名古屋二期会定期オペラ公演《蝶々夫人》
2016年10月22日(土)5:30PM  10月23日(日)2:00PM
 愛知県芸術劇場大ホール

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 名古屋二期会定期オペラ公演《蝶々夫人》
 2016年10月22日(土)5:30PM
 2016年10月23日(日)2:00PM
 愛知県芸術劇場大ホール

 指揮:佐藤正浩  演出:岩田達宗

      10/22(土)  10/23(日)

 蝶々夫人:渡部 純子 浅井 恵子
 スズキ  :石原まりあ  梅澤 市樹
 ケイト   :やまもとかよ 天野 久美
 ピンカートン:小山 陽二朗(客演10/22)
          平尾 憲嗣(客演10/23)
 シャープレス:塚本 伸彦  奥村 晃平
 ゴロ―    :鈴木 俊也  永井 秀司
 ヤマドリ   :田中 純一   本多 信明(賛助)
 ボンゾ    :水谷 和樹(両日)
 ヤスシデ  :吉田 裕太(両日)
 神官     :藤井 信行  斎藤 響(賛助)
 蝶々さんのお母さん:宇野 啓子(両日)

 管弦楽:名古屋二期会オペラ管弦楽団
 合唱:名古屋二期会合唱団

 会場は意外なことに空いていました。
 巨大劇場の半分くらいでしょうか。

 今回の公演の舞台装置は、川口直次さんと粟国安彦さんによって作成された舞台で、それなら、僕が最高の《蝶々夫人》体験だと思っている2014年6月28日に見た「藤原歌劇団創立80周年記念公演」と同じ舞台のようです。
 この舞台装置は記念碑的な舞台として今でも保存され、全国の公演に貸し出されているそうです。
 あの美しい舞台をまた見ることが出来るのかと、幕が上がる前から嬉しくなっています。

 使われた楽譜は指揮者の牧村邦彦さんによる、初演版と1905年のプレシァ版と現行版をミックスした牧村版ともいうべきバージョンのようです。
 2013年7月7日に京都芸術劇場春秋座で見た公演でしょうか?
 蝶々さんがケイトに何年前に結婚したのか訪ねる会話など、説明的な部分が多かったですね。
 答えは1年前。

 22日の蝶々さん、渡部純子さんは、名古屋二期会 2010年 ニューイヤーオペラコンサートで、ドラマティックな蝶々さんに感心しました。
 本日は高い声が出にくいように聞こえました。

 23日の浅井恵子さんは初めて聴かせていただきましたが、巨大劇場の隅まで届く、素晴らしい歌唱で驚きました。
 県芸創立50周年記念《ラ・ボエーム》の吉田さんのように、新しく燦めく才能を発見するのは、オペラを聴く醍醐味です。

 ピンカートンは水兵姿では無く、長いコートを着ていたので、最初から違和感を持ってしまいました。  

 スズキの石原まりあさんは素晴らしかった。
 「ある晴れた日に」では蝶々さんとの絡みが少ないかと思いましたが、第3幕は圧巻でした。
 ピンカートンを見つけたときの心からの喜び、そして絶望に落ちる。
 スズキが蝶々さんその人に見えました。
 
 石原さんは日本舞踊もしておられるそうで、摺り足が実に美しかった。
 今まで聴いてきたスズキの中で、最高のスズキを拝見させていただいたような気がします。

 第3幕のピンカートンは戦いで怪我をしたのでしょう、杖が無くては歩けなくなっていて、ヴォータンのような眼帯をしていました。
 まあそれもいいでしょう。

 僕はシャープレスという人間と、彼が歌うメロディーが大好きで、両日とも好感を持って聴かせていただきました。
 ゴローも両日とも良かったと思います。

 ボンゾの水谷和樹さんは真宗大谷派のお坊さんなので、適役でしょう。
 ヤマドリは23日の本多さんが、派手な演技で面白かった。

 岩田さんの演出は、大勢の人びとの一番後ろの人にまで演技が付けられた、さすがはプロの仕事です。
 ただ、岩田さんほどの方なら、ここに新しいアイディアをプラスしていただきたかったね。

 蝶々さんの息子といえば、ピンカートンが去ってから生まれたので、3歳以上ということはないでしょう。
 ところが本日の子役は8歳。
 羽織、袴姿姿で、ブロンドの髪をちょんまげ姿にして、「若様の御成」ということで、猛烈に違和感がありました。
 蝶々さんがピンカートンの息子を日本式に育てるわけが無いでしょう。

 佐藤正浩さん指揮するオーケストラは、最初は音量の不足を感じましたが、すぐに気にならなくなりました。
 昨年の《宗春》では、カーテンコールで指揮者が現れると、オーケストラのメンバー全員から万雷の拍手が指揮者に送られました。
 今年も同じようなカーテンコールで、このオーケストラの定番になっていくのでしょうか?