バイエルン国立歌劇場来日公演ト 《ローエングリン》
2011年9月25日(日)3:00PM NHKホール

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 午後1時開演のあらかわバイロイト《神々の黄昏》の第一幕(120分)が終了後、タクシーと山手線でNHKホールに移動します。
 約1時間かかってNHKホールに到着したときは、ちょうど《ローエングリン》の第一幕が終了したところでした。

 NHKホールに入るのは、2003年11月のキーロフオペラ、プロコフィエフ《戦争と平和》以来で、当時のことはほとんど覚えていませんが、今回改めて舞台までの距離の遠さに驚きました。
 
NHKホール 正面玄関


 僕はロバート・カーセンが演出する作品は見逃さないように心がけているので、バイエルン国立歌劇場来日公演の《ナクソス島のアリアドネ》をインターネットで購入しました。
 ついでに《ローエングリン》を見てみたら、比較的安いチケット(D席 28000円)があったので、こちらも購入しました。

 その後、僕はゴールデンウィークにパリ旅行をしたのですが、往復のルフトハンザ機内でこの《ローエングリン》のビデオが放映されていました。
 これが、剥製の白鳥を抱えた大工のローエングリンが、エルザと一緒に家を建てるという酷い演出で、チケットを買ってしまったことを心から後悔しました。

 ところが、ローエングリン役のヨナス・カウフマンが手術のために来日できなくなり、代わりにヨハン・ボータがローエングリンを歌うとの連絡が届きました。

 BSで放映された「イオアン・ホーレンダー退任ガラコンサート」では、ドミンゴやネトレプコなどきら星のごときスターたちが登場しました。
 その中で僕が最も感銘を受けたのがヨハン・ボータの『ローエングリンの名乗り』でした。

 ボータはヒゲ面の肥満体で、とてもローエングリンには見えないのですが (^_^; 、その神々しいまでの歌声には圧倒されました。
 そのボータが日本でローエングリンを歌ってくれるとは夢のような話ではありませんか。
 ミュンヘンのローエングリンが病気になると、代わりにウィーンのローエングリンがやって来るとは、関係者の努力に頭が下がります。

 「イオアン・ホーレンダー退任ガラコンサート」でボータの次に感心したのがワルトラウト・マイヤーの『愛の死』で、彼女が歌うオルトルートを聴くのも楽しみでした。


  バイエルン国立歌劇場来日公演ト 《ローエングリン》
   2011年9月25日(日)3:00PM NHKホール

   指揮:ケント・ナガノ
   演出:リチャード・ジョーンズ

   ローエングリン:ヨハン・ボータ
   エルザ:エミリー・マギー
   テルラムント:エフゲニー・ニキーチン
   オルトルート:ワルトラウト・マイヤー
   ハインリッヒ王:クリスティン・ジークムントソン
   王の伝令:マーティン・ガントナー

 ボータの『ローエングリンの名乗り』は、さすがに長時間歌った後だけあって、「イオアン・ホーレンダー退任ガラコンサート」の時のようには行きませんでしたが、それでも立派な歌唱を聴かせていただけたと思っています。

 超肥満体のボータに較べ、ワルトラウト・マイヤーはウェストも締まってスタイルも良いのに、豊かな声でかえって驚きました。
 エミリー・マギーは2007年5月にスカラ座で《イェヌーファ》を見て、その卓抜な歌唱、演技に大きな感動を受けたことがあります。

 ケント・ナガノの指揮は爽やかなもので、ワーグナー初期のこの作品には向いていたとも言えるでしょうか。
 僕がワーグナーに望むものはこのような薄い音楽ではなく、もっとおどろおどろしいものですがね。

 リチャード・ジョーンズの演出は馬鹿馬鹿しくて、「金返せ!」でしたね。
 本当に、演出無しで料金を半額にしていただきたかった。
 わざわざお金と手間をかけて、感動を台無しにする演出とは何なのでありましょう?

 僕は第2幕の『エルザの聖堂への入場』が大好きなのですが、オーケストラと合唱がずれて聞こえました。
 今回の来日公演に当たり、福島第1原発事故を理由に予定された約400人のメンバーのうち約100人が来日を拒否したそうです。

 「良い指揮者が指揮した悪いオーケストラの方が、悪い指揮者が指揮した良いオーケストラよりも良い演奏をする」と言われており、エキストラメンバーを集めたこの公演の音楽的な責任は指揮者にあると考えて良いのでしょうか?
 それとも、合唱のズレの責任は合唱指揮者が負うものなのでしょうか?

 あらかわバイロイト《神々の黄昏》、バイエルン国立歌劇場《ローエングリン》と梯子して、オペラを聴いた、見たという満足感は《神々の黄昏》の方がはるかに高かった。

 バイエルン国立歌劇場がいくら良い歌手を集めても、あの演出ではどうにもなりません。
 いい加減にドイツのオペラハウスもまっとうな道に戻っていただきたいものだと、僕は強く思うものです。
 

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