マダムバタフライ世界コンクールモルドヴァ大会入賞者祝賀演奏会
 2008年1月23日(水)7:00PM 東京オペラシティコンサートホール

「REVIEW08」に戻る  ホームページへ  笛田博昭観劇記録
 
 
 ウィークデイの東京のコンサートは困ります。
 しかし、このコンサートが笛田博明さんにとって重要な意味を持つことは言うまでもありません。

 その現場に自分がいたい、そして結果を見届けたいという涙ぐましい (^_^ゞ ファン心理で、会議を抜け出し東京に向かいました。
 東京では夕方には雪も降るそうで、帰れるかどうか不安もありました。

 会場の東京オペラシティコンサートホールに入るのは初めてです。
 ウィーンのニューイヤーコンサートのように素敵な花(フラワーデザイナー:本間裕子)が飾り付けられていましたが、会場内は撮影禁止。

 演奏中ならいざ知らず、どうして会場の写真を撮ってはいけないのか、僕には理解できません。

 皆様に美しい花に飾られた会場をお見せできないのが残念です。

◇マダムバタフライ世界コンクールモルドヴァ大会入賞者祝賀演奏会
 2008年1月23日(水)7:00PM 東京オペラシティコンサートホール

 第一部式典 挨拶
 理事長:小林裕子  実行委委員長:佐藤東洋士  審査委員:中島基晴
 特別演奏:ウイルマ・ヴェルノッキ(第2回優勝者・イタリア)
       《カルメン》より『ハバネラ』

 演奏に先立ち、主催者側から挨拶がありました。
 中島さんから「日本人3人が上位を独占したが、審査員は同国人の審査に参加する事は出来ないので、これは実力です」との説明がありました。
 第1回優勝者で、モルドヴァ大会の牽引役となったマリア・ビエッシュさん(ソビエト連邦=当時)は、病気のため来日できませんでした。

 指揮:古谷誠一 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

1.オペラ《トスカ》より 『歌に生き愛に生き』
 ソプラノ第2位 ポペスク・アンダ・オリンピア(ルーマニア)

 最初のオリンピアの歌を聴いて、その声量と深みのある歌声に驚きました。
 第2位でこのレベルなら、1位はどうなってしまうのでしょう?
 果たして、登場した歌手はいずれも素晴らしい歌唱で、今まで知らなかった『マダムバタフライ世界コンクール』がいかにハイレベルなコンクールであったのかということが分かりました。

2.オペラ《トウーランドット》より『氷のような姫君の心は』
 ソプラノ第2位 アンナ・ネチャイエバ(ウクライナ)

3.オペラ《トウーランドット》より『誰もねてはならぬ』
 テノール第1位 笛田博昭

 僕は笛田さんのファンですから、彼の歌唱を客観的に聴くことが出来ません。
 無事に歌いきったときには、本当に安心しました (^_^) 。

 03年の名古屋芸術大学《トゥーランドット》公演(指揮:古谷誠一 演出:森泉博行)で名も知らぬ若きテノールに仰天して以来、僕は何回も笛田さんが歌うこの曲を聴いています。
 今までで最高とは思いませんが、これだけ歌えれば文句もないでしょう。

 休憩時間に日本オペラ界の大御所が、「素材は良いのだから早くイタリアに留学して、素材に磨きをかけるように」と言っておられたそうです。
 プロの厳しい目から見ればそういうことになるのでしょうか。

4.オペラ《マノン・レスコー》より
 ソプラノ第1位 野中百合子
5.オペラ《ラ・ボエーム》より『冷たい手を温めましょう』
 テノール グランプリ 村上敏明

 野中さんも村上さんも笛田さんほどの声量はありませんが、かっちりとしまりのある歌声で良かったですね。

《蝶々夫人》より抜粋
第一幕 『愛の二重唱』 笛田博昭 アンナ・ネチャーエヴァ
第二幕 『ある晴れた日に』 野中百合子
第二幕 『あなたのお母様は』 ポペスク・アンダ・オリンピア
第三幕 『愛の家よ さようなら』 村上敏明
第三幕 『可愛い坊や』 野中百合子 村上敏明

 笛田さんは歌唱力に較べ演技、特にラブシーンに問題があると思っています。
 今回も笛田さんは、蝶々さんと早くベッドインしたい、若いアメリカ士官には見えませんでした。
 もっと偉そう (^_^ゞ。
 もちろん歌唱は素晴らしく、ネチャイエバの美貌、演技、歌唱、そして古谷さんの熟練のサポートにより、この長大な『愛の二重唱』が今回のコンサートのクライマックスとなったでしょうか。
 しかし、西洋人の蝶々さんと日本人のピンカートンとは、面白い組み合わせではありました。

 蝶々をあしらった和風のドレスをまとった野中さんによるフィナーレは、コンサートでありながら途中から正座し、自害した後はステージに突っ伏してしまうというもの。
 そこまでして蝶々さんの最後を演じたいという野中さんの表現意欲には感服しました。

 終演は9時で、最終の新幹線に余裕を持って間に合うことが出来ました。

 会場で『三浦環没後55周年・マダムバタフライ』(四谷ラウンド・1000円)という本が売られておりまして、帰りの新幹線の中で読み終えてしまいました。

 三浦環から舞台衣装を形見として譲られた小林伸江さんのマダムバタフライコンクールにかけた情熱や、長崎のグラバー邸にある三浦環やプッチーニの像、そしてマリアカラスの来日など、興味深い話が満載で、この本は是非お薦めしたいと思います。
 山中湖にある三浦環さんの墓も小林さんによって整備されたようです。
 
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