《修道女アンジェリカ》 CD聴き較べ |
僕は2004年11月13日・14日に名古屋二期会の《修道女アンジェリカ》(エレクトーン伴奏/演出:中村敬一)を見て、すっかりこのオペラの虜になってしまいました。 2018年9月9日の東京二期会《三部作》観劇を前に、市販されているCDについて聴き較べをしてみました。 1)1957年 アンジェリカ:ヴィクトリア・デ・ロス・アンヘレス 公爵夫人:フェードラ・バルビエリ 指 揮:トゥリオ・セラフィン ローマ歌劇場管弦楽団・合唱団 セラフィンのテンポは遅く、流れが悪い。 1957年では、さすがに録音も古い。 アンヘレスもセラフィンの遅いテンポに引っ張られているようです。 後半の高い音は何とか出ている、という感じでしょうか。 バルビエリの公爵夫人は迫力無し。 2)1962年 アンジェリカ:レナータ・テバルディ 公爵夫人:ジュリエッタ・シミオナート 指 揮:ランベルト・ガルデッリ フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団 テバルディの歌唱はアンジェリカらしい、好ましいものでした。 しかし、後半の高い音は苦しそうで、音を下げて歌っている部分があるのが残念です。 12枚の聴き較べをして、音を下げて歌っているのは彼女だけでした。 ジュリエッタ・シミオナートの公爵夫人は、声の迫力に鳥肌が立つほど素晴らしい。 ランベルト・ガルデッリの指揮も文句なし。 録音も聴きやすい音質でした。 3)1969年3月9日 ヴェニス・フェニーチェ劇場 アンジェリカ:マリア・キアーラ 公爵夫人:アドリアナ・ラッツァリーニ 指 揮:オリヴィエロ・デ・ファブリティス フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団 フェニーチェ劇場管弦楽団・合唱団 ライブ録音のため雑音が多い。 足音、咳、装置の移動、プロンプターの声などなど。 キアーラのアンジェリカは特に特徴も無く、後半の高い音も苦しそうです。 ラッツァリーニの公爵夫人はソプラノ系で、深い低音が求められるこの曲には向いていないようです。 ファブリティス指揮するオーケストラは、何だか音程が変です。 ライブ録音という悪条件のためかもしれません。 4)1973年 ローマ、イタリアRCAスタジオ アンジェリカ:カーチャ・リッチャレッリ 公爵夫人:フィオレンツァ・コソット 指 揮:ブルーノ・バルトレッティ 聖チェチーリア管弦楽団 リッチャレッリが若い頃の録音だそうです。 声とオーケストラのバランスがおかしいような気がします。 リッチャレッリの若々しい声はなかなか魅力的です。 「母もなく」の最後のハイCもよく伸ばしています。 コソットの伯爵夫人は声が綺麗すぎるでしょうか。 この役はドスが利いた凄みがないとね。 5)1976年7月7,8,15,16日 アンジェリカ:レナータ・スコット 公爵夫人:マリリン・ホーン 指 揮:ロリン・マゼール ロンドン交響楽団 マゼールの指揮が遅くて、小細工があるというのか、流れが悪い。 スコットのアンジェリカも好ましいものでしたが、後半の高音は少し苦しそうでした。 マリリン・ホーンの伯爵夫人は声に癖がありますが、迫力満点でこの役にピッタリです。 6)1979年 アンジェリカ:ジョーン・サザーランド 公爵夫人:クリスタ・ルードウィッヒ 指 揮:リチャード・ボニング 国立フィルハーモニック・オーケストラ アンジェリカのサザーランドが凄い。 「母もなく」の最後のハイCなんか、伸ばす伸ばす。 アクロバットのような、超人ですね。 クリスタ・ルードウィッヒの公爵夫人は、意外なことに迫力不足でした。 この役は低い音が出ないとね。 7)1979年11月11日・ウィーン国立歌劇場ライブ録音 アンジェリカ:ピラール・ローレンガー 公爵夫人:ケルスティン・マイヤー 指揮:ゲルト・アルブレヒト ウィーン国立歌劇場管弦楽団 指揮アルブレヒトの流れが悪く、ローレンガーは高音が歌えていない。 しかしこの演奏が1879年11月にあのウィーン国立歌劇場の舞台で上演されていたのか、と考えるといろいろ想像できて、ライブ録音はいいですね。 8)1983年 アンジェリカ:イロナ・トコディ 公爵夫人:エスター・ポカ(?) 指 揮:ランベルト・ガルデッリ ハンガリー国立歌劇場管弦楽団・合唱団 このCDはお薦めです。 トコディは可愛いし、澄んだ声で後半の高い音もよく出ています。 公爵夫人も重みがある。 ランベルト・ガルデッリの指揮も素晴らしい。 1983年にしては、録音もクリアです。 9)1991年7月20日~8月4日 アンジェリカ:ミレッラ・フレーニ 公爵夫人:エレーナ・スリオティス 指 揮:ブルーノ・バルトレッティ フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団 フレー二が《外套》のジョルジェッタ、《修道女アンジェリカ》のアンジェリカ、《ジャンニ・スキッキ》のラウレッタを歌ったアルバムです。 フレー二のアンジェリカは良い出来で、後半の高音も歌えていました。 スリオティスの公爵夫人は声が軽く迫力不足。 10)1993年5月21日~23日 ベルギー・ラジオ・テレビ・コンサートホール/ブリュッセル アンジェリカ:ミリアム・ガウチ 公爵夫人:ルシエンネ・ファン・ダイク 指 揮:アレクサンダー・ラハバリ BRTN フィルハーモニー・オーケストラ・ブリュッセル ラハバリは1948年生まれのイラン人。 この人の創り出す生き生きとした音楽が大変良い。 アンジェリカ役のガウチはマルタ生まれ。 初めて聞く名前ですが、後半の高音まで申し分のない出来映えです。 ファン・ダイクの公爵夫人は声量に欠け、存在感不足。 公爵夫人に人を得れば、決定版のCDになったでしょう。 11)1997年8月 アンジェリカ:クリスティナ・ガラルド=ドマス 公爵夫人:ベルナデッテ・マンカ・ディ・ニッサ 指 揮:アントニオ・パッパーノ フィルハーモニア管弦楽団 ガラルド=ドマスの声はアンジェリカにピッタリです。 「母もなく」の最後も、弱く長く伸ばしています。 ディ・ニッサの公爵夫人は少し弱いでしょうか。 12)2012年 アンジェリカ:クリスティーヌ・オポライス 公爵夫人:リオバ・ブラウン 指 揮:アンドリス・ネルソンス ケルンWDR交響楽団 METライブビューイングでは演技力に不満を感じたオポライスですが、このCDに聴くオポライスの声はアンジェリカにピッタリ。 後半の高い音もよく出ています。 ネルソンスの指揮も素晴らしい。 公爵夫人はもう少し深み、凄みが欲しかったでしょうか。 ネルソンスとオポライスは、7年の結婚生活を経て2018年3月(?)に離婚しました。 |