楽劇《ジークフリート》 愛知祝祭管弦楽団
2018年9月2日(日) 3:00PM 御園座

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 殺人的な暑さが続いた8月は家に閉じこもっておりましたが、いよいよ秋の音楽シーズンの始まりです。
 しかし、最初の観劇が《ジークフリート》とはヘビーなことです。

 愛知祝祭管弦楽団の『ニーベルンクの指環』チクルスも2016年9月11日の《ラインの黄金》2017年6月11日の《ワルキューレ》に続く《ジークフリート》です。
 今回は従来の会場であった愛知県芸術劇場コンサートホールが改装工事中のため、伏見にある御園座で行われました。

 御園座は、東京で言えば歌舞伎座でしょうか。
 名古屋では名鉄ホール、中日劇場とホールの閉館が続く中で、御園座は歌舞伎、ミュージカル、歌謡ショーなど商業演劇の最後の砦です。
 御園座は5年間の建て替え工事を経て、本年4月1日に柿葺落四月大歌舞伎で開場したばかり。
 僕も初めての入場で、楽しみにしていました。

 先に書いたように御園座は商業演劇主体の劇場で、ここでクラシック音楽のコンサートを聴くのは今回が最初で最後かも知れません。

 ワーグナー 序夜と3日間のための舞台祝祭劇「ニーベルングの指環」から
 楽劇《ジークフリート》全3幕
 2018年9月2日(日) 3:00PM 御園座

 指 揮 :三澤洋史
 演出構成:佐藤美晴

 ジークフリート:片寄純也
 ブリュンヒルデ:基村昌代
 さすらい人:  青山 貴
 ミーメ:    升島唯博
 エルダ:    三輪陽子
 アルベリヒ:  大森いちえい
 ファーフナー: 松下雅人
 森の小鳥:   前川依子

 管弦楽:愛知祝祭管弦楽団

 今までに《ジークフリート》を見たのは、1987年10月22日のベルリン・ドイツ・オペラ、2002年9月8日の東京シティ・フィル2003年4月3日の新国立劇場の3回です。
 チクルスすべてを通して見たのはベルリン・ドイツ・オペラだけです。

 神奈川県民ホールで行われたベルリン・ドイツ・オペラの第1チクルス、第3幕第3場、ブリュンヒルデの岩山の場面で幕が上がると、舞台中に溜まった煙が、オケピットを乗り越えて開場に広がりました。 空調不良による、わら焼きスモッグを思わせる印象的な場面でしたが、そんなことしか覚えていないんです (^_^ゞ

 《ジークフリート》は『ニーベルングの指環』全4曲の中で、上演時間が長く、最も音楽的魅力に乏しい曲といわれていますが、正直な話、僕には大変辛いコンサートになってしまいました。
 今は『愛知祝祭管弦楽団のリング』全曲を完全制覇するための、試練を乗り越えたという満足感があります。
 しかしこんなに疲労困憊するようでは、来年のびわ湖ホールの《ジークフリート》をどうしようか、考えてしまいます。

 さて、ステージには6台のハープが並ぶ大オーケストラ。
 御園座ではコンサートにも対応しているようで、移動式の反響板がありましたが、天井はすっぽ抜けでした。

 今までの愛知祝祭管弦楽団《ワルキューレ》までのキャストは舞台奥のステージで歌っていましたが、今回はオケの前で歌いました。
 青山 貴さんや基村昌代さんの響く歌を聴いていると、「これがオペラなんだ」という喜びがこみ上げてきます。

 第2幕の前に佐藤団長から、「ジークフリートの片寄純也さんの調子が大変悪いけれども、最後まで歌います」というアナウンスがあり、ブリュンヒルデとの二重唱までの長い時間を考え、気が遠くなりましたが、片寄さんは最後まで立派に歌われたと思いました。

 森の小鳥は常に小さい子供6人?と出てきましたが、小さい子供を使うときは一人一人に演技をしっかり付けないと、動きがばらばらになってしまい、集中力が削がれてしまいます。
 率直に言って、子供は邪魔でした。

 第3幕でジークフリートが岩山に向かう部分で、赤い紙吹雪が盛大に振ってきました。
 岩山の火を表しているのでしょう。
 紙吹雪はオケにも降っているようで、大きい口が上を向いたバスチューバなんか、紙吹雪がいっぱい楽器に入りそう。
 弦楽器でもF字孔から中に入ったら、楽器屋さんに直行です。

 そもそもブリュンヒルデの眠る岩山は、前回の《ワルキューレ》の最後と一緒でないと整合性が取れないのではないかな。
 びわ湖ホール《ワルキューレ》のフィナーレは素晴らしいスケールでしたね。

 僕は眠っているブリュンヒルデをジークフリートが起こす部分に興味がありました。
 ジークフリートがブリュンヒルデの鎧を脱がせたり接吻したりと歌うんですが、そこにブリュンヒルデはいません。
 歌詞と舞台が解離して、「ジークフリートが妄想を歌っているのか?」というような違和感がありました。

 ブリュンヒルデは自分の歌う場面に合わせて出てきました。
 コンサートオペラなのでこんなものかと思いましたが、もう少しアイディアが欲しいような気もしました。

 三澤さん指揮するオーケストラは、例年のように大熱演。
 しかし、《ワルキューレ》に較べると、楽譜がかなり難しくなっているようで、アマチュアの限界も見えるようでした。
 それにしても凄い曲に取り組んでいるものだと、彼らの熱意に感心しました。
 《神々の黄昏》はどれくらいの難易度なのでしょうか?

 帰宅したら、日本体操協会の塚原光男副会長(70)と千恵子強化本部長(71)が 「宮川紗江選手に対する謝罪」と題した文書を発表していました。