井上道義 《ラ・ボエーム》
ロームシアター京都メインホール 2024年10月6日(日)2:00PM

『REVIEW24』に戻る  『ホームページへ』
  
 
 井上道義 《ラ・ボエーム》
 ロームシアター京都メインホール
 2024年10月6日(日)2:00PM

 指 揮:井上道義
 演出・振付・美術・衣装:森山開次

 ミミ:ルザン・マンタシャン
 ロドルフォ:工藤和真
 ムゼッタ:イローナ・レヴォルスカヤ
 マルチェッロ:池内 響
 コッリーネ:スタニスラフ・ヴォロビョフ
 ショナール:高橋洋介
 ベノア:晴 雅彦
 アルチンドロ:仲田尋一

 京都市交響楽団
 ザ・オペラ・クワイア
 きょうと+ひょうごプロデュースオペラ合唱団
 京都市少年合唱団

 年末に指揮者活動を終える井上道義さん、最後のオペラは《ラ・ボエーム》。
 演出・振付・美術・衣装はダンサーの森山開次さんで、東京、名取、京都、西宮、熊本、金沢、川崎で上演が予定されています。

 京都駅は混雑しているとのことで早めに出かけましたが、タクシー乗り場は新大阪駅よりずっと整備されていて、それほど待たされることはありませんでした。
 しかし、周りはほぼ100%外国人でした。
 ロームシアターは初めての劇場です。
 鴨川、南座などを見ながら、タクシー代は2500円でした。

 ロームシアター、《ラ・ボエーム》といえば思い出すのは、小沢塾の酷い演出(デヴィッド・ニース)
 舞踊関係者の演出といえば、ダンスに夢中で音楽に集中させてくれなかった《田舎騎士道》(上田久美子)
 いろいろ心配なことです。
 しかし、井上さんの最後のオペラということなら聴いておかなければ。

 舞台が明るくなって6人の人がいるのに、悪い予感が当たってガッカリ。
 4人は黒子のダンサーで、舞踊関係出身の演出家ってダンスを付けることに義務感を持っているのでしょうか?

 舞台はオープンで、屋根裏部屋のドアさえありません。
 ブノアやミミが部屋に入るときには、舞台裏からノックの音が聞こえてきます。
 第4幕になると、ドアの存在自体が無視されていますが、それでいいんです。

 ミミとロドルフォの蝋燭は黒子によって消されます。
 落とした鍵を探すミミの手をロドルフォは積極的に握ります。
 この間にロドルフォはミミを好きになった、という演出でしょうか?

 印象に残っているのは、ロドルフォ、ミミのアリアがゆっくりだったこと。
 たっぷりと歌うといえばいいけれど、歌う方は大変だろうと思いました。

 第1幕と第2幕との舞台転換の間には、パルピニョールとダンサーによる長いパントマイムがありました。
 意味不明で僕は無視していたけれど、観客に拍手を強要するなど、幼稚園のようで不愉快でした。

 カフェ・モミュスは机と椅子を並べただけ。
 それで不満はありません。
 コーラスは並んで歌う部分が多く、演出家がオペラに慣れていない印象を持ちました。

 第3幕で驚いたのは、マルチェッロが働いている酒場がないこと。
 それでも状況は把握できるし、全国を回る舞台に大道具は少ない方が良いでしょう。

 ロドルフォとマルチェッロの二重唱からミミが自分の命が長くないことを知る流れはとても良かった。
 僕はこの場面がこのオペラのクライマックスだと思っています。
 ほとんど何もない舞台で雪は降っていませんでしたが、ダンサーは出てこなかったし。
 オペラはこうでなくては。

 ミミとロドルフォの二重唱が終わって舞台が真っ暗になって、拍手。
 すると二人にスポットが当たってカーテンコールかと思ったら、演技が続いていて、ここから二人は別れるんですね。
 このアイディアは面白かった。

 第4幕も人の動きなどよく出来ていると思いましたが、ミミが死んだらダンサーが出てきてゲッソリ。

 歌手は知らない人ばかりでしたが、ミミのルザン・マンタシャンは1月にロイヤルオペラにミミ役でデビューしているそうです。
 他のキャストもそれに負けない立派な出来かと思いました。

 カーテンコールで井上さんは元気いっぱい。
 まだまだ活躍できそうです。
 「カーテンコールの写真を撮って、拡散して下さい」という掲示があったので、やってみます。