関西二期会 三部作 《外套》 《修道女アンジェリカ》 《ジャンニ・スキッキ》
2016年6月26日(日)2:00PMメイシアター(吹田市文化会館大ホール)

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 僕は《修道女アンジェリカ》が大好きなんですが、ここ数年は上演がありませんでした。
 久しぶりの公演に、喜んで出かけたのですが、『修道女アンジェリカ観劇記録』を見ると「堺シティオペラ」「関西歌劇団」など、関西の団体の公演を多く見ています。
 本日の「関西二期会」も全体にハイレベルの公演で、これをダブルキャストで上演できる関西オペラ界の実力には感心してしまいます。

 関西二期会第85回オペラ公演
 プッチーニ・三部作 《外套》 《修道女アンジェリカ》
  《ジャンニ・スキッキ》
 2016年6月26日(日)2:00PM
 メイシアター 吹田市文化会館大ホール

 指 揮:ダニエーレ・アジマン
 演 出:マルチェッロ・リッピ
 管弦楽:大阪交響楽団
 合 唱:関西二期会合唱団

 《外套》
 ミケーレ:萩原寛明
 ルイージ:馬場清孝
 ティンカ:水口健次
 タルパ:服部英生
 ジョルジェッタ:泉 貴子
 フルゴーラ:岸畑真由子
 小唄売り: 山本欽也
 二人の恋人(女): 奥田敏子
 二人の恋人(男): 谷口耕平

 《外套》は演出が感心しませんでした。
 平面的な舞台で、どの役も、出番が終わると舞台から去ってしまう。
 これではドラマにならないでしょう。

 最後にルイージの死体にジョルジェッタが覆い被さる部分も、ミケーレは上から見下ろしているだけ。
 二人を靴でグイグイ踏みつけるなどしないと、ミケーレの怒りが表現できないでしょう。

 本来はジョルジェッタを外套に隠したルイージの死体に押しつけるんですから。
 そのための《外套》でしょう?

 《修道女アンジェリカ》
 アンジェリカ:尾崎比佐子
 公爵夫人:福原寿美枝
 修道院長:横山琴音
 修道長:松本千佐子
 修練長:上茂優子
 ジェノヴィエッファ:松岡直美
 オスミーナ:岸本幾美
 ドルチーナ: 山口 慧
 医務係修道女: 糀谷栄里子
 托鉢の修道女Ⅰ: 山田千尋
 托鉢の修道女Ⅱ: 吉武貴子
 修練女: 岩本実奈子
 修練女: 東澤妙子
 労働修女: 粉川陽子
 労働修女: 大坂まり絵

 《修道女アンジェリカ》では、修道女たちは集団で動き、アンジェリカは集団の外で薬草を摘んでいるというアイディアに欠ける演出。
 修道女たちのレベルは高いと思いました。

 やがて公爵夫人の馬車が到着し、スポットを絞るだけで応接室になってしまったのには感心しました。
 公爵夫人は出番が少ないので、福原寿美枝さんは最初から全開。
 第一声から会場を圧倒しました。

 ここで気になるのがプログラムに書かれた加藤浩子さんの解説、「(公爵夫人は)冷淡に、子供の死を告げる」という部分。
 公爵夫人はそんな単純なキャラクターなのでしょうか?

 以前にも書いたことがありますが、公爵夫人は厳格な人であっても冷酷な人ではないでしょう。
 本来なら彼女はアンジェリカに会いたくなかったと思いますよ。
 会えば必ず、死んだことを隠していた子どものことを聞かれるんだから。

 それでも妹の結婚のためにアンジェリカの財産分与の署名が必要だから、後見人としての責任感、義務感から決死の思いでやって来たんでしょう?
 アンジェリカに答えた言葉も公爵夫人としては考えに考え抜いた、最善の言葉だったのではないでしょうか。

 「2年前にひどい伝染病にかかり、一生懸命手を尽くしたのですが‥‥」という言葉のどこが「冷淡に、子供の死を告げる」なのでしょう?
 
 公爵夫人が倒れ伏すアンジェリカに近づき、哀れみと同情の表情を浮かべ、肩に手をかけようとするが、思い直して心を残しながら去っていく、という演技がどういう意味を持つのか、解説の加藤浩子さんは分かっているのでしょうか?

 公爵夫人は短期決戦ですが、アンジェリカは最初から最後まで出突っ張り。
 特に後半に聞かせどころが多く、ペース配分を考えながら、立派に歌いきられたと思います。

 最後に子供が出てきましたが、これは不要。
 子供なしでも十分に泣けるんですから。

 《ジャンニ・スキッキ》
 ジャンニ・スキッキ:細川 勝
 ラウレッタ:金岡伶奈
 ツィータ:阪上真知子
 リヌッチョ:角地正直
 チェスカ:名島嘉津栄
 ネッラ:中野 綾
 ゲラルド:山中幸治
 ゲラルディーノ:上茂優子
 マルコ:鳥山浩詩
 シモーネ:神田行雄 石原祐介
 ベット:岡村圭一郎
 スピネッロッチョ:伊東祐司
 アマンティオーノ:坂上洋一
 グッチョ:上羽良太

 《ジャンニ・スキッキ》はコメディドラマであって、美しいメロディに乏しい作品だと思っています。
 今まで見た《ジャンニ・スキッキ》では広島で見た岩田さんの演出が最高。
 あれ以上の舞台を見ることは無いでしょう。

 ジャンニ・スキッキ役の細川 勝さんの演技、歌唱は素晴らしかった。
 ラウレッタのアリアはスキッキに対してお願いしていただきたい。
 会場に向かってお願いしてどうする気なのでしょうか?
 ラウレッタにだけスポットライトが当たって、お願いされるスキッキがどこにいるかが分からない。
 お手本はジュゼッペ・タッデイ

 前回このメイシアターに来たときに、帰りの阪急電車で嫌な思いをしましたので、今回はタクシーで帰ることにしました。
 ところが運転手が初心者で、道に迷って行き詰まり。
 やはり、この劇場は鬼門のようです。

 メイシアターから新大阪駅までのタクシーは1500円くらいだったでしょうか。
 我が家から愛知県芸術劇場コンサートホールに行くより、ずっと安いんです (@o@)。