ドイツ音楽紀行(13)1997年4月14日(月)
ケルン歌劇場《ファルスタッフ》
 
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 ケルンのオペラハウスは大きい通りに面しているが、前に広い広場がある近代的な建物。
 この広場から大聖堂が望まれる。
 6:30入場。
 クロークはチケットを見せると、その座席に対応した指定の場所に荷物を収容してくれる仕組み。
 返してもらうときは、またチケットを見せるわけだ。
 
オペラハウス チケット


 劇場内に入ると、PARKETT(1階席)は横一列に50くらいの座席が通路なしで並んでいる。
 僕の席は1RANGということで2階席なんだが、2階席は20~30の席が一つボックスのように固まって、壁から半島のように突き出している。
 立ち見席なし。
 舞台上部に字幕が出る。

        1997年4月14日(月)19:30

      MUSIKALISCHE LEITUNG:JAMES CONLON
      INSZENIERUNG:ROBERT CARSEN

      SIR JOHN FALSTAFF:GU:NTER VON KANNNEN
      FORD, ALICES MANN:NED BARTH
      FENTON:JOHN OSBORN
      MRS. ALICE FORD:JOANNA KOZLOWSKA
      NANNNETTA:YING HUANG
      MRS. QUICKLY:CLAIRE POWELL
      MRS. MEG PAGE:ANDREA ANDONIAN

 《ファルスタッフ》というオペラを見るのはこれが初めて。
 原作はシェークスピアの戯曲《ウィンザーの陽気な女房たち》。
 肥満体で好色・不良老年騎士のファルスタッフを主人公とした喜劇で、ヴェルディ最後のオペラになる。
 そういえば、昨日の《パルシファル》はワグナー最後のオペラだった。

 演出のロバート・カーセンは、2年前、イングリッシュ・ナショナル・オペラの《真夏の夜の夢》(ブリテン作曲)で大笑いさせてもらったので、同じシェークスピア原作の喜劇ということで期待は大きかった。

 第1幕第1部は、ヘンリー4世の時代(1399~1413)のウィンザーの街のガーター亭のはずだが、周りを茶色の壁で囲まれた部屋で、ウェイターが出入りしている。
 第2部になって驚いたんだけれど、ファルスタッフからラブレターを送られた婦人達が彼を懲らしめる相談をするのは、何と現代のレストラン (@_@)。
 どうもこの演出のコンセプトは現代のホテルのようだ。

 一番驚いたのが、第2幕第2部のフォード家の居間。
 幕が開くとそこはシステムキッチン、冷蔵庫、電子レンジ付きの明るい台所。
 会場から大爆笑と大拍手\(^o^)/。
 偽のラブレターに騙されてやってきたファルスタッフは、妻が浮気をしていると勘違いして激昂したフォード氏達に追い詰められ、洗濯篭に隠れる。
 で、彼をそのまま窓からテームズ川に放り込むんだが、放り込んだとたんに舞台裏から大量の水が浴びせかけられて、舞台上の皆は水浸し。
 これには笑った笑った\(^o^)/。
 で、大爆笑と大拍手のうちに幕。 休憩となった。

 ドイツのオペラハウスでは、休憩時間は皆ロビーに出るようで、ロビーは大混雑。
 場内に残る人は10人もいないんじゃないかな?

 第3幕、指揮者のジェームズ・コンロンが登場すると、会場から大歓声と大拍手。
 僕はコンロンという指揮者は名前しか知らなかったんだが、素晴らしい指揮者だ。
 切れば血が吹き出すような(陳腐な表現だが)ヴィヴィッドな音楽が彼の指揮棒から湧き上がる。
 劇場全体が一つの有機体としてうねっているような、不思議な体験をした。
 ケルン歌劇場はレベルが高いとは聞いていたが、これほどまでとは。
 これこそがオペラだ! と痛感する。

 第3幕第2場の幻想的な森のシーンがあっという間にホテルの広間に変わり、フィナーレのフーガが歌われている間に後ろでボーイ達が着々と晩餐の準備を進める。
 そして、長いテーブルを囲んでの食事で幕となる。

 この公演は、僕が今まで見た数々のオペラの中でも最高のオペラの一つだ。
 カーセン万歳! コンロン万歳! と叫びたい (^_^) 。

 終演は10時30分。
 ケルン中央駅まで歩き、列車でボンまで20分。
 夜の駅や汽車は怖かったんだが、特に問題なし。
 ハードな日程が続くが、旅行は始まったばかりだ。  
 

 
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