あいちトリエンナーレ2013プロデュースオペラ
プッチーニ作曲 《蝶々夫人》
 2013年9月16日(月・祝)3:00PM 愛知県芸術劇場大ホール

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 台風18号の風と雨で目が覚めました。
 テレビを見ていたら桂川の氾濫で、京都の嵐山が大変なことになっていました。
 名古屋では、オペラに出かける頃には晴れ間も見えてきました。
 劇場では、「台風のため開演を10分遅らせます」というアナウンスがありました。

 あいちトリエンナーレ2013プロデュースオペラ
 プッチーニ作曲 《蝶々夫人》
 2013年9月16日(月・祝)3:00PM
 愛知県芸術劇場大ホール

 指揮:カルロ・モンタナーロ
 演出:田尾下 哲
 蝶々さん :安藤 赴美子
 ピンカートン :カルロ・バッリチェッリ
 シャープレス :ジューリオ・ボスケッティ
 スズキ :林 美智子
 ゴロー :晴 雅彦
 ボンゾ :豊島 雄一
 ヤマドリ :清水 良一
 神官 :塩入 功司
 ケイト :大須賀 園枝
 合唱:AC合唱団
 管弦楽:名古屋フィルハーモニー交響楽団

 指揮者のカルロ・モンタナーロはスカラ座や新国立劇場で指揮をしているそうです。
 快調なテンポでオーケストラをドライブしていきますが、肝心の愛の二重唱も盛り上がることも無く、あっという間に第一幕が終わってしまってビックリしました。

 演出の田尾下 哲さんは2011年7月18日新日本フィルの《トリスタンとイゾルデ》で船酔いさせられた演出家で、印象が悪いです。
 その時のレポートには「田尾下哲という演出家の舞台は、これから避けることにしようと思います」なんて書いています。
 しかし避けられない場合もあるわけで‥‥ (^_^ゞ。

 舞台装置は柱と障子で造られたもので、METライブビューイングで見たアンソニー・ミンゲラの舞台を思い出させます。
 とても美しい舞台でしたが第一幕の最後に宇宙空間が出てきまして、《トリスタンとイゾルデ》の最後で宇宙から見た地球が出てきたのを思い出しました。
 この人、慶応大学理工学部出身で、宇宙が好きなんだ (^_^) 。

 蝶々さんの安藤 赴美子さんは、6月26日のレクチャーコンサートで声量不足かと感じましたので、この巨大劇場で声が聞こえるのか心配しておりました。
 しかし、これが日本におけるロール・デビューかと思いますが、声も演技も立派なもので、感心しました。

 2012年11月25日に八王子で聴いた小林厚子さんとか、日本人ソプラノの実力に感銘を受けることが多いです。

 僕がこのオペラを聴き始めた頃、蝶々さんの第二幕における愚かさにはイライラしたものです。
 その後観劇体験を重ねまして、良い舞台では蝶々さんに同情して泣けるのだということが分かってきました。
 しかし、今日は蝶々さんの愚かさにイラッとする事がありました。
 つまり、第二幕の舞台に感心しなかったということです。

 その大きな原因はスズキ役の林 美智子さんにあると思います。
 まず、声量が足りない。
 そして役作りがどこまでが演出家の指示で、どこまでが林さんの考えなのかが分かりませんが、この場面はスズキの蝶々さんに対するリアクションでどこまでも面白くなる場面だと思うのです。
 例えばMETライブビューイングで見たマリア・ジフチャックですね。

 最後に蝶々さんに「お前も行きなさい」と言われた林さんは、「はい、分かりました」とさっさと出て行ってしまうんですね (@o@)。
 それは違うだろう、このティンパニーが炸裂する場面は、スズキが、そして我々が蝶々さんの自害の決意を始めて知る、このオペラの一つのクライマックスなんですから。
 何かリアクションが‥‥。
 急な代役で役作りが間に合わなかったのかも知れません。

 ピンカートンのカルロ・バッリチェッリはプーチン大統領を思い出させるルックス。
 声は通らず、きっと病気だったのだと思います。

 シャープレスのジューリオ・ボスケッティも代役でしたが、声はよく通っていましたが、演技は物足りないところもありました。
 もっと良いシャープレスを聴いた(見た)ことはあります。

 前回のトリエンナーレの《ホフマン物語》の舞台装置は、最近東京二期会公演で上演されました。
 今回の《蝶々夫人》もよくできた美しい舞台置だと思いますので、他の劇場でも使っていただき、演技をより深めていただきたいと思います。