メットライブビューイング《蝶々夫人》 2024年6月22日(土)11:30AM |
メットライブビューイング《蝶々夫人》 2024年6月22日(土)11:30AM 「2024年5月11日(木)のメット公演」 指揮:シャン・ジャン Xian Zhang 演出:アンソニー・ミンゲラ 蝶々さん:アスミック・グリゴリアン(アスミク・グレゴリアン) Asmik Grigorian ピンカートン:ジョナサン・テテルマン スズキ:エリザベス・ドゥショング(エリザベス・デショング) Elizabeth DeShong シャープレス:ルーカス・ミーチェム 公演によって人の名前が変わるのは困ってしまいます。 検索に引っかからなくなりますからね。 今は亡きアンソニー・.ミンゲラの名舞台を見るのは、2009年:パトリシア・ラセット、2017年:クリスティーヌ・オポライス、2020年:ホイ・ヘーに続いて4人目となります。 今回第Ⅰ幕で感心したのは、蝶々さんの親戚がグループになって分かりやすくなっていたこと。 最後は蝶々さん、母親にも見放されちゃうのね。 驚いたのは、今までは二重唱の後でピンカートンが蝶々さんをお姫様抱っこして舞台奥に消えていったのに、今回は途中で乗っかっちゃったこと。 今回の公演で皆が注目したのはアスミク・グリゴリアンでしょう。 2週間前のロイヤルオペラシネマ《蝶々夫人》もグリゴリアンでしたからね。 この公演が彼女のMETデビューとなるそうです。 アスミク・グレゴリアンは1981年にリトアニアで生まれ、母国の音楽演劇アカデミーで学ぶ。 父は名テノールだった故ゲガム・グリゴリアン。 母もオペラ歌手で、夫婦でMETで歌っていたそうです。 アスミク・グリゴリアンはとても蝶々さんの15歳には見えませんが、美人で美声。 高い音が少し出にくかったでしょうか? 第1幕最後の二重唱は楽譜がどうなっているのか分かりませんが、目一杯のばしてほしかった。 ピンカートン役のJ・テテルマンも今シーズンがMETデビュー。 ピンカートンにしては真面目な役作りに見えたけれど、良いテノールで、カーテンコールでは盛大な「ブーイング」を受けていました。 この役は蝶々さんが好演して気の毒であるほど「ブーイング」を受けてしまうのね。 シャープレスほかの男性軍も皆さん立派な出来でした。 ヤマドリさんもいい人で、蝶々さんを救えるのは彼だけだったのにね。 指揮のシャン・ジャンは1973年、中国・丹東生まれの49歳。 音楽家を両親に持ち、北京の中央音楽院で学び、1998年に米国に移住。 シンシナティ大学音楽院で研鑽を積み、ロリン・マゼール主宰の指揮者コンクールで見出されて、2005年からニューヨーク・フィルハーモニックでマゼールの副指揮者を務めた。 2017年にはロンドンの夏の音楽祭「プロムス」に客演、音楽祭に登場した初の女性指揮者となった。 今回がMETデビュー。 第Ⅰ幕ではオケの流れが悪いような気がしましたが、第2幕からストーリーの盛り上がりにつれて、気にならなくなりました。 インタビューで、蝶々さんが自害を決意する場面のティンパニーを重要視していたことは、「我が意を得たり」でしたね。 第2幕に鳴り、エリザベス・ドゥショングのスズキが歌い始め、ストーリーが流れ出しました。 Elizabeth DeShongって、ベルギーあたりの名前かと思っていたら、ペンシルバニア州出身のアメリカ人みたいです。 この人が凄い。 深く豊かな声と迫真の演技で、オペラ史上最高のスズキではないでしょうか、 「メゾソプラノと言えばジュリエッタシミオナート」ということで、テバルディのCDを買ってみたのですが、シミオナートの声は意外に軽い。 深い声のマリリン・ホーンのスズキは見つけることが出来ませんでした。 2020年:ホイ・ヘーのレビューにも書いたのですが、ドゥショングは幕間のインタビューで次のように語っています。 スズキは黙っているときが最も雄弁だと思う。 あの表情、あの眼差し、さり気なく逸らす視線。 その時こそ語っている。 蝶々さんがスズキに対して歌えばスズキは歌が無くても適切なリアクションが出来、相乗効果でアリアに対する感動も高まるわけです。 アスミク・グレゴリアンが本領を発揮するのは、第2幕以降でしょう。 歌唱も素晴らしいのですが、蝶々さんの感情表現が役に成り切っており、デショングと:デショングと共にシンギング・アクトレスそのものですね。 僕は今まで《蝶々夫人》の画像では、パッパーノ指揮のロイヤルオペラハウスのDVD(エルモネラ・ヤオ&エリザベス・デショング)をお勧めしてきたのですが、これからはアンソニー・ミンゲラの演出が魅力的なこの公演をお勧めしたいと思います。 エルモネラ・ヤオも迫真の演技で十分感動できるのですが、アスミク・グレゴリアンの方が美人なのね。 |