《修道女アンジェリカ》 DVD見較べ

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 僕は2004年11月13日・14日に名古屋二期会の《修道女アンジェリカ》(エレクトーン伴奏/演出:中村敬一)を見て、すっかりこのオペラの虜になってしまいました。
 9月9日の二期会《三部作》観劇を前に、市販されているDVDについて見比べをしてみました。

1)スカラ座  1983年

 指揮:ジャナンドレア・ガヴァッツェーニ
 演出:シルヴィアーノ・ブソッティ
 アンジェリカ:ロザリンド・プロウライト
 公爵夫人:ドーニャ・ヴェイソヴィチ

 プロウライトのアンジェリカは、まあ普通でしょうか。
 後半の高音は長く伸ばすことが出来ず、苦しそう。
 最後に子供は出てきませんが、映像処理で天使像が映されます。
 実際の舞台ではどのように見えたのでしょうか?

 ヴェイソヴィチの公爵夫人は声に深みが無く、演技も単調かと思いました。
 アップになると、結構若い人で、僕の伯爵夫人のイメージとは違いました。
 ガヴァッツェーニのテンポは少し遅めで、流れが悪いような気がしました。
 ブソッティの演出は常套的なもので、安心して見ていられますが、新鮮な驚きもありません。

2)モデナ・テアトロ・コムナーレ 2007年2月28日

 指揮:ジュリアン・レイノルズ
 演出:クリスティーナ・ベッツォーリ
 アンジェリカ:アマリッリ・ニッツァ
 公爵夫人:アンナマリア・キウーリ

 アマリッリ・ニッツァが《外套》のジョルジェッタ、アンジェリカ、《ジャンニ・スキッキ》のラウレッタを歌っています。

 ジュリアン・レイノルズの指揮は少し遅めでしょうか。
 その遅いテンポにもかかわらず、後半の高音を余裕を持って歌いきったニッツァの歌唱力には驚きました。

 しかし、彼女は目つきがきつく、公爵夫人を問い詰める場面など迫力ありすぎ。
 無理に演技している感じもあって、アンジェリカはニッツァに合った役では無いように思いました。
 《外套》のジョルジェッタは適役、《ジャンニ・スキッキ》のラウレッタには若々しさが欠けているような。
 なぜだか、最後に下着姿になります。

 アンナマリア・キウーリの公爵夫人は深みのある声と、表情豊かな演技が良かったですね。
 最後は花嫁姿の少女に連れられた少年が現れ(7歳よりは大きいような)、アンジェリカはその少年を抱きしめ、息絶えます。

3)スカラ座 2008年3月

 指揮:リッカルド・シャイー
 演出:ルカ・ロンコーニ
 アンジェリカ:バルバラ・フリットリ
 公爵夫人:マリヤーナ・リポヴシェック

 ルカ・ロンコーニの演出は、横たわった巨大なキリスト像の上を修道女達が動き回るという趣味の悪いもの。
 バルバラ・フリットリのアンジェリカは、期待、恐れ、悲しみなどの細かい表現が素晴らしい。

 妹の婚約を聞いた時には、驚きから祝福まで一瞬にして10回くらいは表情が変わるでしょうか。
 フリットリがアンジェリカ自身に成り切っており、これは文化遺産として将来に残すべき映像でしょう。
 後半の高音も余裕を持って伸ばしてくれます。

 リポヴシェックの公爵夫人は深く迫力のある歌唱で、退場の時にアンジェリカを振り返る演技が良かったですね。
 リッカルド・シャイーの指揮も泣かせます。
 最後は、キリスト像の下から子供が出てきて、アンジェリカはその子供を抱きしめ、聖母マリアに感謝しながら息絶えます。

4)ロイヤル・オペラ・ハウス 2011年

 指揮:アントニオ・パッパーノ
 演出:リチャード・ジョーンズ
 アンジェリカ:エルモネラ・ヤオ
 公爵夫人:アンナ・ラーション

 リチャード・ジョーンズの演出は小児病棟で、ベッドに並べられた子供達が鬱陶しい。
 アンジェリカは看護師(いつの時代の衣装だろう?)。
 エルモネラ・ヤオはルックスが僕のイメージと合わないし、高音は苦しそう。
 最後は入院中の子供を自分の子供と間違えて抱きしめる。
 まあ、こんな伏線だろうとは思いましたよ。

 公爵夫人のアンナ・ラーションは長身で、子供の死を訊ねられた時に、舞台の端から端までよろめき歩く。
 これくらいの演技をしていただければ、公爵夫人の動揺、苦悩、恐怖がよく出ているのでは無いでしょうか。