ウィーンミュージカル 《エリザベート》 (7)
◇ KITSCH!/エーアン/ママどこにいるの?/何も、全く何も無い

 
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◇シーン1 ブダの大聖堂の前で

 当時ハンガリーではオーストリアに対する激しい独立運動があったが、エリザベートの取りなしもあり、同じ皇帝を持つ連邦国家ということで、オーストリア=ハンガリー二重帝国が成立した。
 このアウグスライヒ(寛容・妥協)はハンガリーびいきのエリザベートにとっては偉大な勝利であり、一方オーストリア側(ゾフィー皇太后)にとっては外交的敗北になるわけだ。

 そして場面は1867年6月8日、ブダの大聖堂におけるハンガリー皇帝としてのフランツ・ヨーゼフ夫妻の戴冠式。

 『KITSCH!』

 さて、第二幕の最初のナンバーは『KITSCH!』。
 舞台にはこちら向きに、王宮近くのマーチャーシュ教会で行われた戴冠式から出てくる皇帝夫妻を待ち受ける、大勢の人々が書かれている。
 
 
 
 ルケーニは客席の後ろから現れる (@o@) 。
 彼は野球場の売り子のように首から掛けたトレイ(なんて言えばいいの?)に入れた写真を、『この戴冠式の記念品にいかが?』と通路寄りの客に売りつけようとする(その後のレポートでは、どうもチョコレートを配っていたらしい)。
 『KITSCH!』とは『まがいもの』。

 人はみな皇帝夫妻を美化するが、実際はどうなのか?
 エリザベートはルドルフのことは放ったらかしで、スイスの銀行に個人口座を持っている。
 KITSCH!

※実際に彼女の死後に分かった遺産は、不動産以外に120億円という莫大なものだったそうです。
 使いたい放題使ったお金はハプスブルク家(フランツ・ヨーゼフ)のお金で、個人の資産は自分で貯め込んでいたわけですね。

 『ELJEN/エーアン』

 『ELJEN』は僕には『エーアン』と聞こえるが、正しいかどうかは不明。
 ハンガリー語だからね (^_^;。
 『エルイェン』と書いてある本もあった。

 ハンガリー人の『エーアン、エルジェベート!』という賛美の歌に合わせ、客席2階の立見席には白いハンカチを振るグループがいる。
 何か約束事でもあるのか?

◇シーン2 王宮の寝室

 『ママ、どこにいるの?』

 王宮の寝室だというのに、舞台にはデフォルメされた巨大な馬車が、壊れて横たわっている。
 この馬車は後のナンバー『影は長くなる』にも現れるが、シェーンブルン宮殿の馬車博物館にある「霊柩馬車」であろう。
 この馬車により、皇太子ルドルフ、エリザベート、フランツ・ヨーゼフがカイザーグルフトまで運ばれたのだ。

 『ママ、どこにいるの? 僕の声が聞こえる?』と歌う少年ルドルフの前にトートが現れ、『お前が私を必要とするとき、私はお前の所にやってくる』と歌う。
 歌が上手な子どもは大好き (^_^) 。

◇シーン3 ウィーン近郊の精神病院

 『NICHTS,NICHTS,GAR NICHTS/何も、何も、全く何も無い』

 これはスタジオ録音CDには無いナンバー。
 エリザベートは皇后の義務として、ウィーン近郊の精神病院を訪れる。
 そこには、自分のことをエリザベート皇后と思いこんでいる患者、ヴィンディッシュ嬢がいた。

 『図々しい! エリザベートは私よ!』と叫ぶ彼女に、エリザベートは『私は貴女のようになりたい。貴女は拘束着で身体を縛られているが、私は魂を鎖につながれている』と歌う。

 私は今までの生活で何を得たのでしょう?
 何も、何も、全く何もない!
 唯一の解放は精神錯乱になること、唯一の救いは破滅することなのです。
 今のような生活を続けることは、偽り、欺瞞以外の何物でもありません。

 エリザベート魂の叫びとも言うべき重要なナンバーです。
 この時点では、エリザベートはまだ皇后としての義務を果たそうと努力しています。
 しかし彼女は、精神のバランスを崩す寸前まで追いつめられています。
 
 
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