愛知祝祭管弦楽団 歌劇「ローエングリン」
2023年8月20日(日)3:00PM 愛知県芸術劇場コンサートホール
指揮:三澤洋史 演出:池山奈都子
 
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 愛知祝祭管弦楽団 歌劇「ローエングリン」
 (演奏会形式 日本語字幕付き)
 2023年8月20日(日)3:00PM
 愛知県芸術劇場コンサートホール

 指揮:三澤洋史
 演出:池山奈都子

 ローエングリン:谷口洋介
 エルザ:飯田みち代
 オルトルート:清水華澄
 テルラムント:青山 貴
 ハインリヒ国王:成田 眞
 軍令使:初鹿野 剛

 管弦楽:愛知祝祭管弦楽団
 合 唱:ローエングリン・スペシャル合唱団

 第1幕の前奏曲が始まって意外だったのは、メロディーを奏でるヴァイオリンの音が痩せていて濁っていること。
 こんなことは書きたくは無いけれど、よくよく観察すると、メンバーの中にレベルが低い人がいる。
 弓は動いていないし、動きもずれている。
 これではあの清浄な音楽は難しいでしょう。
 アマオケの難しいところですね。

 管楽器が入ってからは気にならなくなったけれど。
 ヴァイオリンは人数も少なく、音が聞こえないから。
 管楽器はいつものようにプロに負けないレベルだと感心しました。

 ローエングリン役の谷口洋介さんはバッハ・コレギウム・ジャパンのメンバーだそうで、バッハとワーグナーでは正反対のような気もしますが、よくこの役に挑戦していただきました。
 優しいローエングリンでしたね。
 ただ衣装がワルハラに運ばれるジークムントみたいで違和感がありました。
 DVDのペーター・ホフマンに(僕が)影響されすぎでしょうか。

 エルザ役の飯田みち代さんは京都大学出身のインテリ美人ソプラノ。
 名古屋二期会ブリテン《ねじの回転》(1994年9月3日)を見てからのファンです。
 あれから30年、今何歳なんだろう?
 この大役によく挑戦されました。
 可愛いエルザでした。

 テルラムントの青山貴さんとオルトルートの清水華澄さんは日本でナンバーワンのコンビでしょう。
 お二人をチケット代4000円のアマオケで聴かせていただけるとはありがたいばかりです。
 オペラのフィナーレ、フルオーケストラとフルコーラスの壁を突き破って聞こえてくる清水さんのオルトルートには圧倒されました。

 ハインリッヒ国王の成田眞さん、軍令使の初鹿野郷さんも張りのある歌唱でした。
 
 久しぶりに池山奈都子さんの演出を見ることが出来たのも嬉しかった。
 昔はよく池山さんの舞台を見たものですが、最近は機会がありませんでしたから。
 名古屋音楽大学特任准教授の仕事が忙しいのでしょうか。

 本日の演出は照明を主としたもので、客席のバンダにもスポットライトが当たって分かりやすい。
 照明係(曽我裕幸)も大変です。
 後はP席を含めスムーズな人の出入りかな。
 さすがはベテラン演出家、上手なものです。
 演奏会形式ということで演技はありませんでしたが、ローエングリンとテルラムントの決闘など、もう少し動きがあるともっと盛り上がるのではないかな。

 僕は2020年9月19日に辻井伸行さんのアンコール『エルザの聖堂への行進』を聴いて、この曲が大好きになりました。
 Youtubeで調べると、ブラスバンドのナンバーとして多くの演奏が上がっていました。
 故屋比久勲先生が指揮する鹿児島情報高校吹奏楽部の演奏が感動的ですね。

 今回の『エルザの聖堂への行進』ではパイプオルガン(吉田 文)が入ってからフィナーレにかけての盛り上がりが素晴らしかった。
 会場が震える感じですね
 この感覚はバイロイトへ行っても味わえないものでしょう。バイロイトにはオルガン無いから。
 パイプオルガンって使用料がかかるんでしょうね。
 12人のバンダ(トランペット)といい、実に贅沢な公演です。
 

 フィナーレ近くに男性コーラスの一人が席を立ち、舞台裏に消えました。
 体調不良かな?と思っていたら、この人がゴットフリート(小合史大)でした。
 ゴットフリートって最後に突然現れて歌も無いのに、他のキャストがいなくなった舞台の中央に立って、会場の注目を一身に浴びるという、度胸が無いと出来ない役ですね。

 《ローエングリン》は合唱の出番も多く、12人のバンダ、パイプオルガンなど、アマチュアが取り上げるには難しい作品です。
 このオペラに果敢に取り組み、素晴らしい演奏をしていただいた指揮者の三澤洋史さんや愛知祝祭管弦楽団を始めとする皆さまには感謝の他はありません。
 最後はステージだけでなくP席2階、3階のバンダにも照明が当たり、音楽の盛り上がりもあり、華々しいフィナーレと成りました。

 2000年5月3日、僕はドレスデンにあるワーグナーが《ローエングリン》を作曲した家を訪れました。
 しかし「地球の歩き方」の間違いで開館時間を過ぎていたんですね。
 『ワーグナー関係の史跡』はこちらをご覧ください。
 白鳥王『ルートヴィッヒⅡ世関係の史跡』はこちら。

 飯守泰次郎さんが8月15日に死去されました。
 飯守さんには沢山のワーグナーを聴かせていただきましたが、中でも2003年10月8日関西二期会の《パルジファル》は奇跡だと思いました。

 チケットセンターから連絡があり、8月26日(土)の服部百音さんとブロン先生のリサイタルが中止になったそうです。
 百音さんは世界の宝だと思うから、心配です。