藤原歌劇団公演 《イル・トロヴァト-レ》 名古屋
2022年2月5日(土)2:00PM 愛知県芸術劇場大ホール

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 オミクロン株の流行、北京冬期五輪の開幕、朝から吹雪模様という名古屋です。

 藤原歌劇団公演《イル・トロヴァト-レ》
 2022年2月5日(土)2:00PM
 愛知県芸術劇場大ホール

 指 揮 :山下 一史
 演 出 :粟國 淳
 レオノーラ:小林 厚子
 マンリーコ:笛田 博昭
 ルーナ伯爵:須藤 慎吾
 アズチェーナ:松原 広美
 フェランド :田島 達也
 イネス   :松浦 麗

 合 唱:藤原歌劇団合唱部
 管弦楽:セントラル愛知交響楽団

 今回が『笛田博昭観劇記録』・71演目目のレポートとなります。
 《イル・トロヴァトーレ》は笛田さんのイタリアデビューとなった、得意の演目です。
 カバレッタ「見よ、恐ろしき炎を」は何回か『NHKニューイヤーオペラコンサート』で歌われています。

 《イル・トロヴァトーレ》といえば忘れられないのは、2017年5月6日の『三河市民オペラ』
 「第26回 三菱UFJ信託音楽賞」を受賞した名舞台です。
 YouTubeで笛田さんの若々しいマンリーコの「見よ恐ろしき炎を」を(4分程度)見ることが出来ます。
 三河市民オペラ2017年公演「イル・トロヴァトーレ」より「見よ、恐ろしい炎を」
 
 指揮:園田 隆一郎、演出:髙岸 未朝、マンリーコ:笛田 博昭、レオノーラ: 並河 寿美、ルーナ伯爵: 桝 貴志、アズチェーナ: 谷口 睦美

 歌手も素晴らしかったけれど、髙岸 未朝(たかぎしみさ)さんの演出は驚くべきものでした。
 可動式の数枚の縦長の壁とプロジェクションマッピングを用い、暗転して壁が何回か回ると、後ろにずらりとコーラスが並んでいるとか、アズチェーナが「炎」を思い出すと火が舞台に燃え上がるとか、フクロウが突然舞台を突き破るように飛び出してくるとか、アマチュアオペラとして、高いレベルの舞台を造り上げておられたと思います。
 いろいろ権利問題もあるのでしょうが、映像として残して戴きたかったですね。

 さて、本日の舞台は燃焼不足というか、何だか寒かった。
 コロナで合唱が少ない演出のためなのか、指揮・オーケストラのためなのか、客席が寂しいのか、ホールが寒いのか。
 僕が見るところでは、ソリストもコーラスも突っ立って歌っている人が多い。
 粟國 淳さんの演出はオーストドックスなものだけど、髙岸 未朝さんを見てしまうと、アイディア不足(普通の演出)との印象を持ってしまいます。
 アイディアは枯渇するものだから‥‥。

 笛田さんは快調に歌っていましたが、「見よ、恐ろしき炎を」が不安定になってしまったのは意外だったし残念でした。
 最後のハイCは力技で決めていたけれど。
 小姓のような服装も変で、ロマのリーダーには見えませんでした。

 レオノーラの小林 厚子さん、ルーナ伯爵の須藤 慎吾さんも立派な歌唱。
 
 驚いたのはアズチェーナの松原 広美さん。
 初めて聞く名前ですが、東京藝術大学大学院修了で、ミラノ・ヴェルディ音楽院卒業。
 林康子さん、F.コッソットに師事。
 アズチェーナにふさわしいドスの利いた豊かな声量で、第2幕のマンリーコとの声を張り上げての二重唱にはしびれました。

 イタリアオペラを聴く醍醐味ですね。
 このオペラ、ストーリーは荒唐無稽ですがヴェルディの音楽は魅力的な曲ばかりだし、最後は満足できる舞台となりました。

 《イル・トロヴァトーレ》といえばもう一つ。
 僕は2011年5月3日(火)8:00PMに、パリ・シャンゼリゼ劇場で演奏会形式の《イル・トロヴァトーレ》を観劇したのでした。
 シャンゼリゼ劇場といえば、1913年5月29日にこけら落としの一環として、ディアギレフ率いるバレエ・リュスにより(指揮:ピエール・モントゥー)、バレエ『春の祭典』の初演が行われました。
 この初演は不協和音の連続にヤジが飛び、観客同士が罵り合い、殴り合りあうという、音楽史上で有名なスキャンダルとなっています。

 僕が観劇した《イル・トロヴァトーレ》はボルドー・アキテーヌ・オーケストラの演奏。
 この上演はコンサート・オペラ形式で行われまして、女性はドレス、男性は黒のタキシードでした。
 僕はこのオペラを知らなかったし、フランス語の字幕も分からないので、舞台で誰が何を演じているのかも不明でした (^_^;が、ボルドー・アキテーヌ・オーケストラには名古屋青少年管弦楽団OBで子供の頃から知っている中木健二さんが、チェロの首席奏者として在籍していました。

 劇場見学が目的でオペラは二の次でしたが、まさか『春の祭典』初演のシャンゼリゼ劇場で中木さんに会うとはね。
 この日の舞台に乗っていたことは、後日宗次ホールで、ご本人に確認しました。