バイエルン国立歌劇場来日公演  《ナクソス島のアリアドネ》
2011年10月5日(水)7:00PM 東京文化会館

「REVIEW11」に戻る  ホームページへ  《ナクソス島のアリアドネ》  『ロバート・カーセン』
 
 
 何度も同じ文章の使い回しで申し訳ないんですが、僕が最初に《ナクソス島のアリアドネ》を見たのは1980年8月19日。
 劇場は今は無きザルツブルグ音楽祭小ホール。
 別にこのオペラに興味があったわけではなく、たまたま音楽祭巡りツアーの日程がぶつかってしまっただけなんです。
 ところが、これは我が人生最高のオペラ体験となりました。

 指揮はカール・ベームで、この年がベームにとって最後のザルツブルク音楽祭となりました。
 そしてツェルビネッタは当時売り出し中のエディタ・グルベローヴァで、マスコミでは《ナクソス島のツェルビネッタ》と言われていたそうです。

 しかし、僕が何より衝撃を受けたのはディーター・ドルンの演出でした。

 このオペラ《ナクソソ島のアリアドネ》はウィーンの富豪の館でオペラ《ナクソス島のアリアドネ》を上演するというオペラで(なんのこっちゃ (^_^;?)、その上演までのドタバタを扱った『序幕』が付いています。
 ドルンの演出、『序幕』は広間となりの小部屋。
 で、ボーイが出入りする度に開くドアから広間でワルツを踊る人たちが見える。

 休憩後の『オペラ』になるとシューボックススタイルで豪華な内装の小ホールが、舞台まで含め一つの部屋になってしまっている。
 そして『序幕』でドアのすき間から見えたワルツを踊っていた人々は、『オペラ』では会場に座る我々なんですから、このアイディアには驚いてしまいます。
 で、役者は奥の扉(そこに小部屋があるんですから)から出入りする。
 何書いてるか分かりますか (^_^;?

 それから、このオペラを見て回るようになりまして、こちらが「《ナクソス島のアリアドネ》観劇記録」です。

 また僕は、95年6月6日にイングリッシュ・ナショナルオペラで《真夏の夜の夢》を見て以来のロバート・カーセンのファン。
 彼の演出する舞台は見逃さないように頑張りまして、こちらが「ロバート・カーセン観劇記録」です。

 大ファンのロバート・カーセンが大好きな《ナクソス島のアリアドネ》を演出するんですから、なにはともあれウィークデイの雨の中、東京に飛んで行きました (^_^) 。


  バイエルン国立歌劇場来日公演
  リヒャルト・シュトラウス作曲
  《ナクソス島のアリアドネ》プロローグ付1幕

  2011年10月5日(水)7:00PM 東京文化会館

  指揮:ケント・ナガノ  演出:ロバート・カーセン

  執事長:ヨハネス・クラマ
  音楽教師:マーティン・ガントナー
  作曲家:アリス・クート
  バッカス/テノール歌手:ロバート・ディーン・スミス
  士官:ケネス・ロバーソン
  舞踊教師:トーマス・プロンデル
  かつら師:ペ一夕ー・マザラン
  下僕:タレク・ナズミ
  ツェルビネッタ:ダニエラ・ファリー
  アリアドネ/プリマドンナ:アドリエンヌ・ピエチョンカ
  ハルレキン:ニコライ・ボルチェフ
  スカラムッチョ:ウルリヒ・レス
  トルファディン:ステイーヴン・ヒュームズ
  ブリゲッラ:ジェフリー・べ−レンス
  水の精(Najade):中村恵理
  木の精(Dryade):オッカ・フォン・ダメラウ
  山びこ(Echo):アンナ・ヴィロフランスキー

  バイエルン国立管弦楽団
  19:00−21:20(休憩無し)

 開演の10分前には幕が開きまして、ダンサーがバレエの練習をしています。
 奥には一面の鏡張りで、ミュージカル《コーラスライン》を思い出しました。
 この鏡は動きまして、舞台裏の部屋になったりします。
 このオペラにはバレエは無いはずなのに、何をするつもりなのでしょう?

 プロローグの主人公である作曲家のアリス・クートは小柄な人でした。
 騒ぎの後で、館の主人の意向を受けた形で歌劇が上演されることになって幕が下りると、幕の外に残った作曲家が客席に降りてきました (@o@)。
 そして彼女(彼?)は手に持ったスコアを、指揮者のケント・ナガノに託したのでした (^_^) 。

 僕がロバート・カーセンの演出を好きなのは、彼が作曲家の意図を尊重して、それでいて機知に富んだ舞台を作り上げること。
 ドイツで流行の勝手気まま、「読み替え」演出とはまったく違います。

 ケント・ナガノの指揮は《ローエングリン》と同じように爽やかなものでしたが、(僕は)この作品にはふっくらとした情感を求めたいところです。

 オペラ《ナクソス島のアリアドネ》は何もない広い空間で演じられます。
 このような演出スタイルはカーセンの得意とするところでしょう。

 圧倒的な印象を残したのが、やはりツェルビネッタのダニエラ・ファリー。
 2008年5月のウィーン・フォルクスオパー来日公演《こうもり》でアデーレに感心してから、彼女のツェルビネッタは聴いてみたいものだと思っていました。

 しかし、カーセンの演出でツェルビネッタを歌うことは大変なことです。
 カーセンは歌だけに集中させてはくれません。
 難しいことで有名なアリア「偉大な王女様」で、ツェルビネッタは道化師達と演技をしながら歌います。
 途中では180度開脚で持ち上げられて、その姿勢で難しいパッセージを歌わなくてはなりません (@o@)。
 
 またカーセンの演出は露出度が高い。
 《真夏の夜の夢》ではリリアン・ワトソンが、《ラ・ボエーム》ではアンナ・ネトレプコが、《椿姫》ではパトリツィア・チョーフィが、それぞれ下着姿で歌ってくれたのでした。
 本日のダニエラ・ファリーも、彼女たちに負けずに脱いでくれました (^_^) 。

 男性だってどんどん脱いじゃいます。
 「また脱ぐのか〜〜」と、会場から笑い声が上がります (^_^; 。

 アリアドネのアドリエンヌ・ピエチョンカとバッカスのロバート・ディーン・スミスには、もっと力強い声を求めたかった。

 ニンフ達の三重唱は大好きなんですが、実に美しかった。
 一人一人ではなく、三人の声がひとかたまりになって聞こえてくる。
 中村恵理さんが頑張っておられたのも嬉しいことでした (^_^) 。

 歌劇が終わり、作曲家がおずおずと登場すると、舞台奥から集団が拍手をしながら現れ、作曲家を担ぎ上げます。
 つまり、作曲家が作曲した歌劇《ナクソス島のアリアドネ》が大成功したことを表しているわけで、このオペラの二重構造を上手く表現したものだと、改めてカーセンの才気に感服しました。
 
 
「REVIEW11」に戻る  ホームページへ  《ナクソス島のアリアドネ》  『ロバート・カーセン』