《ワルキューレ》 愛知祝祭管弦楽団 2017年6月11日(日)3:00PM 愛知県芸術劇場コンサートホール |
愛知祝祭管弦楽団 《ワルキューレ》 ![]() 2017年6月11日(日)3:00PM 愛知県芸術劇場コンサートホール 指 揮:三澤洋史 管弦楽:愛知祝祭管弦楽団 演出構成:佐藤美晴 ジークムント:片寄純也 ジークリンデ:清水華澄 フンディング:長谷川顕 ヴォータン:青山 貴 フリッカ:相可佐代子 ブリュンヒルデ:基村昌代 ゲルヒルデ:大須賀園枝 ヘルムヴィーゲ:西畑佳澄 オルトリンデ:上井雅子 ヴァルトラウテ:船越亜弥 ジークルーネ:森 季子 ロスヴァイセ:山際きみ佳 シュヴェルトライテ:三輪陽子 グリムゲルデ:加藤 愛 2016年11月9日に、ウィーン国立歌劇場来日公演の《ワルキューレ》をオケを見下ろす席で見て、その難しさに「本当に愛知祝祭管弦楽団(アマオケ)はこの曲を演奏できるのか?」と心配になったものです。 しかし、三澤さんの指導の下、愛知祝祭管弦楽団は実に立派な演奏をしました。 左には6台のハープ、右にサンダーマシーン、舞台に溢れんばかりの奏者が座っています。 昨年より人数が増えたのではないでしょうか? さすがに第3幕になるとミスも目立ってきますが、「ゴールはそこだ!がんばれ!」という心境。 主に、ステージ中央奥の小舞台に譜面台を置いて演技、歌唱が進められ、時にオルガン前の2階席、3階席なども使われていました。 ヴォータンの青山貴さんは最初から最後まで素晴らしかった。 このような方が日本におられることは、奇跡のように思われます。 ブリュンヒルデの基村昌代さんも立派な出来でした。 2006年1月22日に飯守泰次郎先生の指揮で基村さんが歌った《トリスタンとイゾルデ 愛の死》は僕にとって、名フィル《ワルキューレ》、関西二期会《パルジファル》、東京シティ《神々の黄昏》と並ぶ、「飯守泰次郎ベスト4」の一つです。 その後も聴き続けていますが、全国的に知られた名前ではないでしょう。 今回の《ワルキューレ》は東京、関西からも来場者が多く、基村さんの全国的な活躍のステップになればいいな、と思っています。 第一幕の3人で、一番良かったのはフンディングの長谷川さんでしょうか。 大きな体格、深みのある豊かな声は、フンディングにピッタリです。 ジークムントの片寄純也さんも良かったですね。 NHKニューイヤーコンサートで笛田博昭さんと素晴らしい二重唱を聴かせてくれた清水華澄さんは大いに期待していましたが、両手で譜面台にしがみつき、ジークムントとアイコンタクトを取ることもありません。 どうしてしまったのでしょう? 最後が心配でしたが、ここは楽譜から離れて、ジークムントと抱き合ってくれたので、ホッとしました。 最後はジークムントが一人で歌っているからね。 フリッカ役の相可佐代子さんは予想どおり声が小さく、長々と続くヴォータンとの夫婦喧嘩が辛かったです。 ゲルヒルデ役の大須賀園枝さんは笛田博昭さんの初舞台、2000年3月16日名芸大《カルメン》でカルメン役を歌い、笛田ホセに初めて刺し殺された方です。 佐藤美晴さんの演出には不満が多かった。 僕はびわ湖ホール《ラインの黄金》のミヒャエル・ハンペ演出で、エルダからヴォータンに渡された名剣ノートゥンクに興味がありました。 ところが舞台には、ノートゥンクが刺さっているはずのトネリコの木がありません。 どこかに刺さっているはずの剣を一生懸命探しましたが、見つかりません。 ジークリンデがノートゥンクについて説明しているのに、舞台には何の反応もありません。 ジークムントがトネリコの木からノートゥンクを抜き出すクライマックスで、片寄さんは小舞台出口まで歩き、木で作られた剣を拾い上げ、譜面台に戻って高々と持ち上げたのでした。 幼稚園の学芸会でもあるまいに、最悪の展開です。 目の前で繰り広げられるマンガチックな舞台と、耳から聞こえるワーグナー最高の音楽との間で、僕は心が分裂してしまいました。 ふと思い出したのは、三河オペラ《トロヴァトーレ》で完璧な演出をしてくれた髙岸未朝さん。 もちろん予算も違うとは思いますが、彼女ならどのように演出してくれたのかな? フィナーレは舞台が炎で包まれましたが、できればオケピットも客席も燃やしていただければ、もっと巨大なスケール感がでたでしょう。 「飯守泰次郎ベスト4」の一つである、名フィル《ワルキューレ》の舞台が思い出されます。 カーテンコールで三澤さんは団長の佐藤悦雄さんとコンマスの高橋広さんを指揮台に引き上げました。 彼らの指導力がなければ、この企画は成立しないわけで、世の中には本当に凄い人がいるものです。 この日の深夜、BS放送で今年の4月に上演されたティーレマン指揮のザルツブルク復活祭音楽祭《ワルキューレ》が放映されました。 カラヤンが50年前にザルツブルク復活祭音楽祭《ワルキューレ》で使用した伝説のギュンター・シュナイダー・ジームセンの舞台を復活し、ヴェラ・ネミロヴァなる女性演出家が演出し、演奏がクリスティアン・ティーレマン指揮のドレスデン・シュターツカペレ。 これがワルキューレたちがたったままで並んで歌うというとんでも演出。 これでは海外オペラに行くのも考えものですね。 |