《パルジファル》 びわ湖ホール大ホール
2022年3月3日(木)1:00PM

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 国内ではコロナウイルスの蔓延防止延期、世界ではパラリンピックが始まり、ロシアのプーチン大統領のウクライナ侵入と大変な日々が続いています。
 親プーチンのゲルギエフは世界のオーケストラからボイコットされているとか。
 こんな時にワーグナーとはヒトラーを思い出してしまいます。

 《パルジファル》セミ・ステージ形式
 2022年3月3日(木)1:00PM
 びわ湖ホール大ホール

 指揮:沼尻流典
 構成:伊香修吾
 
 アムフォルタス:青山 貴
 ティトゥレル:妻屋秀和
 グルネマンツ:斉木健詞
 パルジファル:福井 敬
 クリングゾル:友清 崇
 クンドリ:田崎尚美
 
 管弦楽:京都交響楽団
 合 唱:びわ湖声楽アンサンブル

 新型コロナウイルス感染対策による入国制限措置等の事情により、クリスティアン・フランツとユルゲン・リンの出演が困難となりました。このため、下記のとおり出演者を変更して上演いたします。

 パルジファル役(3月3日):クリスティアン・フランツ → 福井 敬
 ※福井敬は、3月3日・6日両日パルジファル役を務めます。
 クリングゾル役:ユルゲン・リン → 友清 崇

 僕は一回だけバイロイト歌劇場で観劇したことがあって、それは1980年8月16日(土)。
 もう40年も前ですか。

 演目は《パルジファル》で、ほとんどオペラを見たこともない初心者に、ワーグナー最後の難解な作品とは荷が重い体験でした。
 指揮:ホルスト・シュタイン  演出:ヴォルフガング・ワーグナー

 暗闇の中から聞こえてきた前奏曲にもゾクゾクしましたが、第一幕の舞台転換の音楽、グルネマンツとパルジファルが舞台奥(すごく遠い)に消え去ると、周囲から大道具が集まってきて聖杯城を型作り、聖杯の騎士達が歌いながら入城してきた場面には、「これこそワーグナーオペラの最も深奥な神殿だ」と痺れあがったものです。

 これが人生最初で最後の《パルジファル》と覚悟して観劇したのですが、今回が12回目の《パルジファル》となるとは(パルジファル観劇記録)
 人生なんて分かりませんね。

 舞台は暗く、歌手はステージ前で出番になると出てきて、並んだ椅子に座ります。
 その後ろにオーケストラ、その後ろに合唱が出番になると出てきて整列します。

 本日の演奏は男声軍が立派な出来でした。
 福井敬さんは『NHKニューイヤーオペラコンサート』に20回目出演かな?
 色々な演目を歌いわけ(ツェムリンスキーを聴いたことあり)、オペラ界のレジェンドとなる人でしょう。

 あとはグルネマンツの斉木健詞さんが予想を超える出来でした。
 年をとったグルネマンツにはちょっと声が若かったでしょうか?

 いっぽう女声軍(田崎尚美さん)は声に中身が無い感じ。
 Ⅱ幕のフィナーレは盛り上がりましたが、全体的に声量が足りないかな?

 昨年10月10日《つばめ》で好演出を見せてくれた伊香修吾さんですが、今回は不味かった。
 ストーリーは素直なものですが、背景が次々と不必要に変化する。
 プロジェクションマッピングというのでしょうか。
 こういうテクニックを持つと、つい使いすぎてしまうんですね。

 男性軍の服装が全員フンディングのようで、誰が誰だか分かりにくかった。
 アムフォルタスも王らしくないし、血も流れていません。
 セミ・ステージ形式で演技が無い分、観客に分かりやすくする配慮は必要でしょう。

 昨年は3月7日にびわ湖ホールで沼尻流典の《ローエングリン》を聴いて、3月11日に新国立劇場で大野和士さんの《ワルキューレ》を聴いたのでした。
 後から思い返すと沼尻さんの方が、ワーグナーに合っているように思えてきました。
 ということで、沼尻さんは日本で一二を争うワーグナー指揮者なのではないか、と思っています。

 それにしても《パルジファル》は難解でしたね。