第33回伊丹市民オペラ定期公演
《カヴァレリア・ルスティカーナ》《道化師》
2019年3月24日(日)2:00PM 東リいたみホール 大ホール

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 あれは2007年10月6日(土)、関西歌劇団第89回定期公演《道化師》で聴いた田中 勉さんの「プロローグ」のあまりの素晴らしさに、僕は椅子から転げ落ちそうになるほど驚愕しました。
 その田中さんのトニオを12年ぶりに聴けるチャンスです。
 迷わず伊丹に飛んでいきました。

 伊丹にあるアイフォニックホールにはWOW主催のヘンデルオペラ初演シリーズで毎年通ったものです。
 本日の会場は初めての「東リいたみホール」(伊丹市文化会館)大ホール。
 チケットはソールドアウトでした。

 第33回伊丹市民オペラ定期公演
 《カヴァレリア・ルスティカーナ》《道化師》
 2019年3月24日(日)2:00PM

 指揮:加藤 完二
 演出:井原 広樹

 《カヴァレリア・ルスティカーナ》
 トゥリッドゥ:藤田 卓也
 サントゥッツァ:山口 安紀子
 アルフィオ:井原 秀人
 ルチア:田中 留美子
 ローラ:中原 加奈

 管弦楽:伊丹シティフィルハーモニー管弦楽団
 合唱:伊丹市民オペラ合唱団
 児童合唱:伊丹市少年少女合唱団

 指揮の加藤 完二さんは初めて聴かせていただく名前です。
1952年、京都府出身。
伊丹シティフィルハーモニー管弦楽団常任指揮者。
 ベテランのタクトかと思いました。

 伊丹シティフィルハーモニー管弦楽団はプロアマ混合のオーケストラ。
 《道化師》など楽譜は難しそうですが、管楽器の美しいソロを聴かせていただきました。 ホルンがちょっと外したのは残念でした。

 舞台はギリシャ様円柱が立つ村の広場。
 右手に教会、左手に机と椅子を並べてカフェというシンプルなもの。
 合唱は100人以上で、舞台を埋め尽くします。

 今回の公演のセールスポイントは藤原歌劇団の藤田拓也さんがトゥリッドゥとカニオの二役を歌うこと。
 藤田さんのトゥリッドゥは歌唱も演技も優れたものでした。
 藤田さんは島根大学卒業。
 くらしき作陽大学、大阪音楽大学非常勤講師。藤原歌劇団団員。

 サントゥッツァの山口安紀子さんは神戸女学院人間科学部卒業。藤原歌劇団団員。
 本来サントゥッツァはメゾソプラノの役柄だと思うのですが、山口さんはソプラノ。
 高い音が金属的に聞こえましたが、熱演。
 何度も床に叩きつけられていました。
 
 井原秀人さんといえば、思い出すのは1997年11月29日に拝見した黛 敏郎《金閣寺》の溝口。
 本日のアルフィオは少し声の出が悪かったでしょうか。

 アルフィオとトゥリッドゥの決闘は教会の裏で行われ、「トゥリッドゥが殺された!」という叫び声の後にトゥリッドゥの死体が運び込まれ、サントゥッツァが泣きながら覆い被さる、というフィナーレでした。

 《道化師》
 カニオ:藤田 卓也
 ネッダ:森川 華世
 トニオ:田中 勉
 シルヴィオ:迎 肇聡
 ペッペ:西影 星二

 待望の「プロローグ」、トニオは客席の右端に現れ、オケピットの前を歌いながら左端に移動し、階段から舞台に登ったところで間奏曲に使われる有名なメロディ E voi, piuttosto が歌われるという段取り。
 12年ぶりに聴く田中さんの「プロローグ」は、豊かな声に渋みを増した、と言いましょうか、やはり素晴らしいもので、痺れました。
 《カヴァレリア・ルスティカーナ》ではアリアの後に拍手がありませんでしたが、「プロローグ」には盛大な拍手が沸き上がりました。

 森川 華世さんは神戸女学院声楽科卒業。関西二期会会員。
 森川さんを主役として聴くのは初めてですが、素晴らしいネッダを演じていただきました。
 「鳥の歌」、トニオとの二重唱、シルヴィオとの二重唱とネッダの出番は続きます。
 田中さんの演技力には圧倒されましたし、迎さんは声も見た目もハンサムで二重唱は美しかった。
 藤田さんの「衣装を着けろ」は、激情あふれる絶品でした。

 第二幕の舞台は右側の教会では結婚式が行われています。
 左側には歌芝居の舞台が造られ、観客は長椅子に座って舞台を見ています。

 ペッペ役の西影 星二さんは名古屋大学医学部卒業の「歌う研修医」。
 名古屋在住の僕としては、関西に戻られたのは残念です。
 コロンビーナとアルレッキーノの二重唱は少し緊張しているように見えましたが、長く歌い続けていただきたいものです。

 嫉妬に狂ったカニオのビンタ一発で、ネッダは舞台から客席に転げ落ちます。
 トニオからナイフを渡されたカニオは客席の中ネッダを追い回し、ネッダとシルヴィオを刺し殺し、「喜劇は終わった!」と叫び、ネッダの死体に泣き崩れました。

 演出の井原広樹さんは大阪音大客員教授、伊丹市民オペラ実行委員長。
 100人以上の合唱団を自然に動かし、キャスト陣の奮戦もあって、悲劇のクライマックスを創り出しており、大変気に入りました。