東京二期会オペラ劇場 《サロメ》
2011年2月23日(水)2:00PM 東京文化会館大ホール

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 ウィークデイの2時開演とは、名古屋在住で午前中に仕事がある僕にとって、あまりにむごい時間設定です。
 演出は1999年にハンブルクの《ヴォツェック》2000年にドレスデンの《仮面舞踏会》、を見てから、ずっと嫌いなコンヴィチュニーだし。

 でも行かなくては。
 大隅智佳子さんの《サロメ》の初日を見なくては。
 追っかけファンをするのも大変です (^_^ゞ。

   東京二期会オペラ劇場《サロメ》
   2011年2月23日(水)2:00PM
     東京文化会館大ホール

  指揮:シュテファン・ゾルテス
  演出:ペーター・コンヴィチュニー

  サロメ:大隅智佳子
  ヘロデ:片寄純也(かたよせじゅんや)
  ヘロディアス:山下牧子
  ヨカナーン:友清 崇
  ナラボート:大川信之
  ヘロディアスの小姓:田村由貴絵

 管弦楽:東京都交響楽団  合唱:二期会合唱団
ネザーランド・オペラ&エーテボリ・オペラとの共同制作

 プラグラムの解説によれば、舞台は「第三次世界大戦後の地下壕の中」。
 僕はどういう状況設定でも納得が出来る演出をしていただけば結構です。
 しかし、現代演出の常道として登場人物は普段のスーツ姿。
 誰が誰なのか、何処で歌っているのかが分かりませんし(特にヘロデ王)、字幕に映される歌詞とまったくかけ離れた演技には参ってしまいます。

 台本に書いてあることをしないのがコンヴィチュニー演出だそうで、サロメは残念ながら脱ぎません。
 リヒャルト・シュトラウスがストリップのために書いた「7つのヴェールの踊り」の音楽が官能的に盛り上がっても、舞台の上はテーブルクロスを振り回したり走り回ったり、まったく音楽と無関係の動きが続きます。

 あまり下品なことを書きたいわけではないけれど、正直に見たことをレポートすると、脱ぐのはむしろ男性。
 ナラボートの大川信之さんは死んでからパンツまで脱がされて、むき出しの生尻に何人もの男性からオカマを掘られていました。
 オカマを掘る方はさすがにズボンを下げるだけでしたが、練習風景を想像するとおかしいというかおぞましいというか。
 
 コンヴィチュニーは音楽、歌詞などの台詞、ト書きを読み解き、新しい演出をするのだそうですが、そうやって読み解いていくとナラボートのオカマレイプなどが必然的な流れとして浮かび上がってくるわけですね (^_^; 。
 しかしこの場面、演じている人は「コンヴィチュニーに言われたからオカマ掘っています」感がありありでした。
 というか、この公演全体が「言われたからやってます」という感じで自発性が感じられず、動きがぎこちない人もありました。
 まあ、このキャストにとっては初日ですからね。

 カーテンコールでブーイングをしている人もいたけれど、コンヴィチュニーの演出はこんなものなので、ブーイングするためにわざわざ劇場まで来なくても良いのでは?
 見に来る人がいなくなれば、演出を頼まれることもなくなるわけだから。

 僕だって来たくはないけれど、「大隅智佳子さんにはもれなくコンヴィチュニーがついてくるんですね(のだめカンタービレ)」という事情があるので‥‥。
 一階席の後ろの方は空席が目立ったけれど、ウィークデイの2時開演ではこのようなものでしょうか?

 大隅智佳子さんは、最初は声が出ていないようで意外でしたが、ペース配分でしょうか。
 徐々に調子を上げ、最後のモノローグは素晴らしかった。
 オケの音の壁の上から声が届いてくる。
 しかし、衣装が《トスカ》第一幕のカヴァラドッシの作業着みたいで、これでは雰囲気が出ません。
 隣りになすこともなく座っているヨカナーンも目障りだし。
 本当に視覚に邪魔される公演です。
 某大先生には「演出が嫌なら目を閉じて音楽だけを聴くよう」とアドバイスされましたが、いつまでも目を閉じてはいられませんよ (^_^; 。

 思い返せば、2001年ザクセン=アンハルト歌劇場来日公演のラッパライネンはこの場面を全裸で歌い切ったのでした。

 終演後に大きな声を出しながら退席していった目立つ客がいたけれど(係員が付いていたみたい)、あれも演出のうちなのかな?
 もしそうなら、僕は「馬鹿みたい」と思うけれど、「さすがは天才コンヴィチュニーの卓抜なアイディア」と絶賛する人もいるのでしょうね (^_^; 。

 と書いてからネットを検索していたら、最後にヘロデが「その女を殺せ!」と叫ぶ場面で、1階中央の座席にライトが当たり、立ち上がった役者が日本語で「その女を殺せ!」と叫んだそうです。
 「その女」って、舞台の上にサロメはもういないんだけれどもね。
 僕はヘロデが舞台裏からマイクで叫んだのかと思っていました (^_^; 。

 そして予想どおり、「非常に気の利いたアイディア」だと誉めているブログもありました (^_^) 。

 シュテファン・ゾルテス(名フィルではシュテファン・ショルテスだった)の音楽は、舞台が邪魔になって良く分かりませんでした。
 音楽に集中させない演出がコンヴィチュニーの狙いなのでしょう。
 名フィルの『新世界より』から推測すると、中庸な音楽だったのではないでしょうか。
 
 名フィルといえば、今夜は名古屋市民会館でティエリー・フィッシャー&名古屋フィルハーモニー交響楽団のブラームスチクルス(交響曲第3番)です。
 カーテンコールもそこそこに、新幹線に飛び乗りました。

 会場では終演後に、コンヴィチュニーによるアフタートークがあったそうです。
 

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