竹澤恭子 ~ 未来のヴィルトゥオーゾを迎えて~
竹澤恭子 佐藤桂菜 進藤実優
2024年2月10日(土)1:30PM 三井海上しらかわホール

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 竹澤恭子 ~ 未来のヴィルトゥオーゾを迎えて~
 2024年2月10日(土)1:30PM
 三井海上しらかわホール

 ヴァイオリン:竹澤恭子
 チェロ:佐藤桂菜
 ピアノ:進藤実優

 J.Sバッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ短調 BWV1003より「アンダンテ」
 ベートーヴェン:ヴァイオリンとチェロのための3つの二重奏曲 第1番 ハ長調 WoO27
 ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 Op.100
 チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の想い出に」イ短調 Op.50

 世界的ヴァイオリニストである竹澤恭子さんを中心に若い音楽家2人が集まった演奏会。
 チケットはソールドアウト、当日券はありませんでした。

 この3人の共通点が愛知県大府市出身だということ。
 僕もよく知らなかったのですが、大府市は名古屋市に接して、尾張と三河の境界の尾張側。
 鈴木バイオリンの本社が移転して、「バイオリンの里 おおぶ」として売り出しているようです。

 竹澤恭子さんは1966年生まれ。
 佐藤桂菜さんは2000年生まれ、進藤実優さんは2002年生まれ。
 佐藤桂菜さんにとって竹澤さんはジュリアードの憧れ、進藤さんは「実優ちゃん」だそうです。

 竹澤恭子さんは3歳からヴァイオリンを始め、才能教育研究会(スズキ・メソード)東海支部の山村晶一氏に師事しました。
 学年が違うので全く面識はないのですが、一応僕の妹弟子なんですね。
 ジュリアードでドロシー・ディレイに学ぶ。
 1986年、チェルノブイリ原発事故のためチャイコフスキーコンクールを諦め、インディアナポリスのコンクールで優勝。
 世界的に活躍し、現在は東京音楽大学教授、桐朋学園大学特任教授。
 使用楽器は、ストラディヴァリウス・ソサエティから貸与された1699年製ストラディヴァリウス「レディ・テナント」とも、日本音楽財団から貸与された1735年製のアントニオ・ストラディヴァリウス「サマズィユ」とも、1724年製アントニオ・ストラディヴァリウス(今回のプログラム)とも。

 佐藤桂菜さんは2023年8月12日にリサイタルを聴き、すっかり気に入ってしまいました。
 3歳よりチェロを始める。 林良一門下(僕の子供が同門なんですね)。
 2013年~2016年、名古屋青少年オーケストラ在団。
 中学卒業後単身渡米。 ジュリアード音楽院卒業。
 現在はロサンゼルスのコルバーン音楽院で元東京カルテットのグリーンスミス氏に師事。

 佐藤桂菜リサイタルのレポートで「日本音楽コンクールに出場すれば、優勝するでしょう」と書いたのですが、昨年のコンクールには出場されなかったようです。
 しかし第2位の柴田花音さんは林良一門下、第3位の泉優志さんは中木健二(林良一門下)門下で、名古屋青少年オーケストラで活動しました。
 林良一門下ということでは札幌交響楽団の首席奏者の石川祐支さん(第68回日本音楽コンクール第1位)が2月4日に放映されたNHK交響楽団第1996回定期演奏会でチェロの主席でソロも弾いていて、ビックリしました。

 進藤実優さんは2021年第18回ショパン国際コンクール(第2位が反田恭平さん)のセミファイナリスト。
 現在はハノーファー音楽演劇メディア大学に在籍。

 さて本日のコンサート、最初のバッハは2月6日に88歳で亡くなられた小澤征爾さんに献奏されました。
 ブラームスは各楽章ごとに盛大な拍手があり、コンサートに慣れていないお客さんが多いようです。
 ブラームスがヴァイオリンソナタ第2番を作曲したトゥーンはこちら。

 チャイコフスキーは熱の入った素晴らしい演奏でした。
 「偉大な芸術家」とはチャイコフスキーの上司であり友人のニコライ・ルビンシュタインのことですが、本日の「偉大な芸術家の想い出に」は小澤征爾さんに捧げられたものかと思いました。
 まあ、僕は余り良い小沢ファンではありませんでしたけれどもね。

 モスクワのノヴォデヴィッチ墓地にあるニコライ・ルビンシュタインのお墓はこちら。
 ついでに、サンクトペテルブルクのチフヴィン墓地にあるチャイコフスキーのお墓はこちら。
 チャイコフスキーのお墓の向かいにあるのがアントン・ルビンシュタインのお墓です。

 演奏後にスピーチがあって、竹澤さんは胸に迫るものがあったのでしょう、なかなか言葉が出てきません。
 今月で閉館してしまうしらかわホールの想い出、小澤征爾さんのこと、そして世界に羽ばたくであろう若い2人のこと、などなど。
 全国では知る人がいないであろう大府市から世界に通用するトリオが出来たことは、隣の名古屋市に住むものとして羨ましい限りです。
 
 アンコールはメンデルスゾーンのピアノトリオ第1番から第2楽章でした。