプリンス・エドワード劇場で上演された25周年記念公演です。
 《ミスサイゴン》はいつ見ても泣けるんですが、特別なライブ公演というところでますます興奮させられます。
 ちょっとアップが多すぎるようで、全体的に舞台を眺めたい部分もありました。
 別の日に追加映像(アップ)が撮られたそうです。
 しかし商品化されれば毎日この映像を見ることが出来るのかと思うと、嬉しくてたまりません。

 終演後のセレモニーも収録されており、レア・サロンガ(キム)、ジョナサン・プライス(エンジニア)、サイモン・ボウマン(クリス)ら、初演時のメンバーが登場します。
 レア・サロンガは初演時17歳?、今は42歳でしょうか?
 今でも充分キムを演じられそうでした。
 
 驚いたのはジョナサン・プライス。
 1947年生まれというから70歳近くでしょうか。
 髪も白く、薄くなっていましたが、軽々と「アメリカン・ドリーム」を歌い、踊ってくれました。
 アドリブが凄くて、アメリカン・ドリームで女性アンサンブルが出てくれば「介護に来てくれたのかい」とか、「ハゲも毛がボーボー…これは嘘!」なんてね。
 それが音楽に合っているところがさすがです。

 キャデラックに乗って、キャメロン・マッキントッシュ(制作)、クロード=ミシェル・シェーンベルク(作曲)、アラン・ブーブリル(台本)が現れ、セレモニーは続きました。
 いつも書いているけれど、作曲者のクロード=ミシェル・シェーンベルクは、十二音技法で有名なアーノルド・シェーンベルクのお兄さんの子孫。
 音楽の歴史に名前が残るのはアーノルド・シェーンベルクでしょうが、(現代のプッチーニと呼ばれる)クロード=ミシェルの方が、ずっとお金持ちなんでしょうね。
 いや、クロード=ミシェルの作品《レ・ミゼラブル》《ミスサイゴン》の方が、長く上演され続けるかも知れません。

 現代のオペラが騒音と不協和音に埋もれる中で、美しいメロディーに溢れた昔のオペラはミュージカルに受け継がれているようです。
 オペラ公演が長くて5日くらいなのに、ミュージカルは何年、何十年と上演され続ける。
 この差を考える必要があるでしょう。

 僕は日本公演は本田美奈子さんと入江加奈子さんの初演(1992年)から見ています。
 ロンドン(1995年)ニューヨーク(1996年)ロンドン(1997年)と、ニューヨーク(2000年)でも舞台を見ています。
 1996年にニューヨークの舞台を見ているときに「舞台で演じている役者にも、客席にいる観客にも、ベトナム戦争に従軍した兵士、そしてボートピープルがいるのかもしれない」と思いついて、その生々しさに震え上がったことがあります。
 ロンドンの公演は緊張感がなく、日本の公演のほうが良かったと思いましたよ。