アルミンク&新日フィル 《トリスタンとイゾルデ》
2011年7月18日(月祝)2:00PM すみだトリフォニーホール

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 ワーグナーとか《ばらの騎士》とか長いオペラは体力的にきつくなりまして、びわ湖ホールの《トリスタンとイゾルデ》にも行かなかったのですが、2007年に聴いた《ローエングリン》が気に入ったアルミンクの《トリスタンとイゾルデ》には行かなくては。

 もう一つの理由は「コンサート・オペラ」ならおかしな演出は付かないだろうということ。
 演出がない方が安心してチケットを買えるとは、おかしな時代になったものです (^_^ゞ。

 この日は早朝に「なでしこJAPAN」が優勝した日です。
 観劇前に念願のスカイツリー見学をしましたが、なにはともあれ暑かった。
 早く会場に入って、熱気を冷まさなくては。

隅田川とスカイツリー 業平橋駅近くから
JR錦糸町駅前 トリフォニーホールの近くから


 第480回新日本フィルハーモニー交響楽団定期演奏会
 音楽の辿り着く処 《トリスタンとイゾルデ》

 2011年7月18日(月祝)2:00PM
 すみだトリフォニーホール

 指 揮:クリスティアン・アルミンク
 演 出:田尾下哲

 トリスタン:リチャード・デッカー
 マルケ王:ビャーニ・トール・クリスティンソン
 イゾルデ:エヴァ・ヨハンソン
 クルヴェナル:石野繁生
 メロート:桝 貴志
 ブランゲーネ:藤村実穂子
 牧童、若い船乗りの声:与儀 巧
 舵取り:吉川健一

 合 唱:栗友会合唱団
 合唱指揮:栗山文昭
 演 奏:新日本フィルハーモニー交響楽団

 舞台の奥に巨大スクリーンがあり、CGの画像が映し出されます。
 スクリーンの前、弦楽器と管楽器の間、そしてオケの前と、舞台は3つに分けられています。

 前奏曲が始まるとすぐ、スクリーンに海の映像が映し出されまして、僕は仰天しました。
 前奏曲と海って関係があるのか?
 第1幕は船の上だけれど‥‥。

 この海は微妙に動きまして、僕は平衡機能が弱いのか船酔いしそうになり、時々目をつぶっていました。
 一種の拷問でしたね。
 おまけにタイトルやキャストまで映像に出てきまして、東映映画を見ているような感じ。
 これでは音楽を純粋に楽しむことが出来ません。
 「コンサート・オペラ」だったら演出は安心と信じていたのに、思わぬ落とし穴がありました。

 このような安易な映像の使用は慎んでいただきたいと、僕は切実に思います。
 その気になれば何でも簡単に出来てしまうのですから。
 思い返せば2002年の《パルジファル》で高島勲さんはヌード写真を出したのでした。

 アルミンクの指揮は陶酔的というには今ひとつでしたが、しっかりしたワーグナーの音楽を聴かせていただいたと思います。

 キャストでは女性二人が良かった。
 エヴァ・ヨハンソンは2000年にヘッセン歌劇場で《さまよえるオランダ人》を聴いたことがあり、勝手に親近感を持っています (^_^ゞ。
 ユッカ・ラジライネンを初めて聴いたのもこの時で、指揮のウルフ・シルマーなど、この公演に関係した人には好意を持っています (^_^) 。

 藤村実穂子さんは2005年に聴いた『大地の歌』で声量がないのに驚きましたが、今日はよく響く歌声で文句なし。

 トリスタンのデッカーは声量と声の張りが少し不足していたでしょうか。
 しかし、このような訳の分からない歌詞をプロンプター無し(だと思う)でよく間違えず歌えるもので、その健闘に感謝しなくては。

 マルケ王のクリスティンソンは古いラジオを思い出させるおかしな響きの声で、「この公演がCD化されてもこのマルケ王では買う気がしないな」と思いました。

 クルヴェナルの石野繁生さんは張りのある素晴らしい声でした。

 「愛の死」のクライマックスで、オーケストラの壁を乗り越えて聞こえてくるヨハンソンの声には、6月22日のバルバラ・フリットリのコンサートで感じた不満が解消されました。

 ただ、「愛の死」では2006年の名古屋二期会 ニューイヤーオペラコンサートの飯守泰次郎さんの指揮(イゾルデ:基村昌代さん)で、「居ても立ってもいられない、僕はどうなってしまうのだろう」というくらい興奮した経験があり、アルミンクの音楽はそれには及ばない感じ。
 最後のクライマックスへのクレッシェンドをゆっくり演奏するのがポイントかと思いました。

 ヨハンソンの「愛の死」のクライマックスに満足し、後奏をゆっくり味わいたい僕でしたが、突然スクリーンの地球が動きだし、感動も白けてしまいました。
 どうして演出家は音楽の邪魔をしたがるのでしょう?
 音楽の邪魔をしないと自分の存在意義が無くなるという恐怖心があるのでしょうか?
 「後奏で退屈している観客のために、サービスで地球を動かして真ん中に止めれば受けるだろう」などと考えるのでしょうか?

 2003年9月20日に行われた飯守泰次郎指揮、東京シティフィル《神々の黄昏》の最後に、ジークフリートとリュンヒルデが抱き合ってせり上がってきた時以来の怒りを演出家に感じました。
 田尾下哲という演出家の舞台は、これから避けることにしようと思います。

 第三幕の開演前に客席の電気が消えまして、会場は真っ暗になりました。
 とうとう電力不足で停電が来たか! ここで上演中止か? と心配しましたが、すぐに回復しました。
 
 福島原発事故で東京の電力が足りなくなるなら、全国の発電所で東京の電力不足をバックアップするのが当然だと思うのですが、管首相自らが日本全体を電力不足に追い込んでいるわけで、悪いときにおかしな首相を持ったものだと思います。
 浜岡原発を強引に停められた中部電力ですが、新聞記事によれば、中電すべての原発が止まっても、火力や水力などまだ発電能力に余力があるそうで、名古屋は電力不足に陥る心配はないそうです。

 話は変わって、素晴らしい演奏をしてくれたアルミンクと新日フィルのコンサートが9月4日(日)に岐阜県の可児市文化創造センターで行われます。
 場所は地図で調べてね (^_^ゞ 。
 ゲネプロを聴いて、アルミンクと一緒にスペシャルケーキを楽しむティータイムも企画されており、楽しみにしております (^_^) 。
 

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